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2020年6月15日

【野党統合シリーズ】1%政党では比例復活は4~5人のみ- 立憲と国民民主の野党統合(41人以上)をして政権交代へ - 20.06.15

<文中の別表1~4はこちらから>

 12日には第2次補正予算が成立し、19日にはコロナ自粛もほぼ解除される見通しである。持続化給付金を巡る経産省・官邸のインチキの追及等残っているが、17日の国会閉会を機に政局が一気に動き出す。ところが、国民民主党(以下「国民民主」)は、1月以来野党統合に向けてほとんど進んでいない。
 そうした動きをしっかりと国民に見られているのだろう、どの世論調査でも支持率は1%前後と惨憺たるものである(別表1)。これが国会議員が4人しかいない社民党(支持率0.7%)ならいざ知らず、61人(衆39、参22)も擁する我が党の場合は異様である。国民からはもう国政政党としては完全に見離されているのかもしれない。

<19年参院選比例票から次期衆院選の比例区議席を予測:国民民主は10から12人>
 このような情況の中、次期衆院選が21年10月までには必ずやって来るし、早ければこの秋の臨時国会冒頭の解散がありうるとも言われている。以下に22人の比例復活当選組の見通しを分析した。

(1)まず、直近の19年の参院選比例区票をもとに予測した(別表2)。
 ①全国一本だと12、死に票が出るブロック別だと10。
参院選は連合傘下の労組候補への梃子入れがあり、かなり個人名票が上積みされるのに対し、衆院選は例えば小選挙区で篠原孝と書いてくれても、国民民主党と書いてくれる者の割合はかなり少なくなる。私のサポーター集めは今年も四苦八苦である。「篠原は支持するが、立憲民主党(以下「立憲」)と一緒にならない国民民主は嫌だ」ともっともなクレームが続く。秘書が、「篠原はずっと野党統合に向けて汗をかいており、17年末には真剣になりすぎて体調を崩したほどだ」と弁解しやっと矛を納めてもらっている。つまり私の支持者は皆野党統合による政権交代を期待しており、国民民主になど興味がないのが厳しい現実である。

 ②立民の支持率は6.9%と国民民主の7倍、それがそのまま反映され、29、31で風が吹いていた17年と比べて6減ですんでいる。更に42.2%の「支持なし」層が投票に行くと、多くが野党第1党の立憲に投票し、大幅増となる可能性もある。つまり国民民主は沈み、立憲が浮かび上がることになる。

<過去の世論調査の政党支持率と比例区議席の相関関係から予測:国民民主5人>
(2)次に過去の衆院選の政党支持率と比例区獲得議席数の相関関係を割り出し、現時点(5月)の支持率から次期衆院選の議席を予測する(別表3)。
本来は選挙直前の支持率との比較がベストだが、17年の選挙は、選挙序盤に希望の党を支持していた有権者が、告示から選挙当日までになだれを起こして立憲に支持を変え大きく揺れたため、直後とした。
 ① 自民党支持率は14、17年とも36.5%、38.4%と抜きん出ている。議席数は68、66と1.7倍と1.9倍で平均すると1.8倍。
 ② その他の中規模政党(民主、立憲、希望、公明、維新、共産)の支持率と議席倍率は、2.7~7.3の間であり、平均すると約4.5倍。(17年に立憲の躍進で支持率が13.9%と上がり、逆に希望は失望に変わり、3.9%に下がったため、2.7倍と7.3倍となっている。選挙当日は希望の党への支持率が激減する過程の中であったため大きく乖離した倍率となっている。)
 ③ 社民は1.0%、0.6%で1倍と1.7倍
 ④ 1%の国民民主は社民並みだと1人となり、中政党並みの4.5倍としても、5人にしかならない。

<政党支持率のドントから予測:国民民主5人>
(3)もう一つ、世論調査の数字を176議席に合わせてドント計算しても国民民主は4人としかならない。別表3の20年のドントと篠原世論調査結果相関試算は、自民を除きほぼ一致する(立憲32、31 公明18、18 維新25、26、 共産19、18)。

