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【新型コロナウイルス感染症シリーズ9】緊急事態宣言継続は13都道府県に限定 - 地方は解除して各県に任せ、都市と地方の移動は厳しく制限して地方の感染拡大を防ぐ - 20.05.04

<戦前戦後、そして新たなB.C.とA.C.>
 2011年の大震災に続き感染症の大流行である。平均寿命80余年の人生でこうした大擾乱に2度も出会すことは希である。日本では戦前・戦後と一区切りされる。私は東日本大震災が日本人の価値観にも大きな影響を与えると予想したが、相変わらずの経済成長一辺倒の傾向は変わることがなかった。しかし、今度は違う。もう世界ではBefore Corona(B.C.), After Corona(A.C.)と世界の暦、紀元前と西暦に合わせた論調が見られる。

 折りしも今年はパリ協定のCO2削減の運用開始元年、22世紀に向け平均気温が2℃も上がらないように生き方自体を変えるきっかけとなる年にしてほしいと願っている。不幸にもグレタ・トゥーンベリが忌避した航空便は、各国の入国禁止によりごく僅かしか運行していない。今は已むを得ず環境に悪影響を与える移動手段が止まっているが、いずれ世界は主体的に移動を自制しなければならなくなるだろう。

<台湾の成功は初動の厳しい入国規制による>
 日本では、出遅れを今になってカバーすべく、全国向けの緊急事態宣言が5月4日の専門家会議の後にそのまま1ヶ月延長されようとしている。
 私は2018年秋に発生した豚コレラ(豚熱)そしてアフリカ豚コレラ(アフリカ豚熱)の中国からの侵入を防ぐため、声高に厳しい水際対策を主張し続けていた。そこに2019年末、突然新型コロナウイルスが中国で猛威を振るい始めた。台湾は正月を返上し、すぐさま武漢からの帰国者に検査を強い、中国からの入国を禁止する措置をとった。中国と最も近く交流も頻繁な台湾が、感染者僅か429人、死者6人(4月27日現在)にすぎないのは、国境を跨ぐ厳格な移動制限による。何事も初めが肝腎であり、その後もPCR検査の徹底、ITを駆使したマスクの配布体制と世界の絶賛を浴びる見事な対応である。台湾の人口は2378万人、日本の人口1億2600万人に換算すると感染者2272人(日本1万4,860人)、死者33人(日本517人)とそれぞれ7分の1と17分の1にすぎない。速やかな移動制限、すなわち中国からの入国禁止を素早くしたからである。

<感染防止は移動制限が肝腎>
 このように感染症の蔓延防止は一にも二にも移動制限である。実効再生産数(1人が感染させる平均人数)なる専門用語も新聞紙上を賑わすようになり、感染防止には緊急事態宣言を出して外出規制するのが常套手段として使われている。手法は中国の強権発動、欧米の罰則付きの都市封鎖もあるが、日本は自粛オンパレードである。いわば伝家の宝刀である。しかし、伝家の宝刀をむやみやたらに振りかざされたらたまらない。感染症にかからなくても仕事ができず生きていけなくなるからだ。そこで重要になるのは、経済・社会活動と感染防止の両立である。

<政府の対応ミスを国民に押し付けてはならず>
 日本の全ての混乱は、経済重視、五輪中止回避、習近平訪日への気掛かりの「ちゅうちょ」三重奏で、初動の入国制限(国境)と移動制限(国内)が完全に遅れていたことにある。だから今はそのツケが回り、困ってはいるが、幸いに感染者数も死亡者数も、欧米諸国よりはずっと少なく済んでいる。罰則付きの厳しい外出制限をしていた欧米諸国は、最も被害の大きいアメリカですら諸々の制限を解除しようとしているのに、日本だけが延長しようとしている。初動の遅れとその後の検査体制の不備といった政府のミスを、それこそ素直で従順な国民の行動を縛ることで取り戻そうとしている。政府を信用しないアメリカではデモが頻発している。それに対してモリカケ問題等で信用は失墜しているというのに、日本ではデモも起こらず政府の判断を待っている。為政者にとってこんなに楽なことはなかろう。しかし、政府を甘やかし過ぎてはならない。ほっておいたらまた間違えるからだ。

<各都道府県の事情により徐々に解除が自然>
 2月27日の唐突な一斉休校に続いた全国一斉の緊急事態宣言は、特別警戒都道府県(なり感染が継続して出ている県)を除き解くべきである。そして、休校なり経済活動再開の判断は各県に任すべきである。その一方で特別警戒都道府県は県間移動制限をより厳しくして継続すべきである。
 アメリカは、連邦政府の外出規制が4月末で切れ、各州が感染状況などに応じて段階的に解除しつつある。全米50州のうち27州が経済活動再開に向けて動き出している。つまりニューヨークとモンタナやワイオミングは対応が違うということだ。

<都市と地方の間の移動制限は厳しくする>
 日本の感染防止の成否の鍵は、都市から地方への新型コロナウイルスの流れを止めることにある。フランスでは5月11日から段階的に外出禁止を解除し、100km以内の移動は自由としたが県を跨ぐ移動などは特別な理由がある場合を除き認めない。感染者がパリ周辺と東部に偏っているからだ。新型コロナウイルスは正直者である。三密の大都会、NY、東京、パリ、モスクワ等で猛威を振るっている。だから大都会を押さえ込むのが最善の策なのだ。

<示唆に富んだ10年前の予言書>
 感染症を扱ったカミュの『ペスト』(1947)が15万部増刷され、累計100万部を突破したという。私は日本の作家高嶋哲夫の『首都感染』(2010講談社)も涙を流しながら一気に読了した。
 主人公瀬戸崎優司は、WHOで感染症対策で実績を上げ帰国。都内の黒木病院の勤務医。ワールドカップ開催中の中国でH5N1の強毒性の鳥インフルエンザが発生。病院の受け入れ態勢をしく。別れた妻の父高城厚労相から呼び出され官邸の対策チームの一員に加わる。父雄一郎は総理。優司が陣頭指揮をとり、ワールドカップからの帰国者の隔離、外国人の入国制限と次々と手を打つ。

<東京封鎖で日本を救う>
 自衛隊・警察の全面協力で荒川、環八、多摩川といった線で一気に鉄条網もしき、一瞬にして首都と地方との交通を遮断。首都を犠牲にして地方を守る手段に訴えたのだ。世界中で蔓延し、致死率が高く何百万人と死者が続出する中、全国への蔓延を阻止せんとする。反発はあったが高城厚労相に全てを任され、更に父の総理の支えもあり成功する。黒木病院の健気な看護師由美子も感染、死の一歩手前で新しい治療薬(今でいえばレムデシビルか)が異例の速さで日本にも届き、間一髪のところで助かる、という人間ドラマもあるが、極め付きは完璧な「東京封鎖」である。驚くほど今の状況とそっくりなのだ。

<今度ぐらいは都会に我慢させてもよいのでは>
 つまり、小説では首都東京を犠性にして日本を救ったのである。今回はそれほど強権発動でなくともよいが、川勝静岡県知事は「静岡に来ないで」と言い、阿部長野県知事も380万人の連休の観光客を諦め、「信州の観光はお休み中」と訴えている。更に九州では福岡を除いた県が県間移動制限をしている。大都市に我がままをさせないための已むを得ない措置である。国が大都市寄りのなまくらな措置しかとらないのに業を煮やした地方の知事が、自衛手段に出たのである。県民を守るために許されて然るべきである。
 明治以降、特に戦後はずっと都市偏重の政策が続き、地方からは人も富も都市に行ってしまったといえる。だから、こんな時ぐらい少しは都市に我慢してもらっても罰は当たらない。総じてまじめな地方の人は東京や大阪には出てこない。地方への感染拡大を防ぐには逆の流れを阻止することである。