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【新型コロナウイルス感染症シリーズ15】日本は医療外交で世界に貢献 -日本人WHO事務局長を実現し、日本人医師を発展途上国に派遣すべし- 20.05.28

 WHOは今回の年次総会では予想通り、中国の我がままが通り、台湾はオブザーバー参加が認められなかった。日本の加藤厚労相は、地理的空白を生じさせてはいけないとして、台湾の参加への支持を鮮明にした。しかし、残念ながらこれだけWHOの重要性が増しているというのに、米中対立がWHOの世界にも完全に持ち込まれてしまい、一致団結とはならなかった。

<国際機関の日本人のトップ>
 マスコミにもよく登場する尾身茂専門家会議副座長は元WHO西太平洋地域事務局事務局長である。そのもっと昔、珍しく日本人の中嶋宏(医師)が1988年にWHOのトップに座ったことがある。他に蟻田功 世界天然痘根絶対策本部長は1980年の根絶宣言に多大な貢献をしている。
 他で探すと緒方貞子高等弁務官(1991~2001年)が皆の印象に残っている。その後小渕首相が松浦晃一郎元外務省審議官(学習院中・高で同級生)をユネスコの事務局長(1999~2009年)にと、首脳外交の折に各国に根回しした。

<政治家が就く国際機関の長>
 ところが、いつの頃からか主要な国際機関のトップは、政治家が就くようになった。WTOでいえば、ウルグアイ・ラウンドのさ中の1993年委、元閣僚のサザーランド(アイルランド、EC競争担当大臣)に代わり、OECDの事務総長も1996年にジョンストン(カナダの元法相)、そして2006年現在のグリア(メキシコの元外・蔵相)につながっている。職業的知識よりも政治的交渉なり取引が重要になってきたからであり、その後国際機関共通の主流となった。国連事務総長のグテレスもポルトガル元首相である。
 こうした路線に沿った形で、エチオピアの元外相・テドロスがアフリカ連合(AU)の圧倒的支持でアフリカ初の事務局長に選出されている。

<空回りする河野前外相の意気込み>
 さて、最近の日本は国際機関への送り込みはどうなっているのか。河野太郎防衛相が外相時、外交演説の半分を外交体制の充実にあて、中でも国際機関への日本人の送り込みの重要性を強調した。私はそれに賛同した(「私が聞きほれた河野外交演説-政治家を国際機関のトップに等満載-」19.1.30)。ところが、河野前外相の意気込みとは裏腹に、日本はあまり国策として本腰を入れていない。
 その前に、政治家で閣僚経験した国際機関のトップにふさわしい人材が日本にいるかどうかである。もちろん英語は流暢に話せなければならない。英語に堪能な政治家は言い出しっぺの河野外相をはじめとして増えている。しかし、60才代前半の適齢期となるとなかなか見当たらない。
 
<かつての栄光が泣くWTOの凋落>
数年前に世界の国際機関の中で、日本に一番影響を与えているのはどこかと尋ねたら、大半の人はWTO(世界貿易機構)と答えただろう。世界の貿易のルールを司り、紛争処理もできる強力な国際機関だからである。  
ところが、WTOは硬直的な自由貿易一辺倒が嫌われ、世界はTPP等の地域間協定に走った。更にトランプ大統領が多国間協定よりも二国間協定を重視し、最高裁に当たる上級委員会のメンバーの補充を拒否したため活動中止状態だった。そして、5月14日にはアゼベト事務局長(ブラジル)がまだ任期を1年残し辞任を表明、混乱に追い打ちをかけた。
そして、今上記の問いかけには誰しもWHOと答えるだろう。明けても暮れてもWHOだからだ。近年のSARS、MERS、エボラ出血熱、エイズ党の問題からして、今後もWHOはますます重きを占めて来るに違いない。