 このようにどの予測でも国民民主の比例復活は4~5人にとどまる。更に17年の希望の党の支持率が4%なのに対し、今は国民民主の支持率が1%に下がっているので、17人の小選挙区当選者のうち数人が小選挙区で苦戦を強いられ、比例復活しかできないかもしれない。そうなると、惜敗率が高いことから、比例復活組を押し出すことになる。つまり、次期総選挙では比例復活組は、小選挙区で勝たないかぎり議席を失う可能性が大ということだ。

<立憲との野党統合で予測:41人で、大半が国民民主が占める>
 これを救う道はただ一つ存在する。ルーツを同じくする立憲との合流であり、比例復活は41となる(ドントをやり直すとややこしくなるので単純な足し算)。れいわも一緒になると46、49となる。ちなみに維新とは24、30しかならない。
 北関東の例で具体的に、国民民主(選挙前は希望)と立憲のどの比例復活者が野党統合で生き残るかをみると、国民民主がいかに有利か分かる。希望は森田、青山、浅野、小宮山(86.9%)の4人が復活し、次点は福島(82.17%)だった。立憲は長谷川(80.89%)、山川(77.03%)の順で5人が当選していた。次期衆院選で統合しても、5人しか当選しないが、17年の票でみると、5人は福島までで.全員が国民民主となる。極端な例かもしれないが、初当選やかなり休んだ者の立憲と異なり、国民民主には実績のある者が多く、東京と北海道以外は国民民主が多くなる(別表4)。また、21人の野党系無所属の当選者は、次期総選挙では野党候補となり、比例区票の上積みとなるものと思われる。もしも統合せず、それぞれ別に選挙するとなると、5人が国民民主で、他の16人は立憲の会派なので立憲公認で立候補が見込まれることから、立憲が優位となる。

<統合後は、同率順位と立憲は大幅に譲っている>
 その結果、17年は立憲が37人、国民民主(希望)が31人だったのに、統合した場合の41人の内訳は立憲9人、国民民主32人となり国民民主の比例復活の大半が再び比例復活当選できることになる。
 このように、国民民主が有利になるという結果が明らかであるにもかかわらず、1月には野党統合後は全員1位の重複立候補を認めるとかなり立憲が譲っている。枝野代表は野党第一党の党首として統合のハードルを下げている。それに応じない国民民主が依怙地と言わざるをえない。

<統合に反対する理由が分からない>
 国民民主の支持率1%が今後飛躍的に上がることなど考えられず、衆院の国民民主の議席の半減が予想されるというのに、頑なに立憲との統合に反対する者がいるのは理解に苦しむ。同僚議員の大半が落選しても仕方ないというのではあまりにも冷たすぎる。
 こんな状況下でも、支援組織が立憲との合意に反対しているので、野党統合に反対だという者がいる。組織の意向を重視して落選しても構わないという律儀さは見上げたもの(?)と言えなくもないが、議席を失えば組織の意向も国の施策に反映されなくなり、全く本末転倒である。

<執行部の第一の責務は議席の維持拡大>
 野党統合の議論の折には、国民民主党を愛しているといった情緒的な話も聞かれる。議員がいてその集合体が政党であり、議員がいなくなっては政党は存続できない。順序が逆なのだ。それよりも何よりも支持率が1%の政党は、もう国民からは愛想をつかされ終わっているのだ。参院選であれだけコマーシャルに大金を投入したのに、地方区3人、比例区3人しか当選しなかったことが、全てを物語っている。つまり、国民民主党は「中継ぎ」政党でしかない。
 執行部の役割は、1人でも多く当選して生き残れるように工夫して、なるべく早く国民民主党の幕引きをすることであり、もはやそれ以外の責務はない。 

2020年6月 2日

【新型コロナウイルス感染症シリーズ16】日本に感染者・死亡者が少ない理由を考察する- 原因を突き止めて第2波に備え、死亡者数を更に少なくする - 20.06.02

