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2019年9月20日

一刻も早いワクチン接種が必要ではないか- 政府の対応は口蹄疫と比べると後手だらけ -19.09.16脱稿-

 通常国会の後半、私は出入国管理法の改正により肉製品を持った者を空港や港で入国拒否(上陸拒否)することを目指したが、立憲民主党の法務委員会の筆頭理事が1ヶ月も法案の議論をせずにほったらかしにしておいた。挙句の果てに、最後の段階になって賛成できないと言ってきて、せっかく準備して与党にも相当根回しをしたのに成立させられなかった。
 もっと感染力が強く、今でもワクチンのないアフリカ豚コレラの侵入が心配であり、一刻も早く上記の法律を成立させ、中国人観光客がウイルスを持ち込むのを防がなければならないと思っている。
付記:9月中旬、恐れていたとおり、韓国でアフリカ豚コレラが発生した。韓国のほうが近いし、いつ日本に上陸するかわからない。

<止まらない国内感染、とうとう長野でも発生>
 ところが、今まで豚コレラを抑えきれず、9月14日にはとうとう長野県畜産試験場でも感染が認められ、349頭を殺処分しなければならなくなった。

歯がゆいばかりである。6月17日のブログ「豚コレラ・アフリカ豚コレラは水際でくい止める以外になし」で、2010年の口蹄疫のような大量殺処分を繰り返してはならないと主張したが、残念ながら国内感染はとどまるところを知らず、既に13万3000頭余が殺処分されている。2010年の教訓が全く生かされていない。
 安倍首相はわざと「悪夢の民主党政権」と言い、民主党政権時代の政策はことごとく失敗したかのようになじる。しかし、私は2010年6月農林水産副大臣を拝命した翌日に宮崎県に飛び、「口蹄疫現地対策本部長」として、口蹄疫を鎮めることに全力を挙げ、7月17日には大切な種牛の殺処分に立ち合い帰京した。つまり、1ヵ月半で終息させたのである。
 それに対し、史上最長になんなんとする安倍政権の下、昨年9月9日に26年振りに発生した豚コレラはいまだ収束の気配すらみせていない。明らかに対応の不備・怠慢である。

<口蹄疫と豚コレラの類似と相違>
 違いはどこにあるのか。我が民主党政権は早期にワクチン投与の決断をし、と早期の終息に成功した。勿論、そこまでしなくてもという反対論もあった。大事な種牛は例外にすべしといった現実的な要望もあった。しかし、口蹄疫の発生した地域でも、また周りの発生していない地域でも、予防的にワクチン接種をした。そして、手厚い補償措置を講じ、再開にあたっても援助措置を講じた。
 豚コレラは豚とイノシシだけだが、口蹄疫は(蹄が偶数に分かれる)偶蹄類の動物に共通であり、牛も豚も山羊も殺処分の対象となった。深さ7mの穴を堀り、次々患畜を埋めていく光景が、いまだ私の脳裏には焼きついて離れない。だから、豚コレラの感染を止めるべく、前通常国会で水際対策を講ずる法律改正をせんとしたのだ。
 口蹄疫と豚コレラは同じように感染力が強く、致死性が高いのも共通である。また、多分二つとも国内で発生したとは考えられず外部からウイルスが持ち込まれたことにより発生している。ただ、違いもある。前者は2000年に92年振りに発生し、それから10年後の発生だった。しかし、ワクチン接種の前例はなかった。それに対して後者は1992年以来の26年振りの発生であり、かつては飼育豚へのワクチン接種が広く行なわれていた。そして長年かけてワクチンを使わない防疫体制を確立してきていた。こうしたところに政府がワクチン接種をためらう理由がある。

<ワクチン接種をためらう理由>
 第一に再びワクチンを打ってしまうとそこから脱却して再び清浄国になるのにかなりの年月を要するからである。第二に非清浄国となると輸出入に影響してくるからだ。ただ、日本からの輸出などほんの僅かにすぎない。いくら農産物輸出1兆円を目標に掲げているからといって、僅か数10億円の豚肉輸出を続けるために国内養豚農家を犠牲にすることはない。一方、非清浄国になると多くの非清浄国が日本に輸出攻勢をかけてくる心配が生じてくる。第三に、ワクチン接種だと豚コレラにかかった豚肉も流通することから、人には感染しないといっても(豚肉を避ける)風評被害が生じてくる。第四にワクチンを接種しても効果には個体差があり、接種しても感染する豚が出ることもある。第五に接種後に感染すると食欲不振などの症状が出ず、発生に気付かずウイルスがはびこってしまうおそれもある。

