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【21年通常国会質問報告シリーズ2(5月20日倫選特委)】小さな生坂村の大きな実験は大成功に終わる -議員のなり手不足対策として55歳以下の若手の報酬を18万円から30万円に- 21.6.2

<何処も同じ過疎山村の悩み、人口減少と村議のなり手不足>
 4月25日参議院長野地方区を含む、3つの国政選挙が行われたが、同じ日に長野県の小さな村生坂村の村議会議員選挙も2001年以来20年ぶりに行われた。国政選挙の後に開票され、人口がわずか1,739人の村なのですぐに終わり、2人の新人議員も誕生した。
 生坂村は長野県の中ほどに位置する東筑摩郡の北西部にあり、面積は39平方キロメートルで、長野県の市町村の中では5番目に小さな村である。ご多分に漏れず人口減少が甚だしく、20年前(3,274人)から半減した。このため議員定数も1981年の12人から4人減り8人になっていた(別紙『小さな生坂村の大きな実験』参照)。

<起死回生の55歳未満、30万円議員報酬>
 生坂村はこの状況に手をこまねいていたわけではない。長崎県小値賀(おぢか)町では若手の立候補がなかったため、50歳以下の若手の議員報酬だけを高くする条例を作っていた。ところが、それにも関わらず若手の立候補がなかったので3年でその条例も廃止されてしまった。生坂村は、議会改革検討会を設置し、50歳以下の村民にアンケート調査で引き上げへの賛否と、希望する額を聞いたところ、4分の3以上が賛成し、30万円が最多だった。それを受けて村議会が2020年12月、定例会で全会一致で「55歳以下の若手に限り18万円の報酬を30万円にする」という条例を可決した。小値賀村の試みにならったのだ。村の将来を真剣に考える藤澤泰彦村長と村議の見事なタッグマッチである。

<若手議員優遇の怪挙(?)が快挙を生む>
 私が2003年初当選の時、総理も務められた羽田孜衆議院議員(当時当選12回)と1期生の私が全く同じ議員歳費というのには、わかってはいたが少々驚いた。一般社会では経験を積んだものの給与が高い。それを逆に若手だけ優遇するというのだ。そして迎えた久方ぶりの村議選では、小値賀町と違い、定数8に対して9人立候補、久方ぶりの選挙となり、投票率も79.8%という高率だ。
 ノースアラバマ大学卒の37歳の会社員(男性)と、新聞店を経営しPTA会長も経験し神田外語学院卒の44歳(女性)の2人の55歳未満の新人が2位と4位で上位当選した。47歳の現職と合わせて3人が支援対象者となった。女性も元々1人いたので、1人増で8人中2人が女性というなかなか立派な構成になっている。つまり若手議員の議員報酬アップの効果が十分にあったのである。

<村会議員の報酬では食べて行けず>
 市町村の議員のなり手が少ないのはどこの地方自治体も抱えている大問題である。その理由の一つは議員報酬が月額20万円にもならないことにある。つまり功成り名遂げて余裕のある人でないと月額20万円そこそこの議員などやっていられないのだ。だからどこの自治体も、議員というと年金収入もある地元の有力者の60代70代が大半を占めるということになる。ところが、それも高齢化が進み、農林業(典型的自営業)の衰退により議員になれる人が急激に減ってしまっている。このような状況の中では、少しでもよいが若手にも議員になってもらわなければならない。
 地方自治体の議員報酬には相当の格差がある。市で一番高いのは京都市の96万円、一番低いのは財政が破綻した北海道夕張市が18万円、村で一番高いのは原発からの収入がある茨城県東海村が36万700円、一番低いのが東京都御蔵島村の10万円とかなり格差がある(別表『市町村における議会議員の報酬月額上位・下位3団体』参照)。
 町村議会議員でみると、議員総数は1万834人、平均年齢は64.4歳。一番多い年齢構成は60代で43.1%、次は70代が31.3%、そして40代以下は9.6%(1,039人)にすぎない(別表『926町村議会の実態』参照)。議員報酬の平均月額が21万340円となっている。40代以下の町村議会議員1,039人の平均報酬を21万円とすると、30万円にするためには9万円が必要である。一ヶ月の追加必要額は1,039人× 9万円=9,351万円。そして期末手当も含めると16か月分として計算すると年14億9,616万円で済むことになる。この金額がそれほど大したことがないというのは、地域おこし協力隊の予算の185億円(2020年)と比べるとよく分かる。国が積極的にこの生坂村方式を援助すべきである。
 地域おこし協力隊のように外から来る人を援助するのも必要だが、その町にその村に住んでいる人たちが暮らしていけるようにお金をもっと出すべきである。つまり、村に残っていて議員になろうという人たちにこそ先に支援すべきだということである。私は武田良太総務相に早急に手を付けるべしと促した。

<土・日、夜間に市町村議会を開催し、兼業議員もなりやすくする>
 他に議員のなり手不足ということでいうと、会社員はとてもじゃないが仕事を休んで議員などできないという問題ある。これを直すには、北欧の地方自治体でもやっていることだが、会議を週末の土・日あるいは平日の夜間に開いて、兼業でも市町村議会議員ができるようにすることである。こうすると自営業者や農家でなくとも誰でも議員になれることになる。進んでいる一部の国では、公務員でも現職のまま議員に立候補できる仕組みもある。

<思い切って数多くいる区長を市町村議員にし、広く議論>
 もっと広く地方の直接民主制ということを考えると、集落ごとにいる区長がそのまま市町村議会議員となり、議会で地方の問題を議論して政策を決めていくことも考えられる。総務省の研究会の報告書は、小規模市町村の議員のなり手不足対策として、「集中専門型」と「多数参加型」の二つを提示しているが、後者にあたる。
 今どき地方で車なしでは生きていけない。上記の週末土日あるいは平日夜間開催でも、議員は一斉に車で集まることができる。議員報酬など少なくとも奥ゆかしい区長さんたちは不平は言うまい。元々集落で生きていける人たちだからである。ただ、こうなるとそれこそ集落の重鎮が区長に選ばれており、若者は入る余地がなくなる。また通常区長の任期は一年のため、若干修正を要する。
 まずは試験的にやってみることである。そうしてうまくいけば、中規模以上の市町にも応用できるものと思われる。

<意外にネックとなっている兼業(請負)禁止>
 この他に大きな市町では考えられないが、意外と阻害要因になっているのは、兼業禁止(請負禁止)である。国会議員は国の補助事業を受けている企業からの政治献金が禁止されているが、基本的考え方は同じである。いわゆる口利きをして補助事業を持ってきて、その見返りに献金させるという構図を断つためである。地方自治体議員の場合は、自分の商売なり仕事を市町村から受注してはならないという趣旨である。ところが、小さな市町村では大きな企業もないので役場が一番巨大な組織となり、ずば抜けていいお客様である。それが議員になった途端市町村役場にものを買ってもらったり、土建会社だと公共事業を受注してはならないとなると、それこそ商売上がったりになってしまう。
 利益相反には気をつけなければならないが、このルールを緩和してやるのも大切ではないかと思われる。
 生坂村は長崎県小値賀町と違って成功したのであり、これを全国でぜひ広めていってほしいと思っている。

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