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【加計シリーズ3】日本にも四国にも獣医学部は必要なし -規制緩和と言いつつ、お友達にエコひいきするイカサマ安倍政権- 17.06.21

 日本の畜産は、ずっと下り坂である。色々な数字のとり方はあるが、一つ例として、今から37年前の1980年を起点に現在畜産業はどれだけ縮小しているか、主要な家畜の頭数でみてみる。

<四国の畜産の減少率は全国を40ポイントも上回る>
 乳用牛は全国ベースでいうと190万頭いたが、今や140万頭と74%に減っている。同じときに6万頭だった四国は、2万1千頭と35%にまで減っている。肉用牛は203万頭から229万頭と全国的には増えているのに対し、四国は8万7千頭から5万1千頭と59%に減っている。豚は、全国では926万頭だったものが、788万頭と85%の規模に縮小している。四国では50万2千頭から24万2千頭と48%に減っている。つまり、畜産は長期的に縮小傾向にあり、特に四国の減り方は、全国と比べて40ポイント前後上回っている。

表〔家畜の飼育頭数の推移(全国・四国)〕


<獣医師の数も北海道・九州と比べて余裕がある>
 他にもう一つ、2015年現在での、上記3家畜の四国の割合をみると、乳用牛1.5%、肉用牛2.2%、豚3.1%。それに対して獣医師の数が3.4%もある。つまり、四国は獣医師に余裕があるのだ。
 獣医1人当たりの頭数を比較しても同じことがいえる。例えば、全国で獣医師は3万9,098人いるので、それをもとに割り算すると、乳用牛は獣医師の1人当たりの頭数は36頭、肉用牛は59頭、豚は202頭になる。それに対して四国はどうかというと、それぞれ15頭、38頭、108頭といずれも21頭、2頭、94頭少なく済んでいる。
 獣医師が足りないのは、実は畜産が盛んな北海道である。例えば、獣医師1人当たりは全国平均と比べ、乳用牛197頭、肉用牛143頭多い。豚だけは46頭少ないが、獣医師が足りないのは畜産の盛んな地域であり、四国などではない。
表〔2015年地域別主要家畜の飼育頭数・獣医師数〕


<160人の入学定員は四国の過剰な獣医師を生むだけ>
 獣医学部の入学定員でみるともっとこの落差が明らかになってくる。
 現在900人、ここに定員160人の加計学園(岡山理科大)獣医学部が今治にできることになると、1060人となる。
 北海道は、北海道大40人、帯広畜産大40人、酪農学園大120人の計200人と全体の22%になる。それに対して同じように畜産が盛んな九州は、鹿児島大30人、宮崎大30人と60人で全体の6%である。それなのに四国は160人と15%も占めることになる。上述のせいぜい全国の3%の家畜頭数にすぎない四国に過大な獣医師が誕生することになる。
 尚、女性の割合が増え続け、今や全在学者数6,275人のうち半数以上(50.6%)を占めるに至っている。女性の多くが犬・猫病院で小動物診療に従事し、これが産業動物診療(大家畜)獣医師不足の一因となっている。
表〔獣医学部入学定員・在学者・教授数〕


<分野別獣医師の偏在は医師の偏在と同じ>
 地方、特に過疎地の医師不足は酷く、ずっと続いている。つまり地域的偏在である。これを是正すべく、各県に一つある医学部にその県の医師となる県内出身者用の地域枠を設け、卒業生が出始めている。当然地元県への定着率は高く、尚且つ国家試験の合格も高いという。一方、産婦人科、小児科、外科等の生命に直接関わる科目の希望者が少なく、診療科目的偏在がある。
 前述のとおり、四国に足りないというのは、真っ赤なウソであるが、医師同様に獣医師でも分野別偏在が存在する。これも1980年と比べてみると、畜産動物診療が5,467人(21.7%)だったものが、2015年には4,317人(11.0%)と人数では1,130人減り、割合では11.7ポイント減っている。これに対して、いわゆる犬猫病院の小動物診療は、3,633人(14.4%)から15,205人(38.9%)と4倍強となり、割合も24.5ポイント増の約4倍増とねっている。
 この他公務員分野では、公衆衛生分野は大差ないが、農林水産分野は実数で1,000人減、割合で半減している。
表〔分野別獣医師の推移〕


