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【新型コロナウイルス感染症シリーズ3】コロナ疎開こそ止めないとならない - こんな時ぐらい東京は地方に遠慮すべきだ - 20.04.18

 日本だけではなく、世界中がコロナ一色である。このコロナの問題は我々の今までの生き方自体、つまり政治、経済、社会のあり方に疑問を投げかける大きな出来事だと思う。

<アメリカの州境をまたぐ移動制限騒動>
 山ほど考え直さなければならない点があるが、その中の一つに「コロナ疎開」という現象があり、多くの教訓を含んでいる。
 三密を避けるべしと言われているが、その三密が一番酷いのは大都会である。だから1千万の大都市武漢でこのコロナウィルス騒ぎが始まり、今世界の首都ともいえるアメリカのニューヨーク州なかんずくニューヨーク市が大変な被害に遭っている。
 当然のこととして皆安全な所に行こうとする。アメリカではNYの富裕層がトランプ大統領の別荘もあるフロリダに逃げ出した。これに対してフロリダ州が14日間の隔離義務を行政命令で発出し、クオモNY州知事が憲法違反だと批判する騒ぎとなっている。

<日本の都市と地方の鞘当て>
 テレビのニュースが連日地図入りで、どこの県で何人新型コロナに感染したということを伝えていた。青森、山形、岩手、鳥取、島根、鹿児島等長らく感染者ゼロで、白く色塗りされていた。4月17日現在、いまだもって岩手はゼロである。国民はそれが頭に残っていたのであろう、週末どこかに出かけようとしたとき、感染者の多い東京、大阪はパスである。そこで3月の3連休に鳥取砂丘に観光客がどっと訪れたという。情報化社会がかもし出したホットスポットであった。鳥取県の人たちは、都市部の人たちの状況に理解は示しつつも、複雑な心境であったようだ。
 柳田清二佐久市長が3月下旬、東京ナンバーの車が佐久に多く来ているのに気付き、このような動きをあまり歓迎しない、といち早くSNSで発信し、物議をかもしていた。東京に近い東信地方の住民の気持ちを素直に代弁したものである。阿部知事も呼応するかのように「不要不急の(県内への)帰省は控えていただくのが望ましい」と発言していた。連日の小池都知事の大喧伝(?)もあってか、東京はすっかりコロナ汚染都市のイメージが定着した。

<トランプ大統領は思いとどまり、安倍首相は断行した全国非常事態宣言と州境(県境)移動制限>
 東京が国内感染者数の約3割を占めており、それはそれで仕方ないとして、問題なのはコロナウィルスの全国各地への拡散である。当初は、コロナウィルスの地方拡散は春休みに若者が帰省するのはよくないのではないかということが言われていた。ところが4月7日に7都道府県に発せられていた緊急事態宣言が、4月16日に突如全国に拡大された。その大きな理由の一つは、地方へのコロナウィルスの拡散を防ぐことである。トランプ大統領は一旦はNYを含む民主党知事の3州を対象に移動制限を掛けようとしたが、思いとどまっているのと好対象である。

<長野市でも不特定多数の接触者に感染の恐れ>
 長野県でも、ぽつぽつ感染者が発生していたが、東京と違い経路はほとんどわかっていた。長野市の例では第一号はイギリスから帰国した女性だが、濃厚接触者は夫1人と冷静に受け止められていた。
 ところが、4月10日長野市権堂のキャバクラ「林檎館(りんごかん)」の関係者2名が感染者と判明した。東京に行った従業員がコロナウイルスを持ち帰り、何十人もの不特定多数の濃厚接触者が生じてしまった。小池都知事が何度も指摘した、感染経路のわかりにくい厄介な発生源である。こうなると真面目な長野市民は一斉に繁華街「権堂」に出かけることを控えることになる。さもなくてもそれほど人通りがない権堂は今やそれこそ閑散としているという。
 地方では人口減少が激しいものの、いきなり人口増とはいかない。そこで過疎市町村は関係人口(密接な関係を保ち頻繁に訪れてくれる人達)を増やすことを目標の一つにしている。それからするとコロナウィルスを逃れて馴染みの地方に来ようとする者に対して、来てくれるなというのは矛盾に満ちているかもしれない。経済的な打撃を回避するよりも今の命を守るほうが大切であり、背に腹は代えられないということである。

