« 2022年7月 | メイン | 2022年9月 »

2022年8月28日

8月22日 羽田雄一郎参議院議員の「お別れの会」(上田市)が開催され1500人も参列していただきました。その開会の辞を参考までに報告します。【 】は省略した部分です。

 本日はお忙しいところ、また、コロナ感染者が増え続ける第7波の最中にもかかわらず、我が盟友羽田雄一郎元参議院議員のお別れの会にご出席いただきまして誠にありがとうございます。
 まず、本会が開かれるまで雄一郎議員が亡くなられてから既に1年半が経ち、かなり遅れてしまったことをお詫び致します。これは偏に新型コロナ肺炎で亡くなった故人を偲ぶ会でクラスター感染などを発生させるわけにはいかないとの判断から、延び延びになったことをお察しいただきたく存じます。

 雄一郎議員は男盛りの53歳、これからの政治家でした。

【雄一郎議員とずっと同じ党にいる人は、参議院で田名部匡代、徳永エリ、森本真治、古賀之士の4人、衆議院では原口一博、伴野豊、小山展弘、そして私の4人しかいません。いかに我が陣営が混迷を極めていたかを象徴しております。】

(注)民主党が政権を握っていた2012年6月、税と社会保障の一体改革の過程で、消費増税の賛否で対立し、一部が離党し生活の党ができた。
2017年10月、民進党(2014年に維新と統合して名称を改めていた)が、小池百合子の希望 の党と統合し、衆議院の大半が移ったが、排除された者が立憲民主党を作り、残った参議院中心の民進党と3党が鼎立する形となった。
2018年5月、希望の党と民進党が統合して国民民主党ができ2党となった。
2020年10月、旧国民民主党と旧立憲民主党が新立憲民主党として一つになったが、旧国民民主党の一部が新国民民主党を作り、今の状態となった。
 雄一郎議員は、微動だにせず、民主、民進、国民、立憲と常にど真ん中にいたが、私も無所属出馬したが、党籍は民進のままで全く別の党に行ったことがない。衆議院では原口以下3人も全く同じ軌跡を辿る。参議院には、落選者も多く、たった4人しかいない。
 恥ずかしながら、それだけ野党は、分裂を繰り返してきたということである。

 亡くなる約1年前、19年12月13日、私は井出庸生さんから早朝に電話をもらいました。自民党入党を報ずる信毎の1面をみて下さい、すみませんというお詫びの電話でした。私は怒ろうと思いましたが、すぐ違う考えが頭をよぎりました。

(注)2010年、小沢一郎幹事長は、12の2人区に全て2人  
 擁立した。自・民の対決であり、1人は 当選すること
 が確実であり、比例票を上積みできるからである。と
 ころが、長野県は北沢俊美(現職の)防衛相と私が全
 面的に支援してきた若手女性県議・高島陽子の競争と
 なった。
 高島に票が大量に流れることが予想されたことから、
 私は密かにみんなの党の旧知の浅尾慶一郎、山内康
 一、川田龍平に「若い女性を擁立して欲しい」と頼み
 込んだ。それに対し、「若い男でもいいですか」と応
 じて擁立してくれたのが井出庸生だった。かくして、
 若者票が高島と井出に二分され、北沢29万票、高島22
 万票、井出18万票と北沢防衛相は辛うじて4選すること
 ができた。
  だから、私は井出には大恩がある。その後、同じ党
 になりリベラルな考えも共通部分があり、同志として
 仲良く付き合っていた。

 山口県ではいざこざが起きていましたが、ここ信州では羽田孜元総理が雄一郎議員に衆議院へ鞍替えする扉を開いてくれた、と前向きに捉えようと思いました。それ以来、私はずっと衆議院議員になり党首になるべきだとささやき続けました。
 (注)もう決着がついているが、山口県では林芳正参
 議院議員が将来の総理・総裁を目指して、公認されな
 くとも河村健夫衆議院議員の選挙区に立候補せんと
 し、それを阻止すべく二階派が大挙して山口に押しか
 けていた。しかし、河村は引退に追い込まれ、林が出
 馬当選し外相に就任している。政治の世界は残酷であ
 る。

