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労働者協同組合は地域の絆を復活し、潤いをもたらす -みんなで助け合う協同組合精神で生きがいのある雇用を創出- 20.12.17

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 国会議員は、必ず一つは所属しないといけない委員会の活動の他にもいろいろな政治活動の場面がある。その一つが毎朝開かれる党の部会であり、他にも共通の問題意識を持った議員で集まる議員連盟があり、時には法案を提出する母体となっている。

<「桝屋法案」成立の手助け>
 その一つである超党派の「協同組合振興研究議員連盟」(2008年設立)で、桝屋敬悟衆議院議員(公明党)が「労働者協同組合法(以下「本法」)」の成立のため獅子奮迅の働きをされていた。桝屋議員は次期衆院選には出馬されないこともあり、いつ解散総選挙があるか分からない中、私は桝屋さんの現職中の今臨時国会中の成立のため手助けしていた。私は桝屋議員の尽力に敬意を表し、「桝屋法案」と呼んでいた。
 私も提案者の一人として名を連ね、参議院厚生労働委員会では、提案理由説明をして答弁者も務めた。そして、12月4日最終日に当初からすると40年を経てやっと成立した。

<労働者協同組合は会社と同じく何でもできる>
 とはいっても一般の人にはわかりにくい。そこで私は二つの解説的説明をすることにしている。
 会社はどんな事業でもできるが、株主がいて配当がある。社長等経営者がいて従業員(労働者)がいて、賃金が支払われる。そこに主従関係が生まれ、労働者の意思は労働交渉といった機会にしか反映されにくい。当然営利を目的にして稼ぎ、労働者に賃金を払い、株主に配当する。最大の利益を上げるべく労働者の意思などおかまいなしで、むしろ株主のほうを向いた経営が行われる。
 それに対して、この労働者協同組合(以下「労協」)は、出資があるが配当はなし、代表理事、専務理事等はいても経営者というものがなく、組合員全員が事業に従事して働き、更に経営にも意見を言って参加する組織である。営利を求めることはないのが会社や企業組合と大きく異なるところである。

<NPOとも企業組合とも違うメリット>
 つまり、労働者協同組合は会社と同じことを労働者が自ら ①出資して財務基盤を強め、②事業に従事、③意見を反映して民主的運営ができることに特徴がある。NPO法人には出資はなく、財政基盤を強くするには寄附に頼るしかない。また、特定非営利活動20分野に限定されているが、労協には分野の限定はなく、人材派遣業以外は何でもできる。
 また、似通っていると思われる企業組合には出資があるが、配当もあり、営利を目的としている。従って、地方自治体からの委託は受けにくい。つまり、逆に言えば気の利いた、地方自治体は労協に非営利の公共的仕事をいくらでも頼めることになり、地方の雇用の創出にもつながる。

<日本社会に根付いていた協同作業の受け皿になる>
 二つ目には、農村地域社会で各家が一人労働を提供して、いろいろな地域社会維持活動をしてきたのと同じだということである。例えば川普請である。日が決められ一斉に集落を流れる川や水田用の用水路のドブさらいをする。これに対して住宅地のスプロール化が進展した折には、新住民は住民税を払っているのに何でそんなことをするのだと各地で軋轢が生じたが、新住民が日本社会のルールを理解していないための衝突である。
 斎藤幸平大阪市立大学院准教授は、労協のよき理解者であり、労働者協同組合は19世紀のヨーロッパに起源を持ち、利潤第一の資本主義の暴走に歯止めをかけると、期待を表明している。確かにそういう面もあろうが、別にそんなに肩肘張る必要もない。前述のように日本の伝統的社会にはもともと利潤など二の次で、みんなのために一人一人が汗を流すという協同労働が根付いていたのである。農山漁村の集落の協同活動を思い出して、分野ごとに応用していくことで本法を有効活用できるのではないかと考えている。