<死亡者の割合が少ない日本>
 5月25日、1ヶ月半に及んだ緊急事態宣言が解除された。混乱の中にあり、振り返る余裕もなかったが、今回世界の状況を一覧化してみた。
(別表:感染者数・死亡者数、医療体制の各国比較)

 世界で見ると日本の感染者数は人口比ではそれほど多くない。ただ、日本は安倍首相がPCR検査を一日2万件と宣言したものの、いつまで経っても増えず、これが原因で感染者が気づかれずにいるのが大きな原因ともいえ、感染者数比較には客観性がない。諸外国と比較して明らかに少ないのが死亡者数である。人口100万人当たりの死亡者数でみると日本は7人に対してアメリカは315人(2桁違い45倍 6/1現在)、ニューヨーク州に至っては1,236人(177倍 5/29現在)である。
 アメリカの死亡者数は、5月27日とうとう10万人を超え、世界全体の死亡者の3割を占めている。そのうちNY州は約4分の1を占めている。また、ロシアも感染者の半分がモスクワであり、まさに人口密集地帯に感染が拡大していることが如実に表れている。新型コロナウイルスは効率を求めて密集を続ける都市的生活様式に襲いかかってきたのである。

<アジア諸国が欧米諸国と比べて死亡者も感染者も少ない>
 感染により亡くなられた人は、欧州諸国では国によって多少差があるが人口100万人あたりで大体400~600人という中、ドイツだけが99人とまだしも救われている。ところがなぜかアジア諸国が皆少ない。感染元の中国も3人、水際対策が成功した台湾に至っては、死者は総数で7人と人口100万人あたりで1人にもならずに済んでいる。日本の死亡者数が欧米に比べ少ないことから、コロナ対策が成功したかのようにみえるが、アジアで日本より死亡者数が多いのはフィリピン(8人)だけで、日本はアジアのでは平均以下なのだ。
しかしながら、欧州では死亡者の4割以上が高齢者施設の入居者であり、高齢化率の高い日本も同じく死亡者が増えていた恐れもある中、それを回避できたのは成功と言える。
 感染者数は、前述のとおりPCR検査の多寡により必ずしも現状を正確に捉えておらず各国比較するのにふさわしくはないが、日本の場合は100万人あたり131人、中国58人、韓国約19人、とアジアは大体200人未満である。シンガポールだけが5,269人と多いが、出稼ぎ外国人労働者の三密状態の寮で感染が広がった特殊なケースである。
 それに対し、欧州はスペインの5,006人を筆頭に4,000人前後である。1番少ないドイツでも2,143人に達しており日本の8倍である。また、アメリカは4,933人(38倍)、ニューヨーク州は19,093人(146倍)と、日本と比べものにならないほど感染者も多い。

<日本の感染者・死亡者が少ない一般的な理由>
 政府の対応が後手後手に回り、100万人あたりの死亡者数でもアジアの平均を上回るが、それでも欧米と比べて圧倒的に少ない。巷間言われている理由を列挙する。

(1)日本人はマスクを着用し、なにかと手洗いし、外から帰ったらうがいし、靴を脱いで上がるなど元々公衆衛生意識が高く、また公衆衛生インフラ整備も行き届いている。(⇔アジアも低い)

(2)外出自粛や補償のない休業要請に協力する国民性が幸いした。(→他の国は都市部閉鎖等強制力が強くきつい措置でやっと動いている)

(3)国民皆保険制度のもと医療体制が充実し、医療関係者が奮闘した。日本はICUこそ少ないがCTは人口100万人あたり112台と欧米諸国の2~4倍あり、PCR検査不足を補った。(→独のICU病床が人口10万人あたり30床と仏伊西の3倍もあるなど医療体制が充実。逆に伊は緊縮財政による医療費削減により医療崩壊寸前)

(4)日本人の食生活(納豆・キムチ等の発酵食品、お茶等)が免疫力を高めている。(⇔他のアジア諸国もおしなべて死亡率が低い)

(5)糖尿病、高血圧、心臓病等の基礎的疾患や肥満が重病になりやすいというが、日本人はこれらの疾患が少なく、肥満も少ない。(→ジョンソン英首相も肥満体)