 今、我が党の支持率は、政権交代には程遠い10%以下に低迷しています。
 リベラル色を強くすれば15%くらいになるかもしれませんがそれでは無理でしょう。予算に賛成したりして自民党にすり寄る党など国民はすぐ見限るでしょう。更に提案型野党などと腰がフラフラし、何をしでかすかわからない危うい党でも支持は拡がりません。
 そうした中、国民が待ち望む野党は、デンと構えてさわやかに政府を追求しさっそうと政権交代できる党です。私はギラギラした野心もなく誰からも好かれる雄一郎議員こそ混迷を極める野党の救世主になりえる人だと確信しておりました。リベラル保守も一般国民も安心して支持できる政治家だからです。

(注)そして数、割合は前者が圧倒的に多い。例えば、
 昨年の立憲民主党の党首選に出馬した4人は、当選6~
 8回。全員20代、30代で衆議院議員になっており、ギ
 ラギラ野心組になる。更に言えば、私は羽田孜総理に
 さんざん勧められて55才でこの世界に入ったが、泉健
 太、小川淳也、西村智奈美は55歳未満。
  雄一郎議員のような3世議員は、積極的に跡を継ぐ
 者は前者、父母の後援会に押され仕方なく出馬するの
 は後者に当たる。私が17年間付き合った限りでは、
 抑制のきいた人であり、嫌らしい野心は全く感じられ
 なかった。

 亡くなった20年12月、10か月後に衆議院が任期切れというのに3区の候補が決まっていませんでした。私は、「近づいたら『責任を取って私が出馬する』と言って出ればいい」という悪知恵もささやいていました。ここにもう1人小熊慎司さんも私と同じことを口にするに及び、半分ぐらいその気になりかけていたと思います。その矢先の急逝でした。残念でなりません。
雄一郎議員の意志は、弟の羽田次郎参議院議員と従弟の神津たけし衆議院議員に受け継がれていることが幸いで期待しております。

 お別れの会ではありますが、雄一郎議員の意を酌んで野党のあり方に思いを馳せていただくことをお願いして開会の辞と致します。
 長くなりまして失礼致しました。

2022年8月26日

【旧統一教会シリーズ1】断ち切るべき旧統一教会と政治家の濃密な関係-身に覚えのない篠原の濃密関与報道と立憲民主党の速やかで正直な対応- 22.08.26

<SNSから始まった政治家と旧統一教会の関与騒動>
 7月中旬、SNSに「やや日刊カルト新聞」の112人の旧統一教会関係国会議員リストが掲載され、夕刊紙等が書き立てた。自民党議員が大半だったが、下記の6人の立憲民主党議員も入っており、私も2016年の会合に祝電を打った、とされていた。ただリストをみると、自民党議員が大半で、献金、選挙手伝い等と濃密・濃厚度合いが違っていた。
 感心なことに我が事務所は、メッセージ・祝電の類も直ちにチェックできるようになっており、調べてみたが該当しなかった。そもそも2016年に会合自体が開催されていなかったというお粗末な結果だった。

<2004年(18年前の関係団体の長野会合)への祝電>
 一方、共同通信がアンケート調査をした際に、関連団体を20ほど列挙したので、念のため「平和」「統一」「教会」等それらしいワードで検索したところ、2004年に「ホテル国際21」(長野)で開かれた「平和統一聯合」会合に対し祝電を打っていたことが判明した。「本日の大会が、朝鮮半島の平和的統一に向かう礎となるよう祈念しております」と結ばれたメッセージも残っていた。私が当選したての1年目で、長野事務所には若い男女が2人いるだけで、祝電を頼まれれば応じていた時代だった。旧統一教会の関連団体と知る由もなかった。脇が甘い、もっと関係をよく調べるべきだったという批判は、その通りであり、18年前のこととはいえ反省している。しかし、私の承知している限り、会合への出席、献金等は全くないし、今後はもっと慎重に対応して行くこととしている。

<主体的に動いた立憲民主党>
 こうした案件は幹事長部局の担当となる。党が責任を持って調査し対応することにした。
山上徹也容疑者は、犯罪者である一方ある意味で被害者である。反社会的ともいえる団体と深い関係持つことは政治家として許されるべきことではない。信者の献金が政治家への工作に使われ、旧統一教会への捜査、取り調べがおろそかにされていてはとても申し訳が立たない。この際、政界(特に自民党)と旧統一教会のいわゆる「ズブズブ」の関係を徹底的に洗い出し、第二の山上徹也、第二の安倍首相を絶対に出さないようにしないとならない。我々はそうした意気込みで、自らも律しつつ、政権与党の座に安住して深い関係を持った自民党を突き動かすことにした。

