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2019年11月25日

新聞記事のご紹介 「夕刊フジ」「日本農業新聞」

夕刊フジ 2019年11月12日(火)
『「民営化は善」の再考を』
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日本農業新聞 2019年11月14日(木)
『日米協定「やられっぱなし交渉」』
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2019年11月22日

【台風19号水害シリーズ3】千曲川の洪水を防ぐには川を流れやすくするしかない。-川の掘削・浚渫、大滝ダムの撤去、二つの狭窄部の改修が必須- 19.11.22

<究極の解決法地球温暖化防止>
 今回の洪水は大型台風が引き起こしたものであり、元凶は地球温暖化である。之をストップするしかない世界はパリ協定でこれに歯止めをかけようとしているが、日本はナマクラな態度を取り続け、トランプ大統領は脱退を口にしている。安倍首相は、友好国としてトランプ大統領に釘をさすべきだが、その気配は微塵も感じられない。
私は、この国会から5度目の環境委員となった。ささやかだが、地球環境問題の解決に力を尽くしたいという思いがあるからである。ただ今回は当面のことに焦点を当てる。(全議員活動の1/3を環境委に所属しており、外務4回、農水2回を凌いでいる)

<最も簡便なのは川床の掘削・浚渫>
 千曲川の洪水は大雨が降る度に、数十年に1回ぐらい起きている。これを防ぐために、いくら堤防を嵩上げしても、あるいはほとんど役に立たないダムを造っても完全に防ぐことはできない。
 まず計画的に川床の掘削・浚渫をこまめに行うことである。上流から土砂が流れてきて下流に溜まるのは自然なことである。玉砂利は土木工事には欠かせない。掘削・浚渫を認めていた頃、土手を崩したり橋梁を危うくするまで掘削・浚渫しすぎたため禁止されてしまった。厳重な規制の下に認めていくべきである。
 これをした上で、やはり伝家の宝刀、堤防の整備が必要である。11月4日に一緒に視察した大熊孝新潟大名誉教授等によると堤防地盤の沈下が越水の原因の一つになり、注意が必要だという。越水しても被災しないような堤防の強化が欠かせない。

<あったにこしたことのない道路より治山治水を優先>
 かつて民主党政権時、普通の堤防よりも10~15倍コストがかさむ「スーパー堤防」(高さの30倍の幅を持つ高規格堤防)を事業仕分けで廃止した。一理あることだった。その後多摩川、淀川等都市部に限定して復活している。
 かつての洪水の常襲地帯だった立ヶ花狭窄部の大俣は、輪中型堤防で囲まれ、今回はびくともしなかった。きでちんとした堤防で洪水は防げるのだ。だから、私は同じ公共事業でも道路よりも活山活水を重視すべきだと思っている。招待がくる○○期成同盟では、道路よりも堤防の期成同盟に出席し「あることにこしたことがない道路よりも堤防を」と同じ挨拶をすることにしている。

<西大滝ダムの撤去>
 数十年単位の長い眼でみたら森を整備し、棚田・水田を守り、その保水力の維持に努めるべきである。そんな悠長なことを言っておれないとなると、もっと即効性のあることを考えなければならない。
 川床の掘削・浚渫の次に簡便で理に適っているのは、川の流れを自然の流れに戻すのが一つであり、もう一つは思い切って流れを変えることである。
 前者でいえば、長野・新潟県境(県境から13km上流)で流れを止めている西大滝ダムを撤去することである。もともと140mあった川幅の両岸をコンクリートで固めてしまい、土砂の流れを止めている。豪雨時には流速も低下し、上流で洪水をおこす一因となっている。戦時中の1939年、電力需要に充てるという国策のために下流の宮中ダム(1938年)とともに造られた。前者は東京電力に、後者は国鉄そしてJRに送電される。そして、人間が住む下流63kmにわたり、減水区川が生まれるという先進国にはありえない状況がずっと続いている。(日韓で元徴用工判決を期に関係がいまだかつてないほど悪化している。実は戦時中のこの突貫工事にも導水管の掘削に多くの朝鮮人が徴用され、百人超の犠牲者を出している)