<医学的・疫学的に考えられる理由>
(6)元々似たウイルスに罹っていて、新型コロナウイルスに罹りにくい(交差免疫)。(→インフルエンザに罹っていると他のウイルスに強くなる。インフルエンザや風邪にいつも罹っている子供が罹りにくいにくい理由も交差免疫か)

(7)武漢発の最初の新型コロナウイルスは弱毒で、欧州で強毒に変異したのではないか。 (6)の延長で、秋の中国人観光客が既に持ち込み、集団免疫ができていたのではないか。(⇔日本の後半は欧州経由だったが死亡者はそれほど増えず)

(8)ウイルスは一般的に高温多湿に弱い。(→沖縄にも中国人が多く来ていたのに北海道と比べて感染者が少ない。 ⇔年中高温多湿のシンガポールで感染者が多い)

(9)BCGワクチン接種国は死亡者が少ない。(→伊はもともとBCGを していない。400~500人の英仏独西はかつてはしていたがやめてしまっている。荀はしており、死亡者が独と並んで100人台で少ない。それに対して日本をはじめアジア諸国は、日本で製造されたBCGを接種していた。 中近東もしており、いずれも2桁で欧州と比べて少ない⇔1982年にBCGを止めたイスラエルで接種者と非接種者の比較をしたが、優位な差は見られなかった)

(10)アジアの死者が少ないのは遺伝子的要因もありうる。(慶応大学、京都大学等八つの研究機関と医療機関約40施設が参加して、無症状の感染者、軽症者、重症者等それぞれ200人ずつで計600人の血液を集め遺伝子情報を解析して、重症化につながるHLA(ヒト白血球抗原)、サイトカイン(情報伝達物質)関連の遺伝子を探す。重症化する遺伝子がわかれば、治療につながることになる)

 ワクチンや治療薬の開発とともに、一刻も早く誰が重症化しやすいのか等も究明し、第2波にそなえてもらいたいものだ。

<日本は自画自賛に参入する資格なし>
 欧米諸国や台湾などのきつい外出制限ではなく、日本は緩やかな自粛要請で感染症拡大阻止に成功した。台湾ではこれを「仏式」と呼んでいる。言い得て妙な名前だけれども、その穏やかな仏式で成功したことを、安倍首相は"日本モデル"と称し自慢している。海外メディアは単なる幸運だけではないかといぶかしがっているだけで、決して称賛などしていない。
 韓国は文在寅大統領が、アプリで感染者の行動範囲を特定したやり方を"K防疫"として自画自賛している。中国も感染を広めた張本人であるにも関わらず、武漢の都市閉鎖でいち早く感染防止に成功したことを背景として、どぎつい「マスク外交」を展開し、世界から警戒されている。本当に大成功している台湾は各国から称賛され、マスク等を送るなど国際貢献もしている。ところが、日本は経済に偏った国内対策に汲々するばかりで、世界の困っている国に手を差し伸べる余裕など全くない。効果の不解明なアビガン(200万人の備蓄)を提供する用意があると宣言するだけでは、他国と同じように手前味噌なことは言う資格はあるまい。

<医療体制を整備して第2波に備える>
 日本の緊急事態宣言解除を受けて、WHOは「成功している」と評価する一方で、「今後も感染者を発見する等の措置を続けていく必要がある」と結んでいる。要するにろくに検査をしない体制にやんわりと注文をつけているのだ。なぜなら、人口1000人当りのPCR検査数は、1.9であり、アメリカの45.9人、欧州諸国の12.7~47.5人を大きく下回り、別表の国で日本を下回るのは、インド(0.4人)とブラジル(0.6人)という有様だからだ。
 日本は今のところおさまっているけれども、これで油断することなく第2波、第3波に備えなければならない。韓国は既に第2波に見舞われている。スペイン風邪は第2波のほうがひどかったといわれている。日本はその二の舞にならないように、検査を拡充して感染者を割り出し、隔離、ICU病床を充実させるなど医療体制の整備を急がなければならない。