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JEFTA(日EU・EPA)は政治的合意そのもの-獣医学部で畜産振興のふりをしつつ、JEFTAで酪農を痛めつけている大矛盾-17.7.11

 私はTTPを必死に追いかけてきた。もちろん日EU・EPAも気になったが、やはりアメリカの強引なやり方が許せないばかりでなく、日本の軟弱な対応に腹が立ち、TPPファーストで日EU・EPAは二の次だった。
 しかし、今回、TPP11のハノイ出張と同様に極めてにわか仕立てでのブリュッセル出張となった。7月5〜8日まで滞在し、例によって4グループの関係者と意見交換したが、その席でJapan-EU Free Trade AgreementがJEFTA(ジェフタ)と呼ばれていることを初めて知った。たぶん日本ではほとんど使われていないだろう。

<政治的合意でしかない「大枠合意」>
 7月6日、仰々しく安倍—ユンカー(EU委員会委員長)、安倍−トゥスク(EU理事会議長)の二国間首脳会談が行われ、日本得意の「大枠合意」(agreement in principle)が成立したと日本の新聞は大きく報じた。TPPについても途中「大筋合意」というわけのわからない言葉が使われたが、今度は「大枠合意」。ただ、英語は同じ agreement in principle である。前者は、あとは細部の詰めを残すだけなのに対し、後者は、例えばISDS(投資家国家間紛争手続)条項の章の一つが全く合意していない。従ってJEFTA合意と言えない代物である。だからであろう、現地の新聞なり、欧米の主要紙はほとんど取り扱わなかった。これほど対照的なことは近年では珍しい。
 つまり、EU側は本当の合意と見ておらず、日本の安倍首相が政治的パフォーマンスで合意をアピールしたいがために、強引に「大枠合意」と言い出したに過ぎないと見なされているのだ。その意味では、JEFTAの「大枠合意」はTPPの「大筋合意」よりもずっとタチが悪い。

<政治的パフォーマンスに利用されただけのJEFTA>
 その証拠に、EU側は発効は早くとも19年と言い放っており、急いだ安倍総理もそれを認めている。最終的にはEUは28カ国の国会承認が必要だが、関税部分の発効には欧州議会の承認で十分なのだ。だからJEFTAもTPPと同じように、強引な国会運営で他国に先がけていの一番に国内手続きを終了させ、早々と発効できるというのにさっぱり急ぐ気配はない。よくわからないが、EUが絶対応じないISDSをはじめ、基本的な合意に達していないことが多いからだ。
 だとしたら、一体何のために急いだか。実績を財界にそして国民に大袈裟にアピールすることしか考えなかったからだろう。外交はもともとどこの国でも政治的パフォーマンスに使われやすいが、安倍首相の乱用は目に余るものがある。真の国益などどこかへ吹っ飛んでしまっていることがわかってくる。それにもかかわらず、安倍首相は自らを自由貿易の旗手として悦に入っている。

<したたかなEU外交に翻弄された日本>
 外交の世界では、EUのしたたかさは有名である。ある時は筋を通して絶対に譲らない。昔からのもので言えば、成長ホルモンを絶対に認めないことであり、今で言えば、ISDSの拒否である。しかし、一方ではとても理屈に合わないようなことは、加盟国がてこでも動かないからと泣き言を言い続け、徹底的に抵抗してそれを通してしまう。だからアメリカは11ケ国宛てのTPPは強引にまとめられても、EU1カ国が相手なのに少しも前に進められないでいる(次号で詳述)。
 EUは、イギリスが離脱し、自国ファーストを掲げる右翼勢力が台頭するなどEUをないがしろにする風潮が生まれつつある中、引き締めのためにも何らかの成果がほしかった。TTIPが暗礁に乗り上げる中、組しやすい日本が早速餌になり、まんまといいようにあしらわれて妥協を強いられたのが、今回のJEFTA大枠合意である。ここでまとめたいという点ではまさに日本とEUの利害が一致したのである。

<時代遅れの自由貿易信仰>
 日本での関心も、TPPに比べてずっと低い。いつも突出して問題になる農産物でも、チーズ等乳製品とワインが問題になるくらいで大騒動にはなっていない。TPPで免疫ができたせいかもしれない。つまり、いくら農民が反対しても全く耳を貸さずあとから予算をつけて誤魔化すだけだと諦められている。しかし、せっかく消費量が伸びているチーズの関税が下がるとなると、高級志向の消費者はフランスやイタリアのブランド品に群がる可能性が高く、日本の酪農家は気が気ではあるまい。
 自由貿易ばかりが罷り通る訳ではないとアメリカがTPPから離脱する中、日本は進んで関税ゼロに突き進んでいる。世界が反グローバリズムに動き、自由貿易のあり方が疑問視されているのに、やはり日本は時代遅れである。21世紀なのに、また20世紀の論理で動いているだけだ。格差が生まれ、若者や中間層が政治に失望し、アメリカではトランプを生み、フランスではマクロンを生んだ。底流には「自国ファースト」が公然と前に出てきている。それなのになぜ我が日本国だけ違うのか。これでは国民がついていけなくなるのは当然である。

<TPP水準などに合わせる必要がないのに大妥協>
 日本は何よりもTPPを優先していたが、ほぼ同じころすなわち2013年4月に日・EUの交渉が始まっている。例によっていつも年末が近くなると年内合意の掛け声が掛けられたが、いつも置いてけぼりだった。それが、TPPが頓挫した途端、いつの間にかアベノミクスの三本目の矢の中心に躍り出てしまった。国家戦略特区による規制改革で、成長産業をと威勢のいいことを言っているが、それが腹心の友を優遇する加計学園の獣医学部では、経済成長につながるはずがない。国民もその胡散臭さをお見通しである。だからどうなるかわからないが、形だけは大きい日・EUEPA(JEFTA)が必要になってくる。
 日本は相変わらずの農業の切り捨てである。四国にいくら獣医学部を新設したところで、畜産の振興になるまい。片方でチーズ関税の引き下げを譲り、豚肉もTPPと同じように譲りまくっているのだ。TPPはそもそも関税をゼロにすることで始まった交渉である。ところが、日・EUはそんな約束で始まってはいない。TPP水準にこだわる理由はないのに、その水準におさまれば御の字という風潮が生まれた。私には信じられないことである。

<透けて見える下手くそなシナリオ>
 ほとんど実を結んでいないその場しのぎの安倍経済外交の極みが、今回のJEFTAといえる。加計学園は安倍首相の直接指示はなく、専ら「忖度」で動いたということだが、JEFTAは安倍首相が何としてもまとめろと指示をし、バタバタとまとまっていった。
 日本でずっと事務レベル協議を続け、6月30日と7月1日には、EU側からマルムストローム通商担当委員とホーガン農業委員が来日して日本側と協議したものの、まとまらなかったという。それではということで岸田外相が5日にブリュッセル入りし、再交渉し6日の首脳会談につなげ、安倍首相のリーダーシップにより最終合意に至ったという、手の混んだ演出を行っている。あまりにも底が丸見えのシナリオである。
 7月上旬の読売と朝日の世論調査結果は、こんな誤魔化しが通用しなくなったことを如実に示している。内閣支持率が30%台に落ち、逆に不支持率は50%前後に増えている。嬉しいことに国民もやっと覚醒してくれたのである。