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【新型コロナウイルス感染症シリーズ14】名だたる日本の企業がなぜ医療機材の生産をしてくれないのか- 効率一点張りの政策が冷たい企業ばかりを生んだ - 20.05.25

 安倍首相が記者会見で何回も、PCR検査を増やすと断言したにもかかわらず、PCR検査がいつまで経っても1日当たり2万件にならないのがなぜなのだろうか。幸いにして、コロナ騒ぎは少しずつ収まってきたし、手作り布マスクで国民が自衛策を取り始めたのか、医療機関を除いたらマスクは一応行き渡ってきている。しかし、PCR検査は依然として諸外国と比べてもさっぱり増えていない。

<当然視され続けた海外投資・工場の海外移転>
 理由は、日本の産業界が高い人件費を嫌い、生産拠点を海外に移し、国内で生産しなくなっていたために即応できなかったのだ。例えばPCR検査に使う植毛綿棒は国内にはなく、伊・米からの輸入に全国的に依存している。これでは自国優先であり、日本に回ってこないのは当然である。また、マスクはスギ花粉症を防ぐのに必要ということから、まだ2割が国内生産されていたが、防護服も医療用ガウンも国内生産はゼロといった具合である。つまり、日常生活や医療活動に不可欠なものを、国内で造り続けるなどといったことは少しも眼中になく、ただひたすら競争原理ばかりが働き、労賃の安い中国や東南アジアに移して平気でいたのである。

<グローバリゼーションに歯止めのあるアメリカ>
 他の先進国も多かれ少なかれ大体同じだが、日本は度が過ぎていた。
 資本主義国の権化の国であるアメリカには、国を支えるために不可欠なものはアメリカ国内で造る、という厳然たるルールがある。例えば、「ジョーンズ法」により、アメリカ国内の拠点間の物品輸送を行う船舶は、アメリカ国内で建造され、アメリカ人が所有し、アメリカ船籍で、アメリカ人が乗っていないとならないと決められている。トランプ大統領のいうアメリカ・ファーストどころの話ではない。
 そこまでアメリカ国産にこだわる理由は、戦争状態になった時には、船舶は絶対に必要であり、その製造能力を国内に残しておくためである。軍艦や潜水艦だけでは需要が限られて、造船産業は維持できないことから、裾野を広げて造船関連産業をアメリカ国内で維持するためなのだ。

<国難に協力する世界の企業>
 今回トランプ大統領は、1950年朝鮮戦争時にできた「国防生産法」に基づき、全く異業種のフォードやGMにも医療器材の生産を命じた。5月21日、トランプ大統領はその一つのミシガン州のフォード工場を訪問、人工呼吸器の製造過程を視察した。州の指針では工場内はマスク着用が義務付けられていたが、トランプ大統領がルールに従わなかったことが日本でも報じられた。
(トランプ大統領の徹底したマスク嫌いは、失笑せざるを得ないが、私は日本で記者会見でも国会の質疑応答でもマスクをしたままのほうが異様に思える。各国の元首や国民の前でマスク姿では失礼だ、というトランプ大統領の依怙地さに一理ありと思っている。ただ、その前にさんざん失礼なツイッターや発言はしているが。)
 日産自動車を傘下に置くルノーは、フランス政府が強く係わる企業であり、フランス政府の方針には忠実である。マスクシリーズで触れたが、イギリスもダイソンやロールスロイスに人工呼吸器の生産を要請し、イタリアでも世界に名の知れたアルマーニ、グッチ、プラダ等アパレルメーカーが国難に対して、すぐにマスクや防護服を製造し始めている。
 ところが、日本にはそうした協力をしている企業は少なく、従って安倍首相の視察もない。日本のマスメディアが報ずべきはむしろ動き出さない日本企業の問題なのに、全く触れられていない。