<党が全面に出て調査、そして速やかに公表>
 6人のうち下条みつは、落選中で記憶にないとのことだったが、小宮山泰子は私と同様に2016年はないが、2006年に祝電を送っていたことが判明した。松木謙公、後藤祐一も覚えがなく確認できず、中川正春だけ唯一、SNSで指摘のとおり2018年ピースロード三重に祝電を送っていた。
 党としては明確になった中川だけの公表でよかったのかもしれないが、記者から尋ねられれば「16年前(2006年小宮山)、18年前(2004年篠原)にあった」と公表することにした。後藤祐一はすぐに自らのSNSに事実無根と載せていたが、こういった案件はまず党が責任を持って対応すべきことである。
 指摘された6人の調査報告は、7月16日にまとめ、7月19日(火)常任幹事会の後の西村幹事長の定例記者会見で公表する予定だったが、7月22日(金)の泉代表の記者会見で遅れての公表となった。

<旧統一教会被害対策本部の協議を開始>
 その日消費者部会で消費者問題として捉えて会合を持ち、7月25日(月)には、20年前から統一教会問題追いかけ続けてきた有田芳生(残念ながら今回の参議院選で3期目出馬していたが、当選できなかった)を講師にして、関係部会からなる被害防止対策本部会合(西村智奈美本部長)を開催した。翌26日には、西村幹事長名で、全議員を対象とした、自己申告による調査を行いその結果を公表することとした。
 8月18日には第7回会合では旧統一教会からの脱会を支援してきた方に被害の実態と課題についてヒアリングを行ない、次期通常国会に向けて被害者救済・被害防止のための立法措置を準備してくこととしている。

<逃げ切れなかった政府自民党>
 7月26日、茂木自民党幹事長は、案の定、党として組織的関係がない、各議員が説明すべしと逃げの会見。この間に岸防衛相、二之湯国家公安委員長の関与が報道され、週刊誌も一斉に山上容疑者の家庭崩壊から始まり、自民党清和会を中心とする自民党政治家の濃厚な関与を次々に書き立てた。
 そこに、共同通信(7月30、31日調査)の世論調査結果で、岸田内閣支持率が前回(7月11、12日)調査から12.2ポイント下がり内閣発足以来最低の51.0%となった。また、旧統一教会と政界との関わりについて実態解明の必要があるが80.6%、と国民の厳しい反応が明らかになった。これを受けて、8月10日、岸田首相は内閣改造の前倒しを決定、旧統一教会との関与を閣僚人事の一つの判断基準にすると明言した。
 今日8月19日(金)新閣僚が出揃ったものの、8人の閣僚のほか政務三役の四割に及ぶ32人が何らかの形で統一教会との関与が判明。通常は内閣改造により支持率が上がるのに、ほとんど変わらなかった。政府・自民党にとっては大打撃となった。私には自民党が議員個人の問題と逃げること、そしてマスコミが一斉に飛びつくことまでは想定内のことだった。しかし、ここまでガタつき、内閣改造までするというのは予想外のことだった。

<関与の度合いを無視した報道>
(私の頭の整理のために、関係性を評価して比べる表を作成したので参照されたい)
 旧統一教会との関与は濃淡にかかわらず扱われているが、最もひどいのは、献金を受けていることである。(×が10個)前述のSNSリストでは5人ほどいる。あとはパーティ券の購入(×8)、選挙の手伝い(×8)、会合出席あいさつ(×7)と続く。軽微なほうからいくと、世界日報等統一教会関連団体と知らずに取材を受けて記事になること(×1)、関係団体とは知らずに祝電を打つこと(×1)、知らずに秘書を代理出席させること(×1)が挙げられる。
 関与の度合いが大きく異なるのに、報道では一覧表にされ、ズブズブの自民党議員と同列に扱われ批判の対象とされた。

