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【新型コロナウイルス感染症シリーズ6】(マスク3)マスク覇権外交が食料覇権外交に代わる日は近い -必要不可欠な物を自国で作れる国が生き残る- 20.04.25

<見苦しい欧米のマスク争奪戦>
 いざという時になると自国優先はどこの国も同じである。欧米では、マスク争奪戦が加熱している。信仰のようになってしまった自由貿易の名の下、少しでも利潤を求めて何でも中国等低賃金国に生産を任せて投資していったツケが回ってきたのである。
 ドイツ(カイゼル内相)は、警察官の使うマスク20万枚をアメリカが高い価格で横取りした、と怒ったが、アメリカ政府は否定し、トランプ大統領は「我々もマスクが必要だ。他の人々には渡したくない」と例の調子で平然と本音を開陳している。フランスも同様にアメリカを非難し、更に、スウェーデン企業が伊・西向けに製造したマスク400万枚を差し押さえ、外交上の問題にまでなった。

<マスク世界は中国一強>
 中国は強権を行使できる体制を活かして1,100万都市武漢の封鎖をやり遂げ、今のところ見事に収束させている。3月10日 習近平国家主席が視察し、1ヶ月後の4月10日には封鎖解除し、自らの体制の優位性を誇示している。社会主義・共産主義は終わってなどいないことを実績をもって示している。そして、国威発揚のために次に目をつけたのが世界中が不足して困っているマスクである。5割を占めるマスクをはじめ医療機器の一大生産拠点になっているからだ。
 中国は、他の先進国が皆マスク不足で混乱しているのを尻目に、間隙を縫って各国にマスクを届けることにより存在感を高めつつある。3月中に世界に38億枚を輸出したと悦に入っている。他の医療器具等も無償・有償で世界に送り込み感謝されている。

<したたかな中国のマスク覇権外交>
 トランプ大統領が国際協調路線を捨てアメリカファーストに現を抜かしている間に、頼りになるのは中国だと売り込んでいる。社会主義国なのに、災害資本主義(ショックドクトリン)を盗用してしまっている。そして「一帯一路」にG7で唯一乗っかっているイタリアには医療資材の援助を素早く行い、ちゃっかり「健康シルクロード」と言い寄るしたたか振りである。それに対して、資本主義の権化の国アメリカでは、いまだ新型コロナ肺炎が収束していない。中国の医療機器の緊急援助にほだされる発展途上国は、どのような体制の国が自らに合うか米中をよく見比べているはずである。

<中国のマッチポンプか アメリカのブーメランか>
 中国は自ら蒔いた種(新型コロナウイルス)で世界から非難の眼が向けられていたが、それを逆手に取った形である。もしアメリカが指摘するように武漢ウイルス研究所から漏れたものだとしたら、とんだマッチポンプということになる。また中国側が言うとおり、米軍が持ち込んだとしたら、アメリカはとんだブーメランを喰らっていることになる。誹謗・中傷合戦の中、真実はどこにあるかわからない。
 私はこの一連のマスクを巡る各国間の狼狽振りを見て、今身体から血の気が引いている。なぜならば、たかがマスクでこの騒ぎとなる。これがもっと基本的な食料の奪い合いになったらどうなるのだろうか、と心配しているからである。

<2020年は農業生産資材不足と外国人労働力不足で生産減は必至>
 長引くコロナ外出自粛や休業により飲食業や観光業が影響を受けている。自動車の売り上げも減少傾向であり、経済は上向きそうにない。このままいくとありとあらゆる生産活動が停滞することになるだろう。その中に農業機械や化学肥料等の生産も含まれ、農業生産国では資材不足で今年の作付けが減るかもしれない。
 また、かねてから外国人労働力に頼る欧米諸国では、移動制限による労働力不足が生産減に拍車をかけることになる。アメリカは新型コロナウイルスでメキシコ移民を拒絶する絶好の口実を見つけた。欧州は東欧や北アフリカの外国人労働力が来られなくなっている。
 新自由主義・グローバリズムとやらは、ヒト・モノ・カネと国境を越えて自由に行き交うのが最も効率的だと突き進んだ。その行き着く先が非常時の不効率である。農業生産資材は在庫もあろうが、労働力に在庫はない。このコロナ騒ぎであまりに危険が大きいことが知らされたのだ。

<食料の物流が滞り貿易量も減る恐れ>
 新型コロナウイルスの侵入を止めるための入国・渡航禁止は、物流機能をも道連れにした。貿易が止まり、食料供給も途絶える。日本のフードマイレージ(食料の重さ×輸送距離の合計)は抜きん出ている。原油価格が景気の停滞でいくら安くとも、輸送コストもかさむ。金を積んでも自国の国民優先は当然であり、余らなければおいそれと輸出してくれまい。今恐れられている「医療崩壊」の次は「食料(農業)崩壊」が危惧される。両方とも経済合理性や競争原理ではすまされない分野なのだ。

<食料こそ自国第一になるのは自明>
 アメリカのトランプ政権は前述のように、3Mに対してマスク等の輸出を止めようと迫った。その後、トルドー加首相が「医療品を含め、必要不可欠なものの貿易を止めるのは問題だ」とクレームをつけ、国内からも非人道的で報復を受けるという批判もあり、輸出禁止は一応解いた。この一件は、我々に緊急時にはそれだけやみくもに自国優先になることを教えてくれる。あれだけヨーロッパ、EUの結束を唱導してきたフランスでさえ、平然とマスクを国家管理にしている。
 食料にはもっと露骨に国内優先主義を導入してくることは間違いない。TPP・日欧EPA・日米協定等いずれの協定も輸入制限をさせない規定ばかりで、輸出制限を禁ずる規定はない。ガット・ウルグアイラウンドの時以来、輸出制限を禁止する規定がないのは、食料は自国優先で輸出禁止してもしようがないと思われているからである。

<FAO、WHO、WTOの3事務局長とWFPが食料不足を警告>
 4月3日、屈冬玉(FAO)、テドロス(WHO)、アゼベト(WTO)の国選専門機関の3人の事務局長が、共同声明で「このままでは輸出制限が起きて食料不足になりかねない」と警告を発した。また、WFP(世界食糧計画)のビーズリー局長は、4月21日安全保障理事会で演説し、「30カ国以上が飢餓状態に陥る可能性がある」「飢餓パンデミックの瀬戸際にある」「経済的影響による死者が、COVID-19のウイルスによる死者を上回る現実的な危険がある」と訴えた。既に1億1300万人が危機的状況であり、これがコロナ騒ぎで10億人近くが危険にさらされるかもしれないのだ。

<先進国にも忍び寄る食料不足>
 世界の国々は新型コロナウイルスの拡散を抑えるため、都市封鎖(ロックダウン)や外出制限に踏み切ったため、先進国でも深刻な影響が出て、スーパーに食料を買いに走り、陳列棚が空になった国もみられる。日本でも最近では2011年の東日本大震災の折、東京等一部でみられたし、今回もマスク以外にもトイレットペーパーの買い占めがみられた。
 日本の主要食料の輸入先国は、米、加、豪等先進国であり、輸出制限などしない国だという反論がすぐ投げ返される。輸出制限は、1973年のアメリカの大豆輸出禁止ぐらいしかない。しかし、今回のコロナ騒ぎは、一時的な生産減による食料不足とは違うのではなかろうか。飢えは起きないにしても、マスク不足がいつ何時食料不足に代わるかもしれないのだ。
 今マスクを盾に中国が覇権を広めている。米中の対立は次に食料にも広げられよう。今度は農業大国アメリカが手ぐすねを引いて待っているに違いない。その時日本はどうすればいいのか。今から心してかからなければなるまい。
 今回の新型コロナウイルス騒ぎは、どのような国が健全かしっかりと我々に教えてくれている。