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【新型コロナウイルス感染症シリーズ5】(マスク2)多様性を失いうろたえる「官邸崩壊」の日本-見事な対応をする台湾、大国の意地を示すアメリカ- 20.04.23

<見事な台湾のマスク支給対策>
 台湾の素早い水際対策については既に『【新型コロナウイルス感染症シリーズ2】【政僚シリーズ9】危機管理対応ができない安倍官邸の病巣20.03.27』で報告している。
 人口2,700万人、マスクの生産能力は1月は188万枚/日 に過ぎなかった。新型コロナウイルス肺炎の国内感染が始まるや直ちに輸出を禁止、国内メーカーに生産増を促し、今は7倍の1,500万枚/日 となり台湾の需要を一定程度満たしている。2月には全てのマスクを政府が買上げ、その販売も一元管理し出した。マスクを購入するには保険証を持って薬局へ行き、当初は一人あたり週2枚、増産で今は2週間に9枚購入できる。なおかつ、在庫や販売店をネットで知らせ、国民が不安を抱かせないようにしており、買い占めなどは一切起きていない。国民は政府を信用しているのだ。モリ・カケに始まる文書改ざん、桜を見る会のごまかし答弁と国民の信用を全く失ってしまった日本政府とは大違いなのだ。
一事が万事とはこのことで、世界中がマスクで四苦八苦している中、今(4月中旬)は米、伊、西、等困っている国の医療従事者に1,000万枚を寄贈している。そして4月21日、日本にも200万枚が到着した。まさに余裕である。世界ではオタオタする日本との比較の上で、中国との交流が多いにもかかわらずも感染者数426人、死亡者数が6人(4月23日)に抑えている台湾は、別途紹介する韓国とともに世界から賞賛を浴びている。

<必死にもがくアメリカにもまだ回復力が残る>
 それでもアメリカは、さすが危機管理のできている国である。トランプ大統領は口で「ウイルスとの戦争だ。私は戦時大統領だ」というだけあって、朝鮮戦争時(1950年)にできた戦時向けの国防生産法を発動していた。高機能マスク大手3Mに増産を命じ、自国優先主義を地で行き医療用マスクや手袋のカナダや中南米への輸出も止めるように指示し、国内のマスクの確保に躍起になっていた。 更に他の医療機器についても、フォード(自動車)、GE(電機)、医療機器メーカ-の協力で、人工呼吸器を月数千台の生産を指示し、自動車メーカーのGMに命じるばかりでなく、なんとトヨタや日産にまで指示を出している。国民を守るために必死である。

<イギリスもイタリアも総力戦なのに日本は?>
 いざという時の底力はイギリスも同じである。フォークランド紛争の折、サッチャー首相がすぐさま客船を徴用し、世界を驚かせた。今日もダイソン(電器)に人工呼吸器1万台の生産を要請し、日産やホンダにも声をかけているという。エアバス(航空機)、マクラーレン、ロールスロイス(自動車)と他の産業界も総動員である。イタリアさえグッチやプラダ(バッグ・衣料)にマスクや防護服、更にフイアット・クライスラー(自動車)に人工呼吸器の生産の要請をしている。
 ところが、日本は本国でトヨタ、日産、ホンダ等に医療機器の生産を要請した話は聞かない。いざという時の心構えがなっていないのだ。

<マスクを通じて日本の産業力の衰退が見えてくる>
 それに対して岩盤規制の緩和を呪文のように唱え、弱い産業はなくなってもよいとほっぽりだしてきた日本は、為す術がなくいつまでたってもマスクが店頭に並ばない。
 4月中に布マスクを1億枚生産、全国の小中学校に1,100万枚配布し全てに行き渡らせる、使い捨てマスクは3月6億枚、4月には7億枚生産する、と相変わらず掛け声だけが聞こえてくる。外に出る時は皆が必ずマスクをしているというのに、1億2600万人に1カ月に7枚では、いつまでもマスク不足は続くであろう。
医療機関も高機能マスクやサージカルマスクが足りず、下手をすると医療崩壊はマスクはもちろん、防護服、消毒液、人工呼吸器等の医療機材不足から始まるかもしれない。強制力を持つ手段はなく、何事もお願いすなわち要請ベースでしかない。それでも最大手のユニ・チャームをはじめとする13社が要請に応じ、電器メーカーのシャープも生産を開始し、やっと増産体制が整いつつある。4月21日、シャープが10時からネットで1日3000箱(50枚)を販売するや10時前からアクセスが殺到し、不都合が生じしばらく延期された。マスクがそれだけ逼迫している証左である。

