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地産地消(勝)の見本 金足農業の準優勝 - グローバリズムからローカリズムへ- 18.09.05

 8月22日の農業新聞は、一面トップで金足農の健闘を讃えた。私も遅ればせながら、金足農の頑張りとその意義に触れたい。

<最初の人口減少県秋田>
 1978年、秋田県が初めて人口減少県となり、今は100万人を割っている。地方の過疎、農業の衰退等のはしりであり象徴的県である。TPP・日欧EPA、そしてアベノミクス農政と疲れる話題ばかりの中、地方の農業高校があと一歩で甲子園優勝というところまで辿り着いたのだ。これを快挙と言わず何と言おう。史上初めて100万人の観客動員を達成し、第100回の記念大会にふさわしい幕切れとなった。

<ローカリズムの象徴、金足農>
 8月21日の決勝をTV中継で見ていた高校野球ファンのほとんどは、公立の農業高校・金足農を応援しただろう。大阪桐蔭は都会の私立、リトル・リーグからの精鋭が集まった甲子園常連校。全国(私が調べたところ20人のメンバー枠でみると12道府県に及んでいる)の身体能力の高い子供たちから選りすぐったエリート集団である。それに対して、金足農は田舎のごくありふれた野球少年たちが、球速150キロの吉田輝星という松坂大輔並みの怪物投手を擁して、突然全国NO.2に躍り出たのだ。だから私のように地方びいき、判官びいき、故郷びいき、農業びいき・・・でなくとも魅了され、多くの人の魂を揺さぶった。
金足農は、一度も優勝したことのない東北の、いわばローカリズムの代表である。私立の野球名門校、横浜、近江、日大三を鮮やかな逆転もあり堂々破っての決勝進出だった。これが日大三との大都会代表同士の決勝だったらこれほどの感動も感心も呼ばなかっただろう。

<農業衰退の中での農業高校の躍進>
 沖縄水産高校の名を聞いたことがあるし、私の竹馬の友・岩下岳司君が在学していた須坂園芸も甲子園に出場したことがある。全国初の園芸高校の出場と紹介された。その時は岩下君がローカル局の中継の解説を務めたが、今は若者人口減に振るわない農業が追い打ちをかけ、統合されその名はない。そうした中、減りつつある農業高校(117と10年前と比べ23校減っている)が大活躍したのである。農業高校を力付けたばかりでなく、農業界全体に活力を与えたことに間違いはない。

<○○県代表が泣く、移入選手ばかりの私立名門校>
 私の地元でも、松代高校が06年、創立100周年の時に甲子園に出場したことがある。もちろん地元出身者ばかりであった。1回戦で敗退した相手は、鳥取の吉北高。てっきり地元の公立高校と思っていたらさにあらず、関西の野球エリートを集めた私立高校だった。今、ヤンキースで活躍する田中将大も06年に駒大苫小牧だったが、出身は兵庫のリトル・リーグである。早実のハンカチ王子斎藤佑樹と決勝を戦い盛り上がったが、いま一つ心に響くものが欠けていた。
 プロ野球ですらかつては1チーム3人という外人枠が決められていたのだから、私は○○県代表と言うからには、ベンチ入りする18人の半数以上はその県の中学校卒業生とすべきだと思っている。つまり県籍(?)が必要である。私立でも旭川大学付属高校や作新学院は、道内・県内出身者で固めている。自己規制しているようであり、こういう制度が必要である。残念ながら我が長野県代表・佐久長聖のレギュラーのうち長野県出身は3人にすぎず、大阪出身が5人なので、近くにいる口さがない高校野球好きは「大阪長聖」ではないかと批判している。

<県籍不明の「プロ高校野球」は見直しが必要>
 これを言うと、相撲だってモンゴル勢ばかりじゃないかとか、この偏狭国粋主義者と言われるかもしれないが、年端もいかぬ少年を私立高校の人集めの道具にしては可哀相であり、そうした観点からも規制が必要だと思う。
 高野連は吉田投手の侍ポーズを注意したが、そんな瑣末なことよりも根本のルールを見直さないと、10年後には甲子園は県籍不明(?)の野球少年ばかりを集めた私立名門校に埋め尽くされてしまうかもしれない。それでは地元代表として応援するのは何か釈然としない。全国高校野球選手権大会は「プロ高校野球」とは違うのだ。