<労協の林業分野への応用を例にとる>
 村には村有林があり村人皆のもので、大きな木を切るのは別として、薪の類は自由に集めてよいという仕組みがあった。いわゆる総有であり、欧米流に言うとcommonsである。また、別途燃料として薪も必要なために各農家が薪炭林を1haくらいずつ自分の山を持っていた。
 今こうした分野に、協同の労働が必要となる。例えば、薪が必要なくなり、木材も二束三文に値下がりした今、個別の農家では山の手入れなどできない。そこで村の若手5~6人が、下草刈からはじめて枝打ちまですべて請け負う労協を設立し、その村の山の整備を一手に引き受けることができる。かくして村の山林は守れ、村の絆が一部で復活することになる。レイドロー報告が労働者協同組合を推奨したのは1980年、2015年国連はSDGsを採択した。sustainabilityを重視し働きがいのある人間らしい雇用を促進する労働はSDGsにピッタリな組織といえる。

<先行する事例に学ぶ>
 先行するワーカーズコープ(350事業所、2.5万人、440億円の事業)やワーカーズ・コレクティブ(生協活動、500団体、1万人) では、都市部の介護、福祉、子育て、障がい者福祉、清掃、街づくり、配送サービス等で労協の形が多くみられる。例えば、子育て分野で、近隣の働くお母さん方のために余裕のある人たちが子育ての労協を設立し、面倒をみる。一方で、その預けたお母さんも自分の手の空いている時は、労働者の一員としてパートで子育てに参加するといった具合で、地域社会でお互いに助け合うことができる。こうしてバラバラになった都市社会に一つの分野を通じて絆を取り戻すことができる。
 この二つの説明で概略が分かり、具体的な姿が浮かんで来る者は、まだ少ないと思う。しかし新しい協同組合精神が日本社会に浸透し、前述の通り農山漁村では昔ながらの協同労働を思い出し、都市部では先行事例にならい、労協という新しい受け皿が有効に活用されることを願ってやまない。

<衆参とも 1時間審議で全会一致と異例尽くしの美しい議員立法>
 議員立法は通常は宣言法、プログラム法が多いが、本法は137条に達する長文の組織法である。しかも、衆参で1時間ずつ審議も行われ、その過程で疑問点も明らかにされ、議事録はまるで美しい想定問答ないし通達集になっている。私も議員生活17年に及び数々の議員立法に手を染めてきたが、こんなに美しい議員立法は初めてである。小山展弘・前衆議院議員が議連を動かしていたが、私が代理役を務めることになった。荷が重かったが目的を果たせほっとするとともに、このような意義ある法案に携わることができたことに感謝している。

上記で説明しきれなかった労協のメリットや活用しやすい分野を挙げておく。

<他のメリット>
○他の多くの組織は許認可が必要なのに、届出だけで設立できる。(cf.他は許認可に時間がかかる。)
○ ①行政の許可など必要なく、②原則5人以上で、法務局に登録(つまり届け出)するだけで、③簡単に設立できる。
○労働契約を結ぶことから、組合員が労働者として保護され、労働組合も設立できる。(cf.企業組合の組合員は労働者ではないとの判決もある)
○自分の意思で人間らしく働ける。(cf. decent work(働きがいのある人間らしい仕事)に近づく。会社は株主や設立者が意思決定)
○選挙権、議決権は出資数にかかわらず一人一票と平等であり、剰余金も出資額ではなく事業に従事した程度に応じて分けられる。

<活動しやすい事業分野>
○新しい働き方が可能(例:週3日は勤務。2年休んで復帰など)
○引きこもりの人、障がい者、シングルマザー、パート労働者等、自分の働き方に合わせて就業できる。
○地方への移住やワーケーションにも使える。
○NPO法人や企業組合からの組織変更が容易(一定期間)
○人不足の農山漁村の仕事を引き受ける柱になり仲間作りにも応用できる。
○都市部でも需要があるのに担い手のない分野(後継者不足の中小企業、介護、子育て等)にすぐに使える。
○コロナ禍で失業が問題視される中、若者や高齢者の働く場の確保につながる。