<公共機関での発生と関東での感染で局面が変わる>
 政府は対策として養豚業者に飼養基準を守れ、衛生管理を徹底しろと指導してきた。長野県では養豚農家が消毒や豚舎の改修を実施するために豚の早期出荷を奨励し、支援してきた。しかし、今回の長野県畜産試験場のようにその範を垂れるべき公共機関からも豚コレラが発生したのだから、もう防ぎようがないということである。岐阜県に隣接した長野県だけでなく、遠く離れた埼玉県でも発生した。長野県の場合は、感染経路はイノシシだと容易に想像がつく。これに対して埼玉県は、国内の感染豚の肉製品か非清浄国の肉製品か、あるいは野生イノシシか経路が不明である。今や関東にまで拡大したのであり、このままいくと今の11府県から全国に拡がっていくことは時間の問題である。

<ワクチン接種を急ぐべき>
 日本は6割7割が山である。臭いの問題から今や養豚農家は大半が人里から離れた所に存在している。つまり、野生イノシシがすぐ隣りに来る場所なのだ。だから、政府はウイルスを媒介する野生イノシシへの経口ワクチンの接種(ワクチン入りの餌の散布)の拡大を打ち出してきている。しかし、こんな小手先の対策は効き目が限られている。幸いにして感染した豚とワクチン接種して抗体ができた豚とを検査で区別できる「マーカーワクチン」も存在する。それであればワクチン接種をためらう第一の理由である清浄国への復帰に支障が生じない。養豚農家はいつか自分の農場の豚も殺処分させられるのではないかと不安におののいている。このまま放置されたら2010年の宮崎県の29万7,808頭を追い抜く大惨事になりかねない。
 今や決断の時である。関係府県も養豚農家の大半もワクチンの接種を望んでいる。
(付記:9/20報道によると農水省もやっと地域を限定して、ワクチン接種をする方針を固めた。)

2019年9月 8日

【漁業法シリーズ5】北欧のエネルギーの地産地消は(洋上)風力発電で決まり - 漁業法改悪で日本の海岸に見苦しい洋上風力発電が林立するおそれ - 19.09.08

 8月中旬に北欧諸国を訪問した。連日35℃近くの東京から20℃以下の北欧の国に降り立つと、全く別世界のように感じる。8月に入ると秋の気配が漂うという。9月8日告示の長野市議会に立候補する女性の応援、いつも繰り返される我が党のゴタゴタの話し合い、私のブログに対する抗議への対応等慌ただしく過ごしていたが、前から予定していた「高レベル放射性廃棄物処理議員連盟」(私が事務局長を務める)の視察である。10万年も埋めておかなければならない燃料棒等の処理場の現場を見るための「世界穴ボコ視察」(私のつけた渾名)の一環だが、今回は、原発に代わる再生可能エネルギー(洋上風力発電や水素発電)の先進地視察である。

<自転車道が「王道」のコペンハーゲン>
 デンマークは原発が一基もない。確固たる国の方針である。人口580万人、九州と同じ広さの国であり、完璧に再生可能エネルギーに向かって突き進んでいる。その一環が車をなるべく利用せず、自転車での通勤である。海抜173mが一番高い山(丘?)なるが故の知恵である。ヨーロッパの主要国の大都市では、登録すれば誰でも利用できる乗り捨て自由のシステムが常識になっている。

<デンマークの麦わら熱供給及び発電>
 昨今日本では、稲わらはほとんど利用されず、田んぼにすき込むか燃やすかであるが、かつては畳の裏に、藁縄、わらじ、わら細工、藁葺屋根や漁の網にまで有効利用されていた。長野では冬の家の囲いになくてはならないものだった。私も手で、その後は縄なえ機で農作業用の縄をなった最後の世代である。つまりそこにあるものを使う「地産地消」がどこでも行われていたのである。
  デンマークでは、麦わらが500Kgに達する大きな長方体に固められ、倉庫にうず高く積まれ、街部では熱供給に使われ、田舎では発電に使われ、完全燃焼され灰が再び畑に戻されていた。まさに循環社会を地で行っている。現在電力の71%が再生可能エネルギーで(風力48%、バイオマス18%)、2050年には化石燃料からの完全脱却を目指している。

<年中強風が吹く遠洋の北海は、洋上風力発電の最適地>
 我々は、コペンハーゲンからユトランド半島の付け根を片道3時間車でぶっ飛ばして、洋上風力発電基地エスビア港に向かった。船舶航行船酔いに苦しみながら片道1時間半、朝5時起きで1日中かかる強行軍である。数日後ベルギー沖でも現地視察を行った。
 洋上風力基地は沖合30Kmぐらいで深さがせいぜい船舶の航行の妨げにならないように、8~20mの所にかたまって設置されていた。大きなものは高さ180m、長さが半径80mを超える羽が3つ、最先端で時速200~300Kmで回っている。塔の間隔は羽の直径の5~6倍の約1㎞。昔はもっと小さかったが、徐々に大きくなり、間もなく洋上風力発電所1基地で100万kwと原発1基分に達するようになるという。耐用年数は大体15~30年、途中で修理も必要で雇用も拡大する。
① 遠浅の海(塩の干満差が大きく、海底に土台を設置する着床式が可能)
② しょっちゅう7~8km/時以上の風が吹いている(陸上より風が強い)
③ 漁業操業、船舶航行にも障害とならない(陸上は土地利用の問題と景観問題がある)
④ 環境問題がない(海岸近くは生命活動が一番盛んで手をつけられない)

