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コロナ禍で起きたウッドショック- 日本の地方の再生は木材が売れるようにすることから始まる- 21.08.02

 20年の中頃ぐらいから木材の価格が上がり始めている。そして最近は木材の不足や価格の高騰から住宅建築がストップしたりすることもあるという。私のところにも、何とかしてくれという陳情書が送られてきている。関係者の間では第三次ウッドショックと呼ばれている。

<オイルショック、大豆ショック、ウッドショック>
 1973年オイルショックによりスーパーの棚からトイレットペーパーが消える騒ぎになったが、一方でアメリカが大豆の輸出禁止を行い、日本の豆腐の価格が一丁300円に高騰し、大豆ショックと呼ばれた。必需品だろうと何だろうと、安ければいいと何でも野放図に外国からの輸入に依存する日本は、ちょっとした輸出国の動きでモノ不足になる。〇〇ショックに陥りやすい脆弱な国である。

<アメリカの住宅需要の急拡大>
 この時期に木材の不足が生じたのは、アメリカの住宅需要が急拡大し、アメリカから木材の輸入が急減したことである。かつてニクソン大統領はアメリカの物価の上昇を気にして、友好国日本への大豆の輸出を禁止したが、今、アメリカ国内で前年比4倍(21年5月、木材の先物価格は一時的に前年を最大4倍)もの高値で売れている。それなら、あえて遠い日本に輸出することはないということになっただけのことである。
 日本の木材の自給率は食料自給率と大体同じで37.8%(2019年)である。約70%の住宅建築用の針葉樹は外国に頼っている。コンテナ不足等世界的な流通網の混乱によりサプライチェーンが分断されたのも輸入減の要因の一つである。コロナが世界を席巻し始めた20年9月には、日本の木材の輸入量は従来の7割程度まで落ち込み、以後そのまま推移している。

<金融緩和、財政出動、テレワークが住宅着工を促す>
 アメリカの住宅需要が急に増した背景としてはコロナ禍で金融緩和が極限に達し、お金が余っており、それが住宅市場に流れ込んだこともある。そこに財政出動も後押しした。金利が安いだけでなく補助事業もある。ただ金融緩和は日本も含む世界中でも起きていることだが、アメリカの場合、コロナによるテレワーク、リモートワークが急激に進んだのが大きな要因である。日本でも、東京の感染者数が4000人(7月30日)を超え、東京と首都圏3件と大阪に緊急事態宣言が発せられている。アメリカは大都市で猛威を振るうコロナ感染症を恐れ、ニューヨーク等の大都会の密を避けようという価値観が生まれ、その結果地方や郊外に住み、そこで仕事をしようとする人が増えたのである。

<アメリカのテレワークが日本の木材価格高騰につながる>
 アメリカは元々流動性の高い国であり、仕事も住居もさっさと変えて平気な国であり、コロナ後への対応が早いということだ。最も感染者の多いニューヨークがしょっちゅうテレビで映し出されていたが、それに素早く反応した人たちが都会から脱出し、住宅を造り始めたのだ。そして、そのトバッチリで日本の木材不足が生じたのだ。

<一般的にはすぐには国産材に回帰できない>
 こうなると、日本では国産材を使用すればいいということがすぐ頭に浮かんでくる。ところがこれはそう簡単ではない。もしこの状態が長く続くとしたら日本の国産材の供給体制がまた復活していくだろうが、木材不足、木材価格の高騰は一時の現象であり、長くは続かないとみられている。ゼロ金利といった金融緩和は続かないとしても、さらに円高になったり、アメリカの住宅需要が冷え込んだりすると、再び大量の木材が入ってくることになり、国産材はたちまち太刀打ちできなくなる。

<国も企業も一丸となってマスクの自国生産に取り組む>
 日本はいつの間にか短期的な投資しかやらない国になっている。コロナ禍で世界中がマスク不足になったが、他の国では中国への過度な依存体制を改め、国内生産体制が相当戻っている。しかし、日本では一旦事が収まったら再び安い中国製に取って変わられるのが目に見えているので、マスクの生産工場に投資する者はいない。大半の欧米先進国はマスクの中国一国依存体制の危うさを身に染みて体験したのに懲りて、国策として一丸となって必需品の生産の復活に方向転換しだしている。あの自由競争を国是とするアメリカにも、いざ国難という時に政府が介入できる「国防生産法」があり、トランプ大統領は20年3月15日に自動車会社がフェイス・シールドの生産を強いられている。フランスやイタリアでは、高級アパレルメーカーが自主的にマスクや医療用ガウンの生産を開始している。