<何の役にも立たなかった浅川ダム>
 あまりにも強烈だった穂保の破堤で忘れられているが、実は決壊と丁度同じ頃浅川排水機場付近で内水氾濫が始まった。ところが、水を貯めない穴あきダムの浅川ダムは、その名の通り貯水効果はゼロで、最大体積7.8m3の水がただ通過しただけだったのだ。(「週刊金曜日 19.10.25 千曲川決壊と北陸新幹線車両が浸水したワケ」(まさのあつこ))大きなダムで貯水量が源流の水位を下げるぐらいでないと、ダムは洪水防止にほとんど役立たないことを浅川ダムは証明してくれたのである。ところがこのことはもともと役に立たないことがわかっていたのか誰も触れていない。

<鮭の遡上する川に戻す>
 また、県境にある西大滝ダムを撤去すれば土砂が自然と流れるようになり、人工的に川底の掘削する必要性が少なくなる。山の生態系を変え、水田を放棄し、水路をコンクリート化し、ダムを造りと、我々はあまりにも自然を変えすぎたのである。この二つのダムにより、かつては数万匹遡上した鮭も通れなくなり、昔の生態系をこわしている。一応魚道は設けられているが、形だけであり遡河性魚(鮭のような遡上する魚)がどんどん遡上できる仕組みにはなっていない。ダムの撤去により鮭も遡上するようになる。昔は、新潟県の宮中ダムもなく、鮭が普通に千曲川を遡上していたのである。大熊新大名誉教授にいただいたメールには、今年は宮中ダムの11月4日までの鮭の遡上数は355尾を超えたという。西大滝ダムは11月2日で3尾である。
 これを機会に一気に自然を取り戻す必要がある。この件は『ダムは国を壊す』(今本博健京都大学名誉教授著)に詳しい。SDGsが叫ばれる今、二つのダムを撤去すべきなのだ。

<洪水をおこす流れを変える>
 次に考えられるのは、洪水が起こらないように流れを変えることである。
 江戸に城を造った徳川家康は利根川の洪水から江戸を守るため銚子に流れを変えている。いわゆる利根川東遷事業である。400年前に洪水防止事業に手をつけ、その後も着々と続けたのである。当時の土木技術は今と比べ話にならない。それでも当時でも世界一の人口を抱える大都市となった江戸を守るため心血を注いだのである。
越後平野は信濃川により運ばれた土砂が堆積してきた沖積平野であり、洪水が頻発し悩まされていた。16世紀末から分水の話が出ては消えた。1924年ようやく大河津分水路が竣工され、1931年に開始した。またその後も試行錯誤を続け1972年に河口から10km上流に関屋分水路が造られている。このため、上流の千曲川流域では度々水害に見舞われるが、越後平野も新潟市も免れているのだ。

<二つの狭窄部の同時改修>
 これにならって長野県の千曲川では、立ヶ花の狭窄部、そして次は飯山の戸狩の狭窄部をなくすしかない。この二カ所の掘削工事は同時に行わなければならない。費用は嵩むが、国民の命と財産を守るのは国の責務であり、何よりも優先して取り組まなければならないことだ。
 ただこれにより更に下流の新潟県は洪水の危険が多少ますが、上記分水路を拡張するなどの手立ても一緒に講ずれば、千曲川の治水が達成されることになる。

<防衛も大切だが防災も同列に論ずべし>
 上記二つの狭窄部の工事には多額の予算が必要である。しかし、何十年かに1回住宅も畑もメチャクチャにされるのを防ぐことが先である。例えば、今国家プロジェクトとしてリニア新幹線の工事が進行中である。これまたあったにこしたことはないが、必要不可欠でもない。総工費は9兆円だという。必要な理由の一つに南海トラフ地震があった時に、止まってしまう東海道新幹線の予備として必要だという。それなら千曲川の河川改良こそ防災にすぐ必要なのだ。そして予算は何十分の一か何百分の一ですむことではないか。
 安倍首相は侵略してくる国から日本人の生命財産を守ることにはことのほか熱心だが、災害から守ることも同列に扱ってもらわないとならない。オスプレイは1機100億円以上となり諸経費を含めると200億円を超えるという。「遠い防衛」より「近い防災」に先に手をつけても罰は当たるまい。

2019年11月21日

【日米貿易協定シリーズ5】トランプ再選の加勢をしただけの日米の貿易協定- アメリカにこびへつらう情け無い国になってはならず - 19.11.21

<ユニークな総取り方式のアメリカ大統領選挙>
 日本で選挙というと4割近くいる無党派層の獲得競争になるが、アメリカ大統領選挙は全く事情が異なる。日本のように総得票数の多寡で決まり票差で勝つというやり方ではなく、州ごとに選挙人を選び、勝った候補者は州の選挙人を総取りするという変則的な形になっている。そのためにトランプ陣営は概ね8、9割が民主党支持者のカルフォルニア州を端から捨てている。その反対にテキサス州では圧倒的に共和党が強く、そこに重点を置くことになる。つまり自らの支持者固めに奔走するのだ。

<先に敵に塩を送った巧妙なトランプ>
 今回の日米貿易交渉に、トランプ大統領が2020年の大統領選を最優先して取り組んでいたことは明らかである。その前の2019年5月訪日時に、8月には大きな数字が出てくると平然と言ってのけている。やり方が巧妙である。安倍政権を助けるため、参議院選挙前には交渉をやらなくてよい、と先に敵に塩を送っている。その代わり8月には自分の再選のために大きな妥協をしてくれるんだろうな、と脅しをかけていたのだ。後述するように再選にはコーンベルトの農民の支持が不可欠だからだ。

<コーンベルトの農民を意識した農産物関税引き下げ>
 トランプ大統領は2016年にどうして勝てたかを承知している。トランプ大統領の強力な支持者は、ラストベルトと呼ばれる中西部の自動車を中心とする製造業地帯の白人労働者、そして農民である。2016年にトランプ大統領が勝った州には、ヒラリークリントン候補が勝った州よりもずっと多くの農業従事者がいる。だから、再選を考えると今度の日米貿易交渉では農産物が重要になってくる。アメリカのとうもろこしの生産の80%は、コーンベルト地帯の中西部で作られており、大豆や小麦との輪作が行われている。
 9月27日に世論調査が行われ、農家では「支持する」が1ヶ月前の8月の調査より10ポイント以上も上がっている。前述した農業団体の役員が、カウボーイハットをかぶってなだれ込んできた9月26日の記者会見の直後に調査は行われている。ショー化した外交を巧みに使ったトランプ大統領の演出は効果抜群だったことがうかがえる。すべてトランプペースで進められており、傍目でみていても見事というしかない。そして逆にそれに味方して、唯々諾々とした交渉しかできない日本国政府にはがゆい思いをするばかりである。
 こうした図式から考えられるのは、2020年11月までにもう1回このような交渉が行われ、日本の農産物を再びこじ開けられるかもしれないということだ。

<Swing States(揺れ動く州)を制する者が勝利する>
 そしてこのコーンベルトの大半は、もう一つのトランプ支持者が多いラストベルトとも重なる。ミシガン、ウィスコンシン、アイオワ、オハイオ、ペンシルバニアがそういった州である。コーンベルトにはミネソタ、ミズーリ、イリノイ、インディアナ、オハイオ等も含まれる。トランプ大統領の再選にとってこの2地帯が圧倒的に重要なので、早くからここにターゲットを絞っている。2018年の中間選挙ではこのうちミシガン(0.2%の差)、ウィスコンシン(0.8%)、ペンシルバニア(0.7%)の3州で民主党が僅差で上院の議席を奪取している。これらの州は年によって得票が揺れ動くことからSwing States(注目州、揺れる州、激戦州、パープルステート:民主党の赤と共和党の青の中間の意味)と呼ばれ、両党とも力を入れる州である。
 主な産業は自動車を中心とする製造業と農業である。だから彼らの仕事を奪い、賃金を下げる移民に対しても厳しい態度をとらざるを得ない。

<ラストベルトの白人労働者を意識して自動車関税2.5%を譲らず>
 日本は、自動車の追加関税25%がなかったことでホッとしている一方で、発効後4ヶ月して始まる交渉でTPPで約束した2.5%の自動車及び自動車関連部品の関税撤廃を認めてくれるという淡い期待を抱いている。しかし、ラストベルトの白人労働者の支持が必要なトランプ大統領に、そんなつもりは全くないだろう。少なくとも2020年11月の大統領選挙まではありそうもない。トランプは選挙のことしか考えていないからだ。だから、アメリカは日本の農産物の関税を更に引き下げる交渉はしても自動車関税を撤廃する交渉には応じるはずがない。結論として日米貿易交渉はしばらく休戦するしかなかろう。米中貿易戦争が進展しない中、日本だけが餌食にされているのである。
 かくして、アメリカ国内にも海外にも大勢いるトランプ嫌いをよそに、強固な支持者を更に強固にする、再選戦略が着々と進行中である。

<日本こそ食料安保を理由に制裁関税が必要>
 このようなアメリカに対して日本はなまくらな態度をとるべきではない。アメリカが根拠不明な制裁関税を言い出すなら日本こそ対抗して制裁・追加関税を持ち出さなければならない。打ち出せる理由が二つある。
 一つは、前号で触れてきた食料の安全保障を理由にした制裁関税である。

<エコダンピングに当たるパリ協定離脱に制裁関税を>
 次が環境を理由とした制裁関税である。大統領は、「アメリカが持つ資源が活用できず、ビジネスや雇用に悪い影響が出る」とパリ協定に反対してきた。協定からの離脱は大統領選後の17年6月から主張してきたことだが、協定加盟から1年後の19年11月4日にならないと離脱の通告ができず、更にその1年後の20年11月4日(11月3日の大統領選挙の翌日)にならないと離脱できないことになっていた。偶然期日が一致したとはいえ、これは明らかに大統領選を意識して、アメリカの雇用を守るという宣言をしたのである。ラストベルトへのアピールである。台風19号が典型だが、地球温暖化で洪水や干ばつが増えている中での勝手な離脱通告であり、世界中から非難されている。
 もちろんアメリカでは多くの州がパリ協定離脱に反対の声をあげ、カルフォルニア州をはじめとして国よりも厳しい規制によりCO2の排出を抑えようとしている。こういう声を聞き入れる形で、CO2の削減をしない国からの工業製品には制裁関税をかけてもいいはずである。トランプ政権は激怒しても、世界は拍手喝采するだろう。

<こびへつらう外交は見苦しい限り>
 どうしてここまでアメリカに媚びへつらうのか私にはわからない。その反対に韓国には、放射能汚染を理由とした水産物輸入規制、徴用工判決等を理由に高飛車な態度をとり続けている。米国・中国といった大国に対してへいこらし、小国に居丈高なのは見苦しい限りである。嫌韓もよくないが、媚米、媚中もよくない。正しい道を行くべきである。
 米中貿易戦争の最中であり、日本は両超大国に対して毅然たる態度で臨める立場にある。私は、日本が長年取り続けてきた「自由貿易の旗手」としての立場は捨て、SDGsを地で行く途を選ぶべきだと思う。つまり、各国が自ら必要なものを自ら造り、貿易によるCO2を削減し、Goods Mileageを減らすことである。

(付記)
 私は、3年ぶりに昔のスタイル、STOP TPPと標された黄緑色のバッジとえんじ色のネクタイで武装して日米貿易協定のかかった11月13(水)の外務委と11/19本会議に出席した。しかし多勢に無勢、参議院に送られてしまった。あとは不透明な点をしっかり追及していくしかない。

2019年11月20日

【日米貿易協定シリーズ4】自動車一強、トヨタ一強は政界の一強とかわりなし -多様性のない就業構造では将来が危ういばかり- 19.11.20

<日本の外への徒らな噴出的輸出が生んだ数々の通商摩擦> 〔別表「アメリカの貿易赤字上位5カ国・地域の推移」参照〕
 この日米貿易交渉の根底に日本の洪水的自動車輸出があることは誰でもが承知している。
 日本からの洪水的輸出は何も今に始まったことではなく、繊維摩擦の頃からずっと続いている。
相手国の産業を叩きのめしてもお構いなしの噴出的輸出である。このためアメリカとは鉄鋼、半導体と品目を特定した貿易交渉が行われてきている。今USTR代表を務めるライトハイザーは、1983~85年レーガン政権下でUSTR次席として日本に鉄鋼輸出規制をさせた相手である。
 1980年代の後半から1990年代にかけて冷戦構造が崩れ、敵対国がソ連ではなくなった。アメリカの世論調査では、国民は日本をソ連に代わるアメリカのライバル国認識し、政府もそのように対応してきた。その延長線上に日米構造協議があり、さらにTPPにつながっている。

<トランプがメキシコ(NAFTA)に怒り立つ理由> 〔別表「日本のアメリカへの自動車・自動車部品輸出額と黒字額の推移」参照〕
 それでも今は中国をはじめ他の国もアメリカに対して輸出攻勢をかけ、アメリカの貿易赤字相手国が分散しているので、日本の悪玉ぶりはその当時に比べれば減った。例えば今1980年代の日本と同じく貿易面でも嫌われているのが中国である。
日本は対米貿易黒字額6兆4,553億円(2018)となっている。対米貿易で見ると日本からの輸出が15兆4,702億円、アメリカからの輸入が9兆149億円と、倍半分の差がある。
 赤字額のドルベースでいくと1980年代から1990年代にかけては日本が1位、その後中国とメキシコに追い抜かれて、今は、1位が中国で4,195億ドル、ドイツ、メキシコに続き日本が4位で672億ドルある。日本の貿易黒字はその間ほとんど変わっていない。
 このように、貿易赤字相手国はかなり分散したが、どの国もアメリカに何でも売りつけてくるとトランプ大統領が怒り狂っている。そしてその最初の標的は、北米自由貿易協定(NAFTA)の恩恵に浴しているメキシコだった。メキシコは806億ドルもアメリカに輸出をしており、自動車分野においても世界第4位の輸出国である。といってもメキシコの自動車会社の車ではなく、日本、ドイツ、韓国等が北米自由協定(NAFTA)を悪用し、メキシコで自動車を生産してアメリカに輸出しているからだ。そこになんとフォードまでアメリカ輸出用の車をメキシコで生産すると言い出したので、トランプは止めたのだ。極めて当然のことである。

<トランプ大統領の車の地産地消にも一理あり>
 平均的なメキシコ人の賃金はアメリカ人のそれと比較して約4分の1、そしてNAFTAで国境に関税がないということであれば、労賃の安いメキシコで生産してアメリカに輸出したほうが利益が大きいのは明らかである。このからくりに激怒したトランプ大統領はすぐにNAFTAの再交渉を言い出した。2年前に日本のトヨタもメキシコで年間20万台の生産工場を建てようとしたところ、メキシコ人が使う車をメキシコで造るのはいいが、アメリカ人の乗る車はアメリカで造れ、Hire American, Buy Americanが筋だと主張した。つまり、工業製品(車)も地産地消ということであり、実は理に適っていることなのだ。
 だから私はトランプ大統領の一連の主張、例えばTPPに入らず、NAFTAをおかしいという考えは十分に理解できる。日本で言えば、工場を労賃の安いアジア諸国に移転し、製品を日本に逆輸出している矛盾は直さなければならないのに放置したままである。だから、自動車以外の製造業はことごとく日本から消えつつある。まさに危機なのにこれを止める気配がない。イケイケドンドンの価値観しか持たず、ひたすら自由競争なり自由貿易だけを声高に叫ぶ大半の人たちは、残念ながら理解できないだろう。

<日米貿易における自動車一強> 〔別表「自動車貿易をめぐる日本の不均衡(2018)」参照〕
 こうしてみるとトランプがNAFTA、中国に続いて日本の自動車を目の敵にしても仕方ない。なぜなら、対日貿易赤字の大半は自動車によるものだからだ。日本の自動車関連貿易輸出額が5兆4,536億円は、全アメリカへの輸出額の35.3%である。それに対してアメリカから日本への自動車関連の輸入額は1,705億円だけである。その産業ごとに製品が行って貿易の均衡を保たなくてはならないという水平貿易論がある。ところが、車は日本がアメリカに対して圧倒的な輸出超過になり、逆に農業で見るとアメリカが圧倒的に輸出超過になり、全く逆の形となっている。つまり、二国間で得意な製品を輸出し合ったほうが、両国にメリットが大きいという古典な国際分業論そのものが日本両国で実現している。ところが、それが両国をゆたかにs売ることがなくむしろ両国を傷つけているから、貿易交渉が必要となっているのだ。更に、いかんせん自動車と農産物の価格が違いすぎ、とても均衡が取れないからである。つまり、自由貿易を絶対視する論理は破綻してしまっているのだ。
 自動車関連貿易赤字で見ると5兆2,831億円。だから対日貿易赤字に占める自動車関連赤字の割合は、なんと81.8%に及ぶ。日本の対米貿易では自動車1強である。そして、日本の製造業の中でも自動車産業1強になりつつあるのではないか。

<自動車でもトヨタ一強>
 かつては日本が得意とした輸出品は繊維関連、そしてカメラ、テレビ・ラジオといった家電製品だったし、鉄鋼、半導体を得意とした時もあった。しかし、今や繊維や家電は見る影もない。このようにたった一つの産業に頼る日本の産業構造がいいとはとても言えまい。日本こそ安全保障上の理由で農林水産業も含め他の色々な産業をきちんと守らなくてはならない。
 そうした中、11月8日トヨタ自動車の9月連結決算が発表された。売上高が史上最高の15兆2,855億円で対前年比4.2%増、純利益は1兆2,149億円で対前年比2.6%増、新車の新型カローラとRAV4の売上が順調だったからだという。15兆円という金額は、日本の農業生産額が8兆円だから1社で農業全体の2倍の売上高を記録したのである。
 それから1週間後に発表されたトヨタを除く同業他6社の業績はそういうわけにいかなかった。スバルを除く他5社は減収減益であり、特にゴーン問題で揺れている日産は売上高が5兆31億円と対前年比9.6%減、純利益も654億円で対前年比73%減と大きな差をつけられている。

<バランスの取れた産業構造にしないと日本は衰亡してしまう>
 政治の世界では自民党1強と言われ、その中でも官邸一強ないし安倍1強と言われる図式によく似ていて、自動車一強、なかでもトヨタ一強なのだ。そしてあちこちに歪みが生じているのは政界と同じである。
 このようないびつな国が健全であるはずがない。産業間格差、地域間格差が極まってきており、日本の産業構造も社会構造ももう危険水域に入っていると言ってよい。いろいろな産業がそれなりに活況を呈していかなければ国の発展も安定もままならず、衰亡していくだろう。
このアンバランスな状況は絶対に打破していかなくてはいけないと思っている。

2019年11月19日

【日米貿易協定シリーズ3】アメリカの対日要求は止むことなし-農産物を犠牲にする悪習は止めるべし-19.11.19

<アメリカ農産物のいいお客様・日本>
〔別表「日本の世界からの輸入農林水産物及び農産物の推移と上位5カ国」、「日本のアメリカからの輸入農林水産物及び農産物の推移と上位5品目」参照〕
 日本は世界有数の農産物輸入国である。とりわけアメリカにとっては一番のお客様である。日本の総輸入額82兆7,033億円のうち農産物は6兆6,220億円、そのうちの約4分の1にあたる1兆5,487億円をアメリカから輸入しており、2位中国7,552億円の倍以上の輸入額である。
それとは逆に日本の工業製品(特に自動車)にとってアメリカが1番のお客様である。そのアメリカが安全保障上の理由で25%の追加関税をかけんとしている。おかしな話である。日本で食料自給率が37%に下がってしまった。安全保障上の理由で追加関税を許すなら、日本こそ食料安全保障上の理由でアメリカの農産物にも25%の追加関税をかけてもいいことになる。

<害虫発生もトウモロコシ不足も嘘に嘘を重ねているだけ>
 もう一つ今回の交渉結果でおかしいのは、トウモロコシの輸入約束である。さすがに恥ずかしいのか安倍首相も日米貿易協定の外と言っているが、いつの間にか総輸入量の約4分の1にあたる275万tもの米国産飼料用トウモロコシを前倒し輸入するということになっている。増加分に相当する鶏や豚や牛が増えるわけではないのに、一体どう消化するというのだろうか。
 日本のトウモロコシにツマグロヤトウムシという害虫の被害が生じ、その分の穴埋めが必要だともっともらしい理由(後付け)がなされているが、デタラメな話である。まず被害はそんなに大きくない。次に日本では濃厚飼料の穀物であるトウモロコシ生産している農家はほとんどおらず、もっぱらデントコーンと称される粗飼料用のトウモロコシである。つまり、輸入トウモロコシと競合する作物は日本にはほとんどなく、もとからアメリカに頼りきりなのだ。桜を見る会の嘘は国内問題で済むが、外交交渉で嘘で塗り固められた主張をされてはたまらない。
それより何より大きな矛盾は、自民党政権になってから我々が導入した農業者戸別所得補償を廃止して10aあたり10万円もかけ飼料米を振興してきた。その飼料米にこそ完全に衝突するのである。

<金額がはずむトウモロコシに目をつけた元ビジネスマン・トランプ>
 ただ一つ感心するのはさすがにビジネスマンのトランプ大統領である。1兆5487億円の農産物輸入のうち1位はトウモロコシであり、3,421億円に達する。2位の牛肉1,650億円、3位の豚肉1,379億円の2つを足してもトウモロコシには及ばない。それを承知しているトランプ大統領はトウモロコシに目をつけたのだ。今は米中貿易戦争の真只中であり、中国は35%の関税をかけているのでトウモロコシがアメリカ国内でダブついている。余った分をエタノールの原料にするわけにもいかず、ちょうどよい売り先として日本が使われているのだ。
 大半の人は、日米貿易問題というとコメ、そして牛肉を思い浮かべるが、金額はトウモロコシと比べると少ない。ビジネスマンだったトランプは実利を重んじ金額が大きいものに目をつけたのだ。
このこと一つをとってみても、日米FTAは日本の畜産農家を困らせ、アメリカの穀物農家(特にトウモロコシ農家)を助ける結果になっている。別号で後述するが、再選を目指すトランプ大統領はコーンベルトの農民に焦点を合せているのである。つまり、安倍政権はトランプの勝利のために日本の農民を差し出したのが今回の交渉である。

<アメリカの過大要求は終らない>
 アメリカは、もともと自分勝手な国である。そこにトランプが大統領になり、公然とアメリカ・ファーストと言い放ち拍車をかけている。メキシコはNAFTAの改正に相当協力したのでもうこれ以上は要求されないと思っていたら、不法移民の流入が国家の非常事態だと難癖がつけられ、制裁関税の標的にされてしまった。一安心している日本も今後次々と難癖をつけられ、いつ標的にされるかはわからない。
 昨年9月の共同声明では、もともと今回の交渉は第一段階目(first-stage initial tariff agreement)で次があると、二段階方式を規定している。おまけに次の段階にはもっと拡げるぞと正直に明言しているのである。アメリカはそういう点では意外と正直なのだ。
 今回、1962年通商拡大法232条の安全保障を理由とした25%の制裁関税をチラつかせて甘い汁を吸ったので、今後は同じ手法で日本側に次々と無理難題を要求してくるのは必定である。

<日本も農産物関税をTPP以前に戻すと反撃の用意をすべし>
 日本はこれに対して敢然と立ち向かわなければならない。例えば、アメリカが25%の制裁関税を持ち出したら、この協定を失効させると正々堂々と言い続けることである。日本も農産物の関税をTPP以前に戻してオーストラリア、カナダ、NZといった農産物輸出ライバル国と比べて不利な状態にすると反撃するのだ。もっと言えば、追加関税とは言わないまでも、アメリカが2.5%の自動車・自動車部品の関税を撤廃しないというならば、約束が違うとして食料安全保障を理由として農産物の関税を25%に上げると言ってもおかしくない。
 アメリカはしたたかであり、前号のとおり当面25%の追加関税はないと口約束はしているが、協定には何一つ入っていない。また、2.5%の自動車関税の撤廃も不明確のままである。だから、11月8日に二国間会談の明確な内容を示せと岡田克也委員が審議を止めたのである。

<コメを輸入しても牛肉でもアメリカの対日赤字は解消せず>
 【日米貿易協定シリーズ1】で述べたとおり、ウルグアイ・ラウンドで輸入を義務付けられたミニマムアクセス米(マイ)77万tの4割近い37万tをアメリカから輸入している。金額にして297億円である。仮に数10億に及ぶ日本のコメ消費量の全てをアメリカからの輸入でまかなうとしても10倍の約3,000億円にしかならない。トウモロコシの3,421億円にも及ばないし、膨大な貿易黒字6兆4,553億円と比べたらほんの僅かなことなのだ。だから、今は大半の人が気がついているが、対米貿易黒字を農産物の輸入によって解決するなどということはあり得ないことなのである。それにも関わらず、日米貿易交渉の歴史は、農産物を差し出して工業製品の輸出を大目に見てもらうことで一貫していた。そして、今回もその流れに完璧に沿ったものとなった。
 2000億円を超える台風の被害、そして次々と繰り出される自由貿易協定、これで農業者に意欲を持って取り組んでほしいと言っても無理なことである。今から20年後には想像もつかないほど農業後継者が激減し、それこそ食料安全保障に危険信号が灯っているのではなかろうかと危惧する次第である。

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