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【加計シリーズ5】 獣医師の地域・分野別の偏在は規制導入で解決 - 畜産業が傷めつけられ飼育頭数が減る中で、なぜ獣医師のみ必要なのか - 17.07.02

 安倍首相の獣医学部を巡る言い訳、格好付け、後付発言が飛び出した。獣医学部を3つ4つ造るというものであり、今までの方針をひっくり返すものだ。1校にしたのは、日本獣医師連盟が要請したからだと罪をなすり付けているが、順序が逆なことは明らかになっているというのに、また屁理屈を述べ始めた。

<お金のかかる獣医師の育成>
 その前に何でも市場原理が好きな山本地方創生相は50数年獣医学部の新設がなかったから質が落ちた、と迷言を吐き、獣医学会のひんしゅくをかっている。それでは、あちこちにできたアメリカの猿真似の法科大学院は法曹界の質を高めたのだろうか。まさに粗製乱造でピーク時74校の半分の34校しか募集しておらず、17校が廃止となっている。競争原理とやらの成れの果てで、大学を出たあと3年も学んで合格率がわずか2割である。あまたの若者にムダをさせていることになる。
 また、獣医学部同様になかなか新設が認められない医学部の質が落ちたのだろうか。全く違う文脈で新設するかどうか決められているのである。自由競争の世界が違うのだ。それを6年もかけてたくさん獣医師を作っておいて、その専門の仕事に就けなくても仕方ないでは済まされない。なぜなら、一人の育成にかかる費用が違うのだ。

<臨床実習が必要な学部はもとから少人数>
 最高学府東大2016年の募集人員でみると、法学部(文Ⅰ)401人、経済学部(文Ⅱ)353人に対し、医学部(理Ⅲ)は97人、獣医学科の定員はわずか30人である。この中間に工学部等理科系の学部がある。獣医学部は臨床実習のいろいろな教育施設が必要なのだ。だから、最初から需給関係を考えて定員が認められている。この単純な事実が首相も地方創生相もわかっていない。日本獣医師連盟が指摘するように、国際水準達成に向けた獣医学教育の改善には、教員を増やすなど別の手当が必要である。

<ほったらかしにされる分野別獣医師の存在>
 「分野別獣医師推移」の表にみられるとおり、小動物診察(いわゆる犬猫病院)に携わる獣医師の割合が、1970年の10.3%から2014年には4倍の38.9%と急激に増えている。それに対し、産業動物診療(大家畜)は24.7%から11.0%と半減している。医師の分野にみられる診療科目別偏在(命にかかわる産婦人科、小児科、外科が減っている)と同じである。
 自由に任せていたら人間誰しも楽して儲かるほうに向いてしまう。医師の世界では、医療過誤で訴えられず、お金がたくさんもらえる道を選ぶ。かくして診療科目別・地域別の偏在が生じる。
 この解決は安倍首相や山本地方創生相の大嫌いな規制で是正するしかない。
 〔14.4.11 環境委員会資料(大学における獣医学部・学科等の在学者状況)〕

<医師の地域別、診療科目別偏在の解決策> 
私は医師の偏在の解決策について「思い切った地方創生策 具体編―B地方に医者を」(14.12.08 14年末選挙シリーズ8)で触れた。そして6月7日(水)の厚生労働委員会で塩崎厚労相を相手に質疑応答をした。関心のある方は、両方(前者は衆議院のビデオライブラリー)を見ていただきたい。
 かいつまんで言うと、3~5年、各人の人生設計に会わせて国家が指定した地域、すなわち過疎地で医療活動を義務づけることである。国家試験をして資格を与えているのだから、これくらいの義務を課してもよい(これについては別途詳述する)。なにせ安倍政権は何かと国民に言うことをきかせようとしているのだから、医師にこのぐらいの公徳心を持ってもらって何もおかしくない。なぜなら国家もかなり援助しているからだ。1つ大金をかけて学部を造るのではなく、今の人員で賄うほうが財政上もずっと合理的である。
 診療科目の偏在は簡単に言うと診察報酬を増すことで、それなりに改善される。