等の条件がそろわなくてはならない。今回訪問したデンマーク、オランダ、ベルギー沖の北海は①②を完全に満たし、③も④もほぼクリアしているという。

<漁業・環境との調整もルール化>
 漁業がやりにくくなり反対もあったが、洋上風力施設が「漁礁の役割」をして、ムール貝が多く集まり漁獲高(貝獲高?)は増えているという。工事の音は鳥やアザラシに悪影響がでるが、でき上がると、潮の干満で飛び出た場所にはアザラシが子育てに来ているという。
 環境問題の一つに、渡り鳥の衝突があるが、鳥が集まる海岸近くや陸上と違い、衝突する鳥は無視できる状態だという。陸上で所狭しと風力発電が行われ、景観を害している反省から、洋上風力発電は砂浜から見えない30㎞も沖合の距離にまとめて建設されている。更に砂浜で今まで通り遊べるように海底ケーブルも地下に埋められ海水浴客が太いケーブル線を目にすることがない。
 つまり、今のところ理論上は非の打ちどころがない発電であり、あとは問題はコストだけである。

<北欧の適地適電は洋上風力で決まり>
 ヨーロッパが、英・丁・独・白・蘭の5ヶ国を中心に世界の洋上風力の90%以上を占めている。かくして北欧では多くの洋上風力発電所が建設中であり、支柱を海底に打ち付ける専用船もできている(石油を運ぶタンカーと同じ)。石油もガスも枯渇して高騰していく。オランダではそれに加えてガスの掘りすぎで地盤が沈下し、小さな地震も頻発し、地震になれていない国民はこれ以上の地下資源の掘削に疑問を持ち始めている。
 3ヵ国の関係者は、地球温暖化の元凶の化石燃料に代わりうるとゆるぎない自信を持っており、原発などに見向きもしていなかった。北欧の国々はこぞって同じ方向に向かっている。いまだに原発にすがりつき、石炭火力に拘っている日本とは大違いである。

<水素発電で一歩先を行くオランダ>
 日が照らないと太陽光発電はできず、風力発電は風がやむと止まってしまうし、安定した電源とならないという欠陥がある。電力は貯蔵できないからだ。太陽光発電と風力発電のこうした欠陥を補うのが水素発電である。発電量が需要を上回っている時にその余剰電力を使って水を電気分解して水素で貯蔵し、必要な時水素を燃やして発電する。カーボンニュートラルであり、空気を汚すことはない。
 オランダの「水素のホットスポット」フローニンゲン州のマグナム発電所ではこの目標を達成すべく、今は天然ガスから水素を取り出し発電する計画を実行中だった。水素発電は天然ガスを燃やすタービンを少し改良するだけでそのまま使える。その成否の鍵は三菱のタービンにかかっているという。今の計画では2025年には水素発電(Green H2)を開始する予定になっている。

<日本企業も参加>
 デンマークでは、日本風力開発、MHI Vestas(三菱重工も出資)、オランダでは MHPS(三菱日立パワーシステムズ)、ベルギーでは三菱商事と日本企業がどこでも参加し、中心になっているところもあった。
 ベルギーの担当者は、日本の環境規制をもっと厳しくすることにより、原発や化石燃料発電が高くつき再生可能エネルギーに転換せざるをえないようにすべきだと主張した。つまり、彼らからすると原発をいつまでも止められず石炭火力でお茶を濁すことが信じがたいのだ。それを日本では環境分野でも規制緩和の大合唱であり、再生可能エネルギーに転換の速度は段違いに遅い。

<日本は北欧程洋上風力に向いていない中、漁業法改悪がもたらす混乱予測>
 日本でも数は少なく北海ほどではないが、手をつけ始めている。8/29東電は銚子沖に37万Kwの洋上風力発電所建設計画を発表し、2024年度以降の運転開始を目指すという。しかし、問題は多い。つまり、遠浅の海は少なく、風も一定せず弱く、至るところで漁業が営まれ、船舶航行の頻度も格段に高い。北欧とは自然条件が大きく異なる。
 そこで気になるのが、2018年秋の臨時国会で改悪された漁業法である。漁民が漁業権を「適切かつ有効に活用」していない場合という不透明な基準で、突然漁業をやめさせることができるようになった。これでは洋上風力を建てんがために漁民の漁業権をいとも簡単に取り上げ、日本の美しく漁業資源の豊富な海を洋上風力発電所に明け渡すことにつながる恐れがある。いや、もっと言えば、それが目的で漁業法を改悪したのかもしれない。上記の銚子沖は、欧州の30~40㎞沖合に対し、わずか1~2㎞であり、銚子の漁業組合は洋上風力発電に賛成している。沖合で陸から見えない場所という配慮など一切ない。
 このブログを漁業シリーズの5とした所以がここに存在する。