<突然出てきたビデオメッセージ>
 この手のスキャンダルになると決まって苦情電話やメールが来るが、7月24日(土)の信濃毎日新聞の報道では、メールと電話で1人ずつ来ただけだった。そしてその2人とも非常に見識の高い私の支援者で、注意喚起が主な目的だった。何かと厳しい有権者も、2004年(18年前)で事務所体制もできていな頃に祝電を打ったぐらいでとやかく言わなくとも、という理解だったのかもしれない。
 ところが、8月14日(日)に、信濃毎日新聞が共同通信の調査結果をそのまま転載する形で「ビデオメッセージ・祝電を送る」と掲載されたときは、厳しい苦情が数本かかってきた。私は、最初何のことかわからなかったが、報道の安倍首相のビデオメッセージを彷彿し、わざわざビデオメッセージ(×6)を送る親密な間柄と勘違いされたのである。

<立憲民主党のこの1年の成果>
 私は、西村幹事長を支える幹事長代行を務めてきた。支持率はさっぱり上がらず参院選は大敗北し、成果の見えない1年であり崖っぷちに立たされている、それにもかかわらず、反省もなく、そうした危機感も感じられないのは嘆かわしいことである。
 そうした中、二つ成果があり、一つは参院選で女性候補を半分以上立て、当選者数で女性が男性を上回ったこと。二つ目は、今回の旧統一教会問題には速やかに対応し、政府自民党をバタつかせたことが挙げられる。そしてこの二つとも幹事長部局がリードしたことであり、少しは党に貢献できたものと思っている。
 8月23日(火)には、3度目になるが我が党の調査結果を報告し、一区切りをつけた。

【参考】8月23日記者会見 立憲民主党 220823立憲民主党の統一教会とのかかわり調査結果(記者配布資料)
【参考】テレビ信州アンケートに対する篠原の回答

2022年8月 7日

【安倍首相国会論戦追悼シリーズ➃】 政策の違いを超えて安倍首相の死を悼む -Abeの名は世界にも響き渡った- 22.08.07

<なぜかTPPに取り憑かれた安倍首相>
 16年秋、TPP特別委が設置されると、安倍首相は全ての委員会に出ると言い、事実その通りに出席しどおしだった。異例のことである。私は、野党の筆頭理事として十分な審議を進めるために汗をかいた。

 50数時間の審議を経て可決したが、既にその時はTPPに入らないと明言するトランプ大統領が次期大統領にほぼ決まっていた。その後、安倍首相との蜜月が続くが、肝心のTPPはそのままだった。この違いをおかしいと指摘する者がいないのはおかしなことであった。

2016年10月17日 TPP特委(今回は私の質問は箇条書きにする)
篠原...アメリカは、2001年京都議定書から勝手に脱退している。だからトランプ候補は、日本が承認したTPPに入らないと言い出す可能性がある。
・2人の大統領候補(クリントン・トランプ)はTPP絶対反対であり、次期大統領の意向を考えるべし。
安倍...今やれる私たちのベストは、やはりしっかりと審議をし、日本がリードをとる形で批准をし、米国も促していく。また、米国でこのTPPに対して支持をしている人たちや、あるいは議員の人たちも、日本が批准をすることによってそういう機運を持ち続けることができるという話も伺っておりますので、私は、そういうことではないか、こう考えているところでございます。
篠原...イギリスがEUから離脱したのは、グローバリゼーションに疲れたからでアメリカ国民も疲れている。
・TPPでアメリカのルールに従っていたら、安倍首相の気にする日本の伝統文化の維持もできなくなる、自国のことは自国で決めるべき。
安倍...篠原委員の御指摘は、傾聴に値することが多々あると私も思っております。日本の伝統文化の維持、自国で決める、これはまさに自民党の姿勢そのものでございます。
英国のEU離脱については、確かにグローバル化の疲れなんだろうなと思います。というのも、英国の一割ぐらいの法律については、いわばブラッセルで決める。これは、別にTPPは我々の法律に対して何の介入もしてこない<中略>また、米国のルールで蹂躙されてはならない、これは私もそのとおりだと思います。
篠原...ISDSは、日本の法律なんかにぎゃんぎゃん文句を言って、国に賠償金を払えと、変えようとする。真面目な役人はアメリカに気兼ねして、萎縮効果が相当出てきている。ですから私は絶対反対。