<ペット病院の獣医師にも地方で大家畜診療の義務を課す>
 獣医師も国家が相当お金を投資して育成し、国家資格を与えている。一生のうち、3~5年国の意向に従って(総理の意向で?)畜産業の盛んな地域で働いてもらうことだ。
最初からペットしか扱わないと決めて獣医学部に行っている者も多いだろうが、後々のためにも足らない大家畜の診察を経験させておくべきである。なぜなら今後予期せぬ人畜共通伝染病もありうる。また、BSE、口蹄疫、鳥インフルエンザといった家畜の伝染は日本も経験済みである。緊急対応が必要であり、いざという時にはその地域の獣医師を総動員し手伝ってもらわないとならなくなる。そのためにも予め現場を知ってもらっておく必要がある。
 2010年6月~7月、私は2ヶ月弱、口蹄疫現地対策本部長として宮崎県庁に陣取っていた。牛の殺処分は首の静脈に注射を打つ必要があったが、日頃からやり慣れている者でないと無理で、全国から大家畜の獣医師に援軍してもらった。この時に大家畜の獣医師不足は身をもって体験している。

<大家畜診療に当たる獣医師を給与面で優遇する>
 もう一つは給与の問題である。役所の人事は、入省年次をもとに行われる。大半の行政官は4年制大学卒である。行政にも獣医師は必要だが、6年制である。民間のペット医はいきなり高給をもらえるのに、国家公務員は…といった日本の制度上の問題がある。国際機関は大学と修士と学士をきっちりわけている。つまり、学歴社会なのだ。ところが、日本はon the job trainingで、自らの組織で教育するシステムであり、学んできたことをあまり評価しない。
 民間の現場では、獣医診療手当 ○○%増しとか工夫しているようだが、どうもきちんと定着していない。戦前はその道のプロや課長より給与も高くして遇していた「勅任官制度」があった。犬猫病院の獣医師の給与に合わせて高給で処遇すれば、足りない畜産動物診療や農林水産分野の公務員も増える。これこそ国家戦略ではないが、単純に獣医師を増やせばいいなどということなら諮問会議などいらない。そしてこうしたプロ・専門家を遇するという改革に抵抗勢力があるなら、それこそ「総理の意向」で断行したらよい。

<支離滅裂の安倍言訳発言>
 安倍首相の苦しまぎれの言訳もとても聞いていられない。この分野の権威の唐木英明東大名誉教授(加計学園の倉敷芸術科学大学元学長)は、「獣医学部の設置や入学定員の増加を自由化したわけではない」と擁護していたが、今やそれを言い出したのだ。おわかりのとおり、加計学園は、金にあかせて下村元文科大臣に取り入るばかりでなく(週刊文春7月6日号【下村文科相「加計学園から闇献金200万円」】)学界にも手を回していたのである。
 すぐわかることだが、安倍首相は1校にするというのも国家戦略諮問会議の決めたことで自分は命じてないと言いつつ、今度は自ら3~4校でもいいと公言している。矛盾も甚だしいと言わねばなるまい。
かくして、内閣府の政僚が権力をかさに各省に命じ、御用学者がろくに考えもせず、忖度だらけの結論を出し、それで物事が決められていく。こんな不透明で不公平な決定過程で物事を決められてはたまらない。これが前川前次官のいう「行政のゆがみ」である。
 6月30日、稲葉睦全国大学獣医学部関係者代表協議会代表が記者会見して、広く大学教育・研究を前提に導きかねない」と指摘している。

<昔の私の女性獣医師活用提案>
 なお私は、環境委員会(2014年4月11日)の獣医学部問題でいつものとおり提案型質問をしている。そのときに初めて知ったことだが、当時でも既に女性が相当の割合を占め、私立大学では女性の割合が上回っていた。私は鳥獣害対策のために都道府県に動物のプロの獣医師を採用してあたらせるべきであり、その際別に女性の職場を広くするため、優秀な女性を意図的に採用すべしと提案した。
 県に獣医師が多くいれば、家畜の伝染病が蔓延した時にも対応できることになる。自民党政権は威勢よく自然災害に備えて100兆円もかけて公共投資を行うという。しかし、災害は地震、台風、火事ばかりではない。病気もありうるのだ。そのときに備えて対応できる人材の育成と、緊急事態に対応するネットワークの構築はもっと大切である。だからといって、何十年に1回のことに何人も人をかかえるのは非効率だが、今は中産間地域の農民を悩ます鳥獣害対策という日常業務がある。
 このブログに前述の環境委と厚労委で使った資料を添付したので比較してみていただきたい。
 〔17.6.7 厚生労働委員会資料〕