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豚コレラ・アフリカ豚コレラは水際でくい止める以外になし- 2010年の口蹄疫による大量殺処分を繰り返してはならず - 19.6.18

 2018年9月に豚コレラが岐阜で発生後、長野県を含む5県に広がった。現在までに10万5千頭余が殺処分されたが、未だ決着には至っていない。2010年5月の口蹄疫がワクチン投与による殺処分もあり、7月には終息したのと比べると長く続きすぎており、日本の養豚は大丈夫なのかと心配になってくる。
 人体に影響がなく、ワクチンのあるこの豚コレラとは別に、ワクチンがないアフリカ豚コレラが2018年8月に中国で発生した。ベトナム・モンゴル・カンボジアと広がっているが、幸い日本では発生していない。アフリカ豚コレラは殺傷性が極めて高く、万が一国内で発生すれば畜産業に甚大な被害をもたらし、日本の養豚業は壊滅してしまうのではないかと危惧されている。防御策は「病原体を持ち込ませないこと」に尽きる。
しかし、近年の観光客の増加、在留資格の変更等により、豚コレラ発生地域からの来日者数は増加している。その結果、それらの国からの持ち込まれる肉製品(お弁当やお土産の肉まん・シュウマイ・ギョウザ・ソーセージ等)が、病原菌の国内侵入ルートとなる可能性は高く、危険性は増している。水際対策の果たすべき役割は重大である。

<検疫探知犬の犬鼻不足>
 3月8日、現状を掌握すべく羽田空港の検疫現場を訪れた。
 持ち込み禁止食物の探知には検疫探知犬(中型のビーグル犬、以下「検疫犬」という)が活躍していた。荷物やトランクに近づき、肉の臭いがするとそこで「お座り」をするように訓練されている。中型犬ということもあり、入国者は何の違和感もなく、自分の荷物を運んでいる。そこに検査官が近づき、横で荷物を開き禁止食物の没収となる。ところが、全国にたった33頭(今年7頭追加され40頭)しかおらず、人手不足ならぬ、とんだ「犬鼻不足」であった。絶対的に数が少なく、羽田空港でも5頭のみである。ましてや地方空港や港湾には常駐してないところがほとんどで、侵入を防ぐには心もとない限りである。
 検疫犬の育成には半年間の訓練が必要で、一頭約600万円かかるといわれている。なぜなら、訓練が検疫官とともにアメリカで行われるからである。その前に当然のことだが、犬と人間(検疫官)との相性もチェックされるなど、なかなか手間がかかるようだ。

<歴史の浅い畜産業のせいで軽視される検疫犬>
 日本は諸外国と比べて麻薬の類には大変厳しい対応をしていることが知られている。例えば、大麻(マリファナ類)はアメリカの2州をはじめ数カ国で解禁されているが、日本では芸能人等の大麻所持による逮捕のニュースがかなりの頻度で流されている。その延長線上で、麻薬犬が全国に130頭と検疫探知犬の4倍も配置されている。また、警察犬にいたっては、嘱託が多いが1,300頭を超えている。
 今手元に欧米先進諸国との比較は持ち合わせていないが、日本の検疫犬は少ないと思われる。日本の畜産業は農業生産額の30%ぐらいという状態に対し、欧米先進国は70%以上が畜産業であり、比重が違うからだ。
 日本の水際対策は、まず検疫犬の数を大幅に増やし、各地の空港・港に配置することから始めないとならない。

<急増する外国人観光客、禁止品摘発件数>
 外国人観光客は、ここ10年で急増し、5年前(2014年)には1,341万人が日本を訪れ、537,212件の摘発が行われたが、2018年には3,119万人(2.3倍)になり、摘発件数も933,957件(1.7倍)に達している。摘発の割合が低下してはいるが、禁止品の持ち込みが少なくなったのではなく、検疫犬、検疫官をすり抜けられているケースが増えているとも考えられる。
 来日者の95%が、成田・羽田・関空等の7つの大型空港を利用しており、それらには幸い検疫犬が2~6頭配置されている。残りの5%は45地方空港や87の港を経由するが、検疫犬の出張による対応をするが、ほとんど対応できていない。ところが地方空港、港こそ畜産現場に近く、リスクが高いのだ。