<日本は長期投資を怠る国に成り下がる>
 ところが日本は弱い産業は日本になくてよいということで、国は日本で成り立ちにくい産業など一切バックアップしない体制になってしまっている。つまり、かつての政府と産業界との信頼関係が薄れ、日本の産業界全体が「今だけ、金だけ、自社だけ」という体制になってしまっているのである。
 こうしたことを考えた場合、やはり政府が乗り出さなければならない。長期的な投資が難しい分野、特に必需品と思われる分野については日本の国内生産体制を整えなければならない。コロナ絡みで言えば、ワクチン開発も民間に任せ、政府は研究開発投資に力点を置いてこなかった。

<日本の悪い見本は丸太・製材の関税ゼロ>
 日本のこうしたいい加減な海外依存体制が真っ先に確立したのは実は木材である。第二次世界大戦後に焼け野原となった日本の再建は住宅の建設から始まったが、戦争中にそこら中の木を切ってしまったがためすぐに木材不足になった。1951年丸太がまず完全自由化された。その後も凄まじい勢いで復興が進み、いわゆる高度経済成長が始まった。そして、オリンピックの年(1964年)に製材も完全自由化された。日本の中で完全に自由化された最初の大きな品目が木材なのである。

<中山間地域の崩壊は木材を捨てたことに始まる>
 その結果が中山間地域の疲弊、過疎化である。小さな畑や田んぼではもともと規模拡大できないし、効率化ができず、農業生産力を上げることなどはとても無理である。そうしたところでもなぜ生きてこられたかというと木材がきちんと売れたからである。1964年頃は、今の価格でいうと4倍の高さだった。だから中山間地域では林業で暮らしていけたのである。それがだめになって70~ 80年経ち、中山間地域の集落が消え、テレビでは「ポツンと一軒家」なる番組が高視聴率をあげている。
 私が、反TPPネクタイを嫌でも付け続けて。TPPに反対した理由はまさにこれにある。コメや農家を守らなかったら、木材で生活していた中山間地と同様、日本の地方はズタズタにされる。

<SDGsに合った建築材料は木材>
 こうしたことを考えると、日本の地方の活性化の1番の近道は林業にテコ入れし、木材工場を復活し山で生きていける人を増やすことに他ならない。幸いにも時代はまさにSDGs一色である。いたるところでSDGsバッジを見かける。それだけ地球環境問題が意識されているということである。
 人間の造ったコンクリートの家や道路等の建造物が地球の全生物の重量を凌ぐ世の中になりつつあり、これが問題化している。もっとわかりやすい例でいえば、マイクロプラスチックが2050年には海の魚の量を超えるというのだ。コンクリートの瓦礫(がれき)を造り続けることは明らかにSDGsに反するのだ。リサイクル、再利用が「国是」ならぬ「世界是」であり、住にしても、情も自然に優しく地球環境を傷めつけない住宅を作らなければならない。

<政府のテコ入れが不可欠なウッドショック対応>
 だから地球環境時代にピッタリの家の原材料は木材なのである。日本の面積の3分2は森林であり多雨の日本では1年間の木材の消費量を凌ぐ木の成長があり、100%自給も可能なのだ。それを国内の森林はほったらかしておいて外国から木材を買って平気な顔をしているというのは、愚の骨頂である。
 上述の通りSDGsへの対応から環境に優しい木材の需要は高水準で推移するとみられており、海外からの輸入は今まで通りにはいかないだろう。14億人の人口を抱える中国は一足先にコロナ禍から脱し、住宅需要の回復は著しく、世界の木材需給の混乱原因にもなりうる。
 ポストコロナの変革は、外国産材の輸入に高関税をかけ、それを原資として国産材の復活を果たすことから始めていかなければならない。各地の製材工場が潰れ、民有林は放置され放題、中山間地域に人が住まなくなった日本では相当テコ入れしないと林業は復活できず、地方は活性化しない。思い切った政策の転換が必要である。