« 【新型コロナウイルス感染症シリーズ12】なぜ台湾・韓国がコロナ対応に成功し、日本がダメなのか- ①有事は法制整備も形式だけで準備なく、②野党がダメで政治に緊張感がないから -20.05.14 | メイン | 「種苗法の一部を改正する法律案」について意見表明-食の安全・安心を創る議員連盟-20.05.21 »

【新型コロナウイルス感染症シリーズ13】尊大さが目につく中国VS小さくともキラリと光る台湾-WHOからこけにされながら大国中国に向かう台湾を応援せずにはいられない- 20.05.15

 コロナウイルスに席巻される世界は、外交でも意地の張り合いが見られる。中国の感染源になり大失敗したことに対する、挽回ともいうべき「マスク外交」については報告した。それに続くWHOを巡る米中合戦の中で健気に振る舞う台湾の姿勢には拍手を送りたい。

<いずこも国際機関の長を狙う>
 中国の覇権主義の象徴「一帯一路」は戦略的に進められているが、もう一つ着実に進めてきたのが、国際機関への人材の投入である。一帯一路は、二国間で援助等金で誘い込める。ところが、こちらは、拠出金をいくら多くしたところでうまくいかない。各国が認める人材でなければ事務局長なりのトップにはなれないからだ。だから、それこそ用意周到に事を進めなければならず、時間がかかる。しかし、一旦事務局長なりを確保すると、何かとその組織をうまく活用できる。そのため、各国あるいは各陣営とも国際機関の「長」の座を確保せんと凌ぎを削る。

 どこの国際機関もGDP比で拠出金が割り振られており、大体アメリカが1番の拠出国である。WHOも同じで2位中国と続き、3位日本である。そして、上述の超大国を除けば、職員数は大体拠出金額に応じるという暗黙のルールがあるが、日本はどこでも際立つ under representative (つまり拠出金額の割合に比べわずかの職員)国であり、慎ましやかな影響力しか行使していない。

<WHOに標準を合わせた中国の長期戦略が実ったテドロス事務局長>
 さて問題のWHOは、国連の15の国際機関のひとつであるが、今回わかったとおり、他の機関と比べてかなり権限を持つ国際機関である。同じく本部がジュネーブにあり、名前も紛らわしいWTO(世界貿易機構)は、貿易の自由化を促進する中心的役割を演じてきたが、TPPに代表されるように世界は地域協定に重点を移している。またトランプ政権は、多国間を嫌い二国間中心にシフトしている。更に、2019年紛争解決機関である上級員会が機能不全に陥り、かつての影響力はなくなっている。
 中国は、SARSやMERSの経験から、WHOの意外な(?)大切な役割に気付き、戦略的にWHOへの食い込みを図ってきている。まず、先代の事務局長に2007年1月、香港のマーガレット・チャンを送りこんだ。親中の馬英九政権(国民党)から反中の蔡英文政権(民進党)に交代を機にWHOはそれまで認めていた台湾の総会へのオブザーバー参加を認めなくなった。明らかに中国の差し金である。
 更に別の方法でWHOに影響力を行使できるようになったのは、2017年7月中国に援助され続けてきたエチオピアの元外相のテドロス現事務局長の就任である。従って台湾は今もWHOの総会に参加できないままである。

<平然と中国寄りの対応を続けるWHO>
 今回、WHOのコロナ対応で、中国寄りの事例を時系列で上げると以下のとおりである。
1/5  最初の感染流行情報を発信
1/9  「中国当局によれば、ウイルスは人間同士では容易に感染しない」と中国の声明を鵜呑みにして声明を発表
(⇔台湾は19年末 武漢でヒトからヒトへの感染が 起きている疑いがあることを伝える)
  1/20  WHO専門家が武漢入り、中国は対策もアピール。テドロス事務局長が習近平と会談
  1/23 「時期尚早」だとして緊急事態宣言を見送る(⇔初期の警告ができず)
  1/30  国際的な公衆衛生上の緊急事態宣言(⇔パンデミックではない)
  2/3  アメリカが中国からの入国を禁止したことに「旅行や貿易を不必要に制限する措置は必要ない」と否定的見解
(⇔新型コロナウイルスを過小評価)
  2月下旬「中国はウイルスの封じ込めに大変熱心に取り組んでいる。その努力と透明性に感謝する」と謝意
(⇔中国へ忖度し過ぎ)
  3/11  パンデミック宣言(⇔一週間前に否定していた。遅すぎる)
  3/30  非常事態宣言(⇔遅すぎる)

誰が見ても明らかなWHOの中国への忖度(?)振りをみると、中国の長年にわたる戦略は、テドロス事務局長を手中に収めたことでまさに大成功だったと言えよう。

<中国の露骨なWHO取り込みに反発する西側諸国>
 これだけあると、やはり公平性に欠けると言わねばなるまい。目に余るWHOの中国寄りの姿勢に対してアメリカをはじめ各国が疑念を抱き始めている。トランプ大統領は、4月16日あまりの中国寄りのWHOに対し、拠出金を停止すると表明した。
オーストラリアは中国に対して、「独立性のある検証」を要求、中国が反発して常套手段の輸入制限(ワイン、牛肉)等をちらつかせている。ドイツもフランスも中国の初期の対応を柔らかく批判している。

<WHO社会から無視される日本>
それに対し、日本はWHOの公平性への批判、武漢研究所からコロナウイルス流出問題等には全く参戦していない。いつものとおりあまり出すぎない日本の外交姿勢としていいことかもしれない。日本は何もトランプ大統領のお先棒を担ぐ必要はないが、あまりにも影が薄い。ただ唯一、200万人分備蓄していた新型インフル薬アビガンを44カ国に援助物資として送ることだけが決まっている。
日本が当面できる国際的貢献は、WHOが中心になって組織する武漢への調査団の一員として名乗りを上げて参加し、中国のコロナウイルスを入手して、今後の研究に役立てることである。日本でもPCR検査で陰性となったのに、しばらくして発症や再発したりするなど、新型コロナウイルスの特徴がつかめないでいる。まだまだ謎が多く、研究はこれからであり、ワクチン開発、治療薬の研究でも貢献していく必要がある。

<中国に虐げられる可哀想な台湾>
 中国の武漢で派生したコロナウイルスは、世界中に前代未聞の悪影響を与えている。そして今は、ここぞとばかり「マスク外交」を展開中である。その陰でWHOからこけにされているのが台湾である。「なぜ台湾・韓国がコロナ対応に成功し、日本がダメなのか」(前号コロナシリーズ12 20.05.14)で述べた通り、2017年反中国的な蔡英文政権の誕生後、WHOは台湾のオブザーバー参加を認めていない。「一つの中国」の原則をあちこちで貫き通す中国は、台湾が国際社会で一国として振る舞うことに極めて神経質なのだ。
 ところが皮肉なことに、世界の感染情報を一挙に入手し、各国の情報があるWHOより先に武漢のヒトヒト感染も察知し、素早い水際対策を行い、封じ込めに世界で最も早く成功を収めている。そして、超大国の中国と比べてささやかではあるが、世界に医療器具を援助している台湾を忘れないでほしい、という切なる願いが込められている。

<台湾のWHOオブザーバー参加を積極的に後押しすべし>
台湾は、東日本大震災の折、逸早く200億円もの義援金を送ってくれ、今回も4月21日に台湾でも足りないマスク200万枚を寄付してくれている。その義理堅い近隣の友好国台湾が熱望するWHO総会等へのオブザーバー参加の後押しをすることである。
折しも、5月6日ポンペオ国務長官は、18日から開催されるWHOの年次総会に台湾が参加することを支持するよう、各国に呼びかけている。新型コロナウイルス対策は政治的対立とは切り離し、国際協力していかなければならない典型的な分野である。
こんな所で中国に気兼ねする必要はない。習近平来日とは全く別の次元の話である。日本こそ先頭に立ち、台湾参加をWHOに働きかけていくべきである。お金もかからず、かつ感謝されることであり、何よりも国際的大義に沿うことになる。