<WHO事務局長を日本から送り込む>
 人口14億の大国中国は、英語の堪能な者も急激に増えており、今や15の国連の国際機関のうちFAO等4つの長を占めている。つい最近もWIPOの事務局長も中国人が有力候補だったが、日本をはじめとする各国が結束して、シンガポールの知的財産権庁長を選んでいる。中国が知的財産権の分野でルール違反を重ねており、世界がことの重要性に気付いたからである。
 日本もここらで将来のWHO事務局長候補を作るべく、望むらくは厚労相や外相にして箔付けして用意していかないとならない。(テドロスは2つを歴任している)日本はアメリカにあまりにもベッタリであり、安全保障理事会の常任理事国はとても無理だろうが、幸い中進国であり大国ではない。一方で日本はそれなりの大きな拠出国(米英独についで第4位)でもあり、公平性・中立性を保てるポジションにある。松浦ユネスコ事務局長並に総力を挙げれば、そんなに難しいことではない。
 もう次の感染症に備えて、戦略的にも手を打ち始めなければならない。日本も中国のマスク外交に負けることなくWHOを舞台にして国際貢献していくことも外交の一つの目標に掲げるべきである。それが必ずや国益にもつながることになる。
(実は私は5月15日のブログと同時に、この部分を書き上げていたが、字数がオーバーしたので次に回していた。そこに産経新聞が5月18日の社説「WHOの正常化・日本から事務局長誕生を」で全く同じ提案をしている。全く同感である)

<医療先進国キューバの賢い医療外交>
 私の古くからの友人にキューバに取り憑かれた男・吉田太郎(現長野県農業試験場)がいる。いくつかのキューバがらみの著書をものにしているが、その一つ『世界がキューバ医療を手本にするするわけ』がキューバの先進的医療を紹介している。
 キューバの教育はタダ。多くの医師を造り出し、中南米諸国だけでなく全世界の途上国に派遣している。ポルトガル語圏のブラジルを除き他は皆スペイン語であり、各国から歓迎されている。こうして、キューバの信用の一つを作り出しているのが、中南米諸国に根を張るキューバ人医師である。
 今回も、キューバの医療チームが中国に入り、キューバが開発した抗ウイルス薬、インターフェロン アルファ-2bが役立ち、その後、伊、西、アルゼンチンその他中南米諸国とアフリカ等45ヶ国から要請が相次いでいるという。ところが、これを面白くないアメリカは、中国からの支援物資をブロックしており、人工呼吸器も手に入れにくくしたりと意地悪をしているという(東京新聞5月15日夕刊)。ポンペオ国務長官が台湾を排除しようとする中国に対して毅然と立ち向かい、弱者台湾を擁護しているのは立派だが、その裏でアメリカも近隣国のキューバに理不尽な対応をしているのだ。これが国際政治のきたない厳しい現実である。

<キューバに倣い日本も発展途上国に医師を派遣すべし>
 今回のコロナ対応でも、医療体制のきちんとしている国は死者が少ない。いろいろ批判されているが、日本が死者の少ないのも国民皆保険制度に支えられた優れた医師、看護師がいるからである。今(5/25)ブラジルが第3位の感染国になっているが、今後発展途上国への感染拡大が懸念される。この分野で日本が支援すべきである。
 幸いにして医師になりたがる者はゴマンといる。教育施設も整っている。世界各国で役立つ医師を組織的、体系的に育成するのだ。例えば、防衛医科大学校の定員を倍増し、感染症部門の専門家を養成し、いざという時に備えたらよいのではないか。ダイヤモンド・プリンセス号でも頼りになったのは防衛医官だった。つまり、第2、第3の岩村昇(ネパール)や中村哲(ペシャワール会)を育てることだ。もともと国家のために尽くそうという気概のある人たちであり、期待に応えてくれるはずである。日本人医師の世界各国の地道な活動により日本の評価を高める方が、防衛費をやたらと増やすよりずっと安上がりの防衛になるのではないか。