<極めて日本的な甲子園高校野球>
 その意味では甲子園は極めて日本的なるものである。他のサッカーや柔道の全国大会がここまで新聞やテレビで採り上げられることはない。なぜか甲子園の高校野球、それも夏の大会が風物詩として定着した。
 私はアメリカに留学した40年前、小さな小学校のクラスマッチから大学のフットボールの試合まで、アメリカ国歌が斉唱され、国旗が掲揚されることに驚かされた。多民族国家アメリカでは地域や国家としてのまとまりに欠けるから必要なのだと聞かされた。
 その時にふと思ったのが、日本の高校野球・甲子園だった。大学ではフットボールが盛んだし、正月には全米各地で行われる○○ボウルが関心を惹きつける。野球は大きな都市は皆ホームチームを持っている。バスケットボールも人気がある。しかし、それが高校レベルになると全く関心を持たれていない。知日派との議論の時に、アメリカ人に故郷をそして国家を意識させるには、日本の高校野球・甲子園を例に人気スポーツの高校レベルの全国大会がベストだと言いまくったが、一笑に付されるだけだった。
 もっとも、逆に考えると一スポーツにすぎない高校の全国大会にこれだけ関心が持たれるのは日本だけであろう。後のないトーナメント戦、坊主頭のひたむきさ(慶応高校だけは長髪だった?)等が魅力とはいえ、特異といえば特異である。アメリカでは多分投手の投球数は制限されるだろうし坊主頭のオンパレードなどあり得ない。

<地方の雑草仲間から輝ける星、地方でもできる見本を示す>
 私の幼少の頃にはなかったが、今は秋田県にも小学生や中学生の野球チームがあり、金足農のメンバーの大半はその頃からの知り合いだった。それどころか本来は別々であったはずの進学先を「一緒に金足農に行こう」と決めて夢を実現したというのだ。当時から抜きん出ていた吉田となら甲子園へ行ける、と踏んだ球友たちがいたのだ。あまたいる評論家やスカウトよりも眼力に優れていたのだ。地元で生まれ育った仲間が秋田の代表となり、全国でその力を発揮したのである。純粋な地産地勝チームが準優勝し、文字通り秋田の、そして地方の『輝』ける『星』となったのである。
 ザギトワの秋田犬マサル、バドミントン女子ダブルスの「ナガマツ」ペアの世界選手権での優勝と秋田づいている。ふるさと納税も大きく増え、応援団の滞在費用に事欠くと報道されるや、またたく間に2億円を超える寄附が集まったという。金足農の思いがけない大活躍が、大規模水害もありしんみりしていた日本の夏に、すがすがしい明るさをもたらした。

<地産地消(勝)は反グローバリズムの象徴>
 これは私のこじつけであると認めるが、英国が移民政策や通貨で独自性を保つためにEUを離脱し、トランプ大統領がNAFTAを見直し現地生産率を高めるのも、スペインでバルセロナを州都とするカタルーニャ州が独立せんとするのも、反グローバリズムの潮流の一つである。そしてグローバリズムの旗手と粋がっている日本に降って湧いたのが、正反対の小さなローカル集団である金足農である。つまり、その国で必要なものはその国で造り、その国(地方)のことは自ら決めるべきという流れなのである。これを甲子園野球で言えば、自県の代表は地元のメンバーでということになる。
 その意味では日本が遅ればせながらやっと世界の大潮流に近づいたのかもしれない。ローソンと金足農が共同開発した地産地消製品「金足パンケーキ」も復活し、秋田県内191店舗で販売され、大仙市の花火大会では、金足農のチームカラーの紫を主体とした200発の記念花火が打ち上げられたという。秋田頑張れ、日本の農業頑張れという声が聞こえてくる。金足農には感謝せずにはおれない。