<各国の厳しい科料>
 中国観光客が多く訪れる隣国台湾が、豚コレラ発生地域の肉製品を持ち込んだ者に、罰金約360万円を科す決定をした。当然の措置である。
 各国の対応を調べてみると、罰則の軽重は様々であった。特にオーストラリアは厳しく、起訴され約3,360万円以上の罰金、そして拘束され最長10年の服役である。オーストラリアは遠く離れた大陸であり、ユーラシア大陸やアメリカ大陸にある諸々の病原菌が存在しない。だから、一度入ってしまうと未来永劫その防除に務めなければならなくなる。両国とも、実際の罰金以上に、捕まったら大変だから持ち込んではいけないという抑止効果のほうが大きいと思われる。
 実は、我が国にも3年以下の懲役又は100万円以下の罰金という法律(家畜伝染病予防法)がある。しかし、刑事告訴から処罰の確定まで時間のかかる日本では、すぐ帰国する観光客には適用が難しい。その結果、実際には個人消費・土産目的の持ち込みには、水際で没収し放棄を促すだけの運用であり、とても十分は水際対策とはいえない。

<上陸拒否による水際対策>
そもそも日本は、出入国管理法5条で「我が国の利益又は公安を害するおそれがある者」に対し上陸を拒否することができる。現行、麻薬・銃所持、売春・窃盗・破壊工作等、17項目の上陸拒否理由が明文化されている。昭和26年の制定であり、今なら「入国拒否」が普通だろうが、大半が船を使っていたので、その名残で「上陸」となっている。
いうまでもなく、家畜伝染病も宮崎県の口蹄疫では牛6万8,266頭、豚22万34頭を殺処分し、455.4億円(殺処分230億円、ワクチンを投与後殺処分したもの225.4億円)の補償額に達していることからわかるとおり、我が国の利益を大きく害する。 そこで「家畜伝染病予防法で輸入してはならない物を所持する者」もここに追加して、疾病の侵入を防ぐ方法である。保持者を上陸拒否することにより、水際でブロックできる。検疫官に対して、これぐらい大目にみろと抵抗する者もいるが、検疫官の権威を高め検挙の執行をスムーズにすることに役立つ。
更に重要なことは、単なる禁止品の没収にとどまらず、下手すると留め置かれ観光日程に狂いが生じる。本人もさることながら、旅行会社も困ることになるし、旅行会社自体がツアー客に肉製品の持ち込みをやめるように促すだろう。中国は日本以上にネット社会であるので、この罰則強化の内容もすぐに広まるであろう。それが周知されることで、海外からの観光者のそもそもの肉製品持ち込みを抑制することができる。
 2014年秋に中国漁船の小笠原諸島近海で、中国では相当高価に取引される赤サンゴを求めて違法操業が後を絶たなかった。そこで、議員立法により罰金を600万円から3,000万円に引き上げたところ、ピタリと違法操業がなくなった。絶大な抑止効果である。

<私が豚コレラ対策に汗をかく理由>
 私は今懲罰委員長を拝命している。丸山穂高議員に対し、何の法的拘束力のない「糾弾決議」で事実上辞職勧告された。こうした問題を扱う委員会の委員長である。従って、今豚コレラ問題に取り組む立場になくじっとしていたが、少しも終息しないどころか、ポスターで肉製品の持ち込みをしないように呼び掛けるといった、なまくら対策しかしていない政府に我慢ならず腰を上げた。
 最初は、後輩議員たちに議員立法のノウハウを学ばせるべく裏方に徹していたが、時間もなくなりそうなのでじっとはしておれず、今は自ら動いている。なぜなら、私は2010年6月、農林水産副大臣を拝命し、就任2日目から2ヶ月間、宮崎の口蹄疫対策本部長として、牛と豚の殺処分と埋却の指揮をとった。あまりにも悲惨であり、このようなことは二度と起こしてはならないと心に刻み込んだ。
ところがそれから8年後、再び同じような事態が生じて日本の畜産が危機に瀕している。TPP11、日欧EPAで酪農家も急激に減っている。このままでは、日本から畜産業がなくなるのではないかという危惧から、6月10日の週から開店休業状態の会期末に汗をかいている。