<加計学園>
2017年11月28日予算委
篠原...加計孝太郎さんは無二の親友だから便宜を図ったって、私は文句を言われる筋合いはないと思います。しかし、何事にも許容される範囲があります。官邸が自動忖度機になってしまっている。もう5年も総理をやっておられ大宰相に近づきつつあります。もっと品格をもって正々堂々とやっていただきたい。
安倍...尊敬する篠原先生のお言葉ですから、拳々服膺していきたいと思っている次第ですし、長年の友人でございますが、私の地位を利用して何かしようとしたことは、加計氏は一度もないわけでございます。いずれにせよ、友人であることから、李下に冠を正さず、私自身も反省すべき点は反省しなければならない。このように思っています。

 政治家は、無二の友人に獣医師学部の一つくらい便宜を図ってもよいとかなり強烈な嫌味の質問をしたら、逆に李下に冠を正さず、と反省すべき点は反省すると答弁。意外だった。

<質問時間の与野党の割り振り>
 政府が質問時間の与野党の割り振りを変え、与党議員も質問が多くできるようにという動きがあった。それを打ち消すために、首相と官房長官のかつての質問時間表を作り、別に立派な質問をしたから出世していくんじゃないという、冗談の入った質問をし、かなり軽妙なやりとりが行われた。
2017年11月28日予算委
安倍...私自身のことを詳しく調べて頂いて、篠原委員ほど華々しい質問はしたことがないんですが、ただ、私の場合も、与党議員ではありましたが、予算委員会で当時の高村外務大臣に集団的自衛権の解釈の変更を迫ったことがございます。自慢めいた話になりますが、このことが、我々が解釈を変更する際の基本的な考え方の1つになったのではないかと自負しているところでございます。いずれにせよ、若手の議員も、篠原議員を見習いながら、しっかりとした華々しい質問ができるようになれば、このように願っているところでございます。
篠原...やはり与党政治家と野党政治家は役割が違うので、質問をいっぱいしたって、せいぜい篠原孝程度で、総理になるにはちゃんと与党政治家として活躍するということを諭して頂きたいということをお願いいたしまして、終わらせて頂きます。

<公明党の重鎮議員からの思いがけない指摘>
 18年5月、私も徒に当選を重ねて6期目となり、質問のできない懲罰委員長を拝命した。本会議場の席は公明党との境界線上となり、右隣りの重鎮の議員から「安倍首相は篠原さんの質問の時だけは真剣に聞いて身構えて答弁していたが、篠原さんが質問しなくなってから緊張していない」とお叱りを受けた。
 私自身は質問に集中しているので気が付かなかったが、TV中継をじっと見ている人からも同じようなことを度々言われていた。安倍首相は、気に障ると質問者に容赦なく喰ってかかっていた。私には、そういう態度をとったことが一度もない。

<選挙応援にも好き嫌いが反映した安倍首相>
 16年夏の参院選に、安倍首相が3回応援に入ったのが、岩手、新潟、そして長野である。岩手は苦戦している現役法相の岩城光英の応援であり、優しさの表れである。新潟は憎き森ゆう子落とし。長野の杉尾秀哉もTBSの記者の時代からの因縁で落としに来たのだろう。その後、国会論戦でも、杉尾に対してはきつい野次も飛ばしている。
 首相の座を去っても選挙好きの趣味は変わらなかった。22年夏、一番人を集められる政治家は、岸田首相や河野太郎、小泉進次郎といった人気者でなく安倍晋三元首相になっていた。これが仇となって7月8日に命を縮めることになってしまった。国際的ニュースが流れ、世界も突然の死を悼んだ。

<弔いは自分の気持ちに従って素直にすればよい>
 順調なら安倍首相は長野に8日に入る予定だったが、6日の週刊誌による自民党候補のスキャンダル報道により杉尾候補が大逆転し、自民党候補の目がなくなってしまったため奈良・京都に変更され、7月8日奈良で凶弾に倒れてしまった。予定通り長野に来られていればこんなことにならなかった。
 7月9日選挙戦の最終日、遊説で大声を立てる気にはなれず静かに喪に服し、最終の長野駅前のみ付き合った。7月10日の投開票日には、夜8時の開票報告会までに戻ればよかったので、朝6時に起きて大和西大寺駅の現場まで献花に赴いた。居てもたってもいられなかったからである。
 政治家の功罪など人によって評価が分かれるのが当然である。野党側は安倍首相嫌いが大半であり、国葬問題も国民を巻き込んでかまびすしいが、私は自分の気持ちに従って一日かけて安倍首相の最期の地に駆け付けた。近くの大津から同じく駆けつけていた大岡敏孝環境副大臣から突然声をかけられ、野党議員なのにわざわざ遠くからと驚かれ、写真も撮ってもらった。
写真(献花台にて).jpg
(大和西大寺駅前献花台にて)