<高度経済成長下、次々と消えていった労働集約型産業>
 日米通商摩擦は、日本の繊維製品の洪水的輸出に音を上げたアメリカが日本に輸出規制を迫ったことに始まる。佐藤栄作首相、田中角栄通産相、時あたかも沖縄返還交渉と重なっていた。日本の生産量を抑えるため、織機を1台壊せば1万円を補償するという荒業(「ガチャマン」と呼ばれた)で乗り切り、後にこの大妥協は「縄を糸」で買ったといわれた。
 当初は、構造不況業種とかいわれ、消えゆく産業にも報いの手が差し伸べられたが。いつの間にか、競争に勝てない産業は見向きもされなくなっていった。その結果あれだけ栄華を誇った繊維産業はすっかり中国にとって替わられてしまった。
その後日本の主要輸出産業は家電製品、機械、半導体等の電子機器、自動車と変遷していった

<国難に際して非協力的な日本の企業>
 そして、今政府が困り果て、外国と同様に医療器材を至急造ってほしいと要請しても、おいそれと応じられないのは、コロナ騒ぎが収まったら需要は一気に落ち込み、売れなくなり、また安い中国産になってしまうことが目に見えているからだ。世界を股にかけて輸出入に関わるビジネスをしてきた巨大商社も、マスクの輸入に応じてくれたのは伊藤忠だけのようで、他はいかがわしい(?)福島の花の輸入業者等が参画し、国会で追及されている始末である。企業自体が余裕がなくなってしまい、産業構造も硬直的になってしまったのだ。
 5月18日、アメリカの薬品メーカー モデルナ社がワクチンの臨床試験の結果、抗体を確認したと報じられた。トランプ政権は、元重役を責任者に据え官民一体でワクチンの開発に取り組んでいる。最初に大量接種が可能になる国が有利になるからである。官民一体は、かつては「日本株式会社」と皮肉られるほど日本のお家芸だったが、今では日本の官・民は冷たい関係になってしまったようだ。

<冷たい政策の連続が非情な企業を生んだ>
 なにしろ官邸に「産業競争力会議」なるものができ、競争、競争とせかしてきたのである。そして、「規制改革推進会議」がこれでもかこれでもかと、次々と規制緩和の注文を付け、余裕を全くもてないギリギリの企業にされてしまったのだ。コンビニなどは「在庫ゼロ」で効率的に切り盛りしており、そのシステムを崩したくないので、24時間営業するという、省エネルギーもSDGSもないいびつな構造になっている。お金だけ、今だけ、自分の企業だけという風潮が定着してしまった。
 信頼をなくした政府の訴えにそう簡単に乗れないのは無理のないことである。マスクでいえばせめて「余ったら備蓄に回す」といったことぐらい言ってもよいと思うが、政府の介入を悪とする安倍政権にその気配は感じられない。よく取り沙汰される企業の内部留保463兆1308億円(18年度)も、銀行も政府も優しくなくなったための自衛手段であり、このコロナ禍の乗り切りに役立つことになる。

<企業活動にも温かい心を取り戻す>
 産業の栄枯盛衰は激しい。折しも1960年代以降TVコマーシャル(多分多くの人がメロディを覚えているだろう)で一世を風靡した「レナウン」が破綻したと報じられている。弱肉強食の業界にあって数少ない繊維産業の生き残りだったが、コロナ禍の中、命運が尽きてしまった。
 中国、東南アジアで造らせ薄利多売で利益を上げるユニクロが、優良経営ともてはやされて世界に進出している。その世界に張り巡らしたネットワークを使って、繊維製品ともいえるマスクや防護服の調達に手を貸してくれたのだろうか。(緊急事態宣言の解除が明らかになった5月24日、ユニクロがマスクに参入すると伝えられたが遅すぎる)世界に名だたる製造業が、率先して人工呼吸器やフェイスシールドの生産をしてくれたのだろうか。
 こうした中、私の心が晴ればれしたのが、キヤノンが5月1日人工呼吸器等に係わる特許を、コロナ禍の期間すべて無料で開放してくれたことである。国そして世界の危機に特許料など行っていられるかという義侠心である。このような企業にこそ勝ち残ってほしいものである。
 コロナ禍を契機に、今までの新自由主義的発想を改め、政府はキヤノンのような企業をバックアップして生き残れるような政策を打ち立てる必要がある。企業が心のゆとりを取り戻し、国難に一丸となって当たれる環境を作り出していかなければならない。