<獣医師を増やして畜産を振興するのか>
 これからみてもわかるとおり、四国に獣医学部を造る必然性は全くない。いや、日本に造る必要はない。だから、50年間も獣医学部が新設されなかったのだ。つまり需要はどんどん減っていたし、今後はもっとスピードを強めて減っていく。そうした中でも、四国の畜産を振興するために、それこそ特区に指定して欧米並みの手厚い農政をするのならいいが、アベノミクス農政は真逆の方向を目指している。
 TPPで一番影響を受けるのは乳用牛・肉用牛・豚の畜産である。日EU・EPAでも、チーズ等の畜産物の関税を下げる妥協をしつつあり、それに拍車をかけんとしている。それを獣医師の偏在を直すために四国に新設するというのは本末転倒もいいところである。


<日本の畜産の悲惨な将来像>
 世界は自国の農業を守りきっている。つまり最初から「自国農業ファースト」なのだ。その中でも畜産は金額的には最大の分野を占め、手厚い優遇農政が行なわれている。その中でも酪農は朝と夕方の二回搾乳する、まさに労働集約的農業そのものであり。勤勉の象徴であることから一番優遇されている。だからEUではよく「ミルクの湖、バターの山」といった過剰生産が問題になる。
 日本の農業が過保護というのは、安倍首相の言葉を借りれば「デマゴーグ」「決めつけ」「印象操作」でしかない。日本ほど農業を衰退にまかせた政府はない。
 日本は何も手を打っていない。別表に折れ線グラフで、このままの減少傾向が続いた場合、日本の家畜の飼育頭数がどれだけ減少するか示してみた。これを直すには、自国の食料を自国で賄うという確固たる農政しかない。
 安倍政権はTPPやEPAでさんざん畜産を犠牲にしておいて、一方で獣医学部の新設により日本や四国の畜産を振興できるというのであろうか。論理が破綻している。
グラフ〔家畜の飼育頭数の将来予想(全国)〕
グラフ〔家畜の飼育頭数の将来予想(四国)〕


<とってつけたライフサイエンスの研究>
 それよりも何よりもその前に、国家戦略特区は成長産業を造り出すというのが目的であり、地域の偏在をなくすなどという目的のためではない。よしんばそれを認めるとしても、それは構造改革特区であって、わざわざ広島・今治を特区にしてやる必要はない。
 今治に狙いを定めていたのは明らかなのだ。安倍首相は、最初の頃は世界と競争してライフサイエンスの研究、と言っていた。今や誰の目にも明らかになったとおり、獣医師の偏在是正、そしてスピード感のある規制緩和と言い方を変えた。ライフサイエンスのことを考えるのであれば、四国のこれといった蓄積がないところで、世界を相手に研究ができるはずがない。私が質問に立ったら指摘しようと思っていたことだが、松本洋平内閣府副大臣の地元に近い府中市と武蔵野市に東京農工大と日本獣医生命科学大の2つがある。東京圏に世界と競争できる研究拠点を造るのがベストである。


<たった一つの合理的理由は全国共通の地方創生のみ>
 途中で加計学園にエコひいきされ、あえなく消えていった京都産業大は、前々から準備して畜産学科ができている。学者も集まりつつある。東京と同様に今治よりもずっと研究蓄積が進んでいる。ここでも今治に獣医学部を造る理由は見当たらない。
 日本の大きな政策課題の一つが地方創生である。農村産業地域導入法もできたし、未来投資促進法等もできたりしているが、高度経済成長時代と違って工場が地方へ行くことは少ない。そこで、地方の活性化は今や大学の誘致くらいしかなくなっている。だからどこも大学の誘致に熱心なのだ。私の地元長野でも、長野県立短大が4年制になり、長野大学が公立大学となった。長野市に看護学部を造る話も進んでいる。今治市がずっと獣医学部に固執し続けた理由はある。しかし、国が、特に今治だけを特別扱いする疑問はここにも存在する。


<恥知らずの「お友達優遇戦略」は許されず>
 国会論議では、安倍首相の「腹心の友」加計孝太郎へのエコひいきと、それを忖度した旧内閣府の強引なやり方ばかりが問題にされたのだ。公平性・透明性に著しく欠ける決定がなされたことは明らかである。しかし、残念ながら国家戦略特区のそもそもの目的との合致がほとんど議論されなかった。今治での獣医学部新設は国家戦略とは無関係である。
 安倍政権の言っていることは最初から辻褄が合わない。国会の論戦は「総理のご意向」「官邸の最高レベル」の文書があったかないかといった手続きの問題に終始してしまったが、この今治市に岡山理科大獣医学部というのは、そもそも根本から狂っていたのである。8月の文科省の審議会の結論は、新設を認めず、となる気配が濃厚である。
 この問題について数字を羅列して説明させていただいた。尚、詳しい数字の資料は、ブログに添付するのでご参照いただきたい。


 追記:6月19日の安倍首相の記者会見があまりにひどいので、加計問題がいかにおかしいのか、今後項目ごとに連続してブログ・メルマガにまとめてみる。