 私は本稿をまとめるにあたり、私と安倍首相とのやりとりを一通り読み直してみた。そして、我が国のトップに向かって失礼なことを言っていたことも思い知らされた。お詫びしたいが、もうその機会はない。ただ、安らかにお眠りくださいと言う以外にない。

合掌


(注) 正確にはわからないが、異例のTPP特委を含めると、安倍首相と私の間で行われた質疑時間の合計は上から数えて何番目かに入るだろう。また、安倍首相の答弁から「尊敬する」を含む語句を議事録で検索してみたところ、14回しか使われておらず、そのうちの3回が私に宛てて発せられたものだった。冷やかしもあるだろうが、私の安倍首相への敬意の返礼と思って胸にしまうことにする。

2022年8月 6日

【安倍首相国会論戦追悼シリーズ③】 篠原の冗談交じりの嫌味質問に真面目に答弁をする安倍首相 -仕返しに「尊敬する篠原議員」と3度も打ち返される-22.08.06

<篠原さんは安倍首相と漫談>
 我が党の真面目なベテラン議員からは「篠原さんは安倍首相と漫談しているようなものだ」と嫌味を言われた。また、「篠原さんほど安倍首相にキツイことを言っている人はいない。それなのに篠原さんにはカッとなって怒らない。安倍首相は篠原さんの皮肉の褒め殺しの言葉を本気に褒められていると勘違いしているからではないか」などと失礼な解説をする同僚議員もいた。安倍首相はユーモアのわかる人で、言い返しも上手くて、私とのやり取りをある意味楽しんでいたのかもしれない。そして、私のこうした質問のファンも多くいた。
 私が相当どぎつい嫌味を言っても怒らなかったのは、私が一国のトップとして安倍首相に敬意を表しつつ質問していたからである。言っては悪いが、最初からケンカ腰でワンワンキャンキャン喚かれては、まともに答弁する気にならないのも仕方あるまい。

<小泉元首相の原発廃止の忠告は聞くべし>
2014年1月31日 予算委
篠原...小泉元首相は、フィンランドに行かれて、あんな小さな国が高レベル放射性廃棄物の処理を責任をもってやっているとびっくり仰天し、突然言い出されたと思っておられると思います。二年前に、私の『原発廃止で世代責任を果たす』という本を、読みたいと言って読んでおられます。つまり、もうずっと原発がおかしいとお考えになっていたんです。原発を持っていることがもとで、日本がつぶれてしまうんじゃないか、オリンピックもできなくなるのではないか、と思って小泉首相が目をおかけになった安倍首相に忠告されているんだろうと思います。当選回数の少なかった安倍首相の才能を見出し期待しておられたんです。私はそれに報いるべきだと思います。
安倍...尊敬する篠原委員の本が小泉元総理に影響を与えていたというのは今初めて承知をした次第でありますが、私にとっては政治の師というのは、小泉さんもそうでありますが、同時に、森先生もそうでありまして、お二人は私は官房長官としてお仕えをさせていただきまして、お二人の指導によって今の自分があると、こう思っているところでございます。エネルギーについては、多様化していくことも大切であるわけでありまして、もちろんこの三年間でしっかり再生可能エネルギーにも力を入れていく考えでございます。そうしたものが原発を代替していくという確証を得ることができなければ、原発をやめるというわけには、責任ある立場としては言えないわけでありまして、これからも課題について向き合いながら、我々は低廉で安定的なエネルギー供給、そしてなるべく自前のものを増やしていく。そういった観点も入れながら、原発依存度をできる限り低減していきながら、エネルギーのベストミックスを目指していきたい。

 大恩ある小泉元首相を持ち出し、情の安倍首相に情で攻めるも、森元首相も師だとかわされた。ただ、珍しく原発に代替するエネルギーの確証が得られれば減らしていける、と少し妥協した素振りを見せる。一抹の後ろめたさの故であろう。