<地方は多くの高齢者と医療施設が不十分という二つのハンディ>
 なぜならば、どこでも大変だけれども、地方は元々大きなハンディを負っている。コロナ疎開を忌避する一番の理由は、感染したら死亡率の高い高齢者が多いことである。   
 今はイタリアが、アメリカに次いで死者数が多い。イタリアは緊縮財政のあおりで医療制度がガタガタということもあるが、日本と同じく高齢者の比率が高いからでもある。あまり詳しく報じられていなが、欧米諸国の死者の大半、40%近くは老人ホームなどの住人である。日本の高度経済成長を支え、そして今若者が立ち去った後、一生懸命農地を耕し地方を支えて生きている高齢者が危機に迫られているのである。日本はこの人たちに報いなければならないのに、逆に危険に晒すことは忍び難い。
 2番目は、高齢者が入院するにしても医療施設が十分とはいえない。長野県は感染症指定病院が11あるが、今は病床を300床確保し、感染者向けに200床も用意することを目標に掲げている。集中治療室(ICU)、人口呼吸器、人口肺(ECMO)は、大都市に比べたら圧倒的に少ないはずである。重篤な新型コロナ肺炎感染者が病床を占領して、他の病を抱えた地域住民が満足な治療も受けられない事態は絶対に避けなければならない。

<各国とも地方への移動制限に悪戦苦闘>
 国境の場合は入国や渡航禁止措置で、厳しく履行できるけれども、県境に関所のようなものはなく、アメリカのような合衆(州)国でも各州間の往来を止めることはなかなか難しい。従って、日本では自粛要請以外にない。強権発動のできる中国では、武漢で最初に都市封鎖が行われたが、情報を事前に察知した武漢市民の半分近く500万人が都市封鎖の前に脱出したとも言われている。
 フランスの場合は元々都市と地方の二重生活(Dual Life)が典型的な国であり、パリで仕事をしていながら地方にも根城がある人が多い。3月17日に外出禁止令が出そうになると、前日にはパリの駅が大混乱し、数日間でパリ人口の17%に当たる120万人ほどがこぞって脱出し、マクロン大統領を慌てさせた。イタリアでは当初感染者の多い北部のみに移動規制を課していたが、他地域へ移動する者が多いので、後から移動制限を全国に広めている。都会脱出を考えるのはいずこも同じであり、政府の対応も似かよってくる。

<ネット上で本音で繰り広げられる都市・地方の罵り合い>
 日本では、今、ネット上で東京の住民をトンキン人といって地方に来ることを批判し、論争が行われているという。「楽しい思いをしていて、こういう時だけ地方を利用するな」。これに対して「普段は来てくれと言っておきながら、何だ」といった応酬である。本音のぶつけ合いだが見苦しい言い争いである。日本の地方・農村は、長く続いた工業重視政策、そして最近のアベノミクス農政でズタズタにされ、戦前都会の子供を受け入れた疎開当時と比べて余裕がなくなっている。

<狭間に立つ地方に故郷を持つ学生>
 緊急事態宣言の中にもあるように、コロナウィルスの蔓延を防ぐには、何よりも接触を断つことである。8割接触を断つと2週間後には効果が出て、1ヶ月すると相当感染が減ると見込まれている。大都会の外出禁止令以上に素早く大都市から地方への移動を制限すべきなのだ。コロナウィルスを持っていても発症せずにウイルスをばら撒く恐れのある若者には、特に自制をしてもらわなければならない(かくいう私はもう二週間も長野に帰ることを控えている)。
 東京は外出自粛要請があり、大学もインターネット授業に切り替えられたところもあるという。長野の実家でも授業を受けられるし、帰省できるのに、自分が感染していることを前提にして、帰省して祖父母にうつしてはいけないと、下宿暮らしを続ける健気な若者もいる。また、私の秘書の報告には、帰りたがる息子に母親が、自ら選んだ道だ、高齢者がいるから帰ってはならないと突き返したといううるわしい話もあった。

<困った夜の歓楽街で働く人たちの地方への移動>
 ここで大きな問題は、夜の街に働く人たちである。店の経営者は休業要請で休業しなければならず、売り上げを得られず大変である。更にそこで働いている人たちにも深刻な死活問題となる。少し従順だが知恵のある人たちは、需要のある地方に流れ、そこから感染が広がってしまう。感染経路は不明になり、こうした場所には全く無縁の地方の善良な住民までもが巻き込まれる。こうした悪循環は絶対阻止しなければならない。
 私は日本人の命を守るためには、この際いろいろな規制が必要だと思うが、このコロナ疎開をストップすることも日本国政府が相当力を入れなければならないことだと思う。だから私は、この際地方の夜の街もしばらく静かにしていてほしい、という4月16日の拡大宣言は、やむを得ないものと思っている。

<何らかの休業補償は当然>
 一方、我々政治家は、職を求めての移動を抑えるためにも休業補償の仕組みを早急に講じなければならない。長く続くコロナ対策はこれからが本番である。