<新自由主義者の推奨する市場システムは緊急時には動かず>
 日本の産業構造をIT産業等の先端産業にすることばかりに気をとられ、国民が生きて行く上に必要な基本的な「物」を造る産業を捨て去ってきた報いを受けている。そして、こういういざという時にも、物不足を回避したりすぐ必要な物の生産に転換する、柔らかな「産業力」はもうなくなってしまったのである。新自由主義者ならば、いや必要とあらば市場システムが働き、すぐどこかが生産するようになる、と言うだろう。しかし、いまだその動きは見られない。世の中は需要と供給、競争原理と利益だけで動いているのではない。今や日本の産業構造は偏り多様性を失い硬直化(硬度化?)してしまい、臨機応変の対応ができなくなっている。

<多様な業種の存在する多様な産業構造が国を救う>
 私は、日本国民に必要なものは、なるべく日本で生産するのが大切だと食料・農業の観点から「地産地消・旬産旬消」を唱え、何でも自由化するTPPには絶対反対で政治活動をしてきた。先の環境委員会では、気象変動に対応して地球環境を守るためにも、無駄な輸送は少なく、と小泉環境相に諭した(?)ところだ ( 『グレタさんに代わり小泉環境大臣に地球環境問題を質す 20.03.29)。こうしたことをわかってもらうには、今はマスクもいざという時に備え、日本の必要量の半分くらい製造する体制を維持したほうがいい、と例示するのが一番かもしれない。
 マスク不足は戦後の花形輸出産業だった繊維産業の衰退を如実に物語っている。1964年東京オリンピックの頃なら、「東洋の魔女」日紡貝塚に象徴されるように、繊維産業も健在であり、たちどころに増産し、世界中にマスクを届け、喜ばれたであろうに、半世紀後の今は昔の話である。磨き抜いてきたモノ作りのノウハウも急速に失いつつある。
 つまり車一強のトヨタ一強の硬直的産業国家は、一難あった時には脆いのだ。一国はもっと多様性のある柔らかい構造を持っていなければならない。中小企業がありとあらゆる物を生産していることが日本の強みだったのに、その強みが消えつつあるのだ。

<思いやりがある器用な日本人は辛うじて顕在>
 政府の対応能力は、水際措置の遅れ、感染症への対応の遅れ、経済対策等の二転三転からしても、相当劣化している。安部官邸の慢心が非常時に全く裏目に出たのであり「官邸崩壊」である。
 しかし、まじめな日本人は健在である。あちこちで手作りマスクが作られている。私が思わず手を叩いたのは、「老舗すき焼き店が手作りマスク配布」(毎日20.04.19)の記事である。国会の会議が昼食にかかると、ごくたまにおいしい人形町のすき焼き弁当にありつく。今は、国家は率先して自粛一色で会合もなく、東京都は外出自粛でさすがの老舗も半休業状態だろうに、その合間を縫って授業員が近くの高齢者用のマスク作りをして好評というものである。各地で布・紐等がよく売れているという。そういえば白や黒でないカラフルなマスクをみかけることも多くなった。となると、日本のダメ対応は日本人がダメになったわけではなく、あげて政府の責任でしかない。
 一方、マスクを必要とする者に届ける運動も始まっている。余計なことだがかくなる上は、全家庭に届くというマスクを、市町村が窓口となり皆でまとめて近隣の高齢者施設等に届けるのも一案である。つまり、政府の足らない所を、我々個人の手で修正してもよいような気がする。それが思いやりのある日本人の成熟した姿ではなかろうか。
(マスク3に続く)