<満蒙開拓の悲惨な集団自決には素直に手を合わせる>
2014年1月31日 予算委
篠原...満蒙開拓団高社郷の集団自決は、終戦の事実を告げられなかった悲劇です。関係者はほとんど亡くなっていて、慰霊碑もできなかったところ、阿智村に満蒙開拓の平和記念館ができています。こういう人たちこそ国が祭って、国がすいませんでしたと言うべきだと思うんです。
安倍...私は寡聞にして存じ上げなかったんですが、人々に終戦の事実を知らせていなかったということについては、これは大変な問題でありますし、このことによって悲劇が起きていたということは、我々しっかりと肝に銘じなければならないだろうと思う次第であります。そうした戦争の惨禍で人が苦しむことのないような時代を作っていかなくてはならないと決意を新たにし、こうした悲劇で亡くなられた方々に対して、私も手を合わせていきたいと思います。

 特定秘密保護法は、秘密を洩らした役人や記者を罰することになっているが、大事な事実を隠して語らない政府にも罰を与えるべきと主張。それに対し、安倍首相は阿智村の平和記念館に手を合わせるとしおらしい反応をした。安倍首相は行かなかったが、この質問の成果か16年11月17日平成天皇皇后両陛下が訪れている。

<安保法制懇の偏った委員構成>
2014年2月13日予算委
篠原...安保法制懇のメンバーは、ほとんど全員が集団的自衛権の行使を容認する人たちだらけです。選挙の洗礼を受けた国会議員がきちんと議論して決めていくべきであって、このやりかたはよくないと思います。
安倍...尊敬する篠原委員は誤解をされているんだろうと思います。メンバーについては外交防衛政策に関する実務経験者、政治、外交、憲法、国際法等の学会関係者、経済界の民間有識者といった幅広い代表の方々に参加をしていだきまして、現実的な状況、国際情勢についてしっかりと議論をされる方、知見を持った方が議論をしておられるわけであります。

翌15年の安保法制が念頭にあったのだろう、答弁はぶっきら棒そのもので、委員の偏りは空疎な議論を排しているだけだ、と聞き入れなかった。

<農政の通説を数字でくつがえす説明>
 この日の質問ではいつものように数字を駆使して、日本の農業が言われているほど保護されていない、日本の畜産、特に養鶏、養豚は土地の制約がないので、規模は世界一だ、といったことを説明し、もっと農家を手厚く保護すべきだと訴えた。視聴者の方から数字をくれという要望が殺到した。
2014年2月27日 予算委
安倍...篠原委員が、日本の農業の予算に占める比率、あるいは国際比較について大変
わかりやすくご説明いただきました。日本の農業についても、しっかりと、規模拡大、
生産性の向上に努力をしてきたのは事実であろうと思います。同時に、基本的に
日本の国土には山があり、そして浜が迫ってきているという狭隘な国土において、
相当の努力をしてこられたわけでございます。...(中略)...やはり、農業というのは産
業というだけでは切り取れない様々な側面をもっているということは間違いない。だ
からこそ、農業、第一次産業は国の基ではないかと考えているところであります。

<安倍「官邸農政」は、官邸に巣食う政僚(政治的官僚)の間違い>
 本シリーズは安倍首相の追悼が目的であり、安倍政治の功罪を論評するものではない。ただ、第二次政権になってから強引に推し進めた、農協法や農業委員会法、主要農産物種子法の廃止等、どれをとっても、農政に40数年携わった私から見ると、背筋が寒くなるほどの酷さだった。はっきり言って何一つまともではない。現に日本の地方、そして農業・農村は急激な速度で疲弊しつつあり、農山漁村の急激な人口減少にその弊害が如実に表れている。直接現実世界に影響のない憲法などと異なり、農政は直接現場に届いてしまうのである。
これらは官邸に巣食う「政僚(政治的官僚)」が、国家戦略特区諮問会議や、規制改革推進会議を悪用して、農林水産省に押し付けたものである。
安倍首相の関与があるとしたら、誇り高い安倍首相が、農民そして農協に07年参院選の仕返しをしていたのではないかと疑いたくなることである。味方をこよなく愛し厚遇し、敵は徹底的に叩きのめすという安倍首相の姿勢からすると、十分ありうることである。

2022年8月 5日

【安倍首相国会論戦追悼シリーズ②】憲法、原発、TPPとことごとく対立する政策理念- お互いに本音のぶつかり合いで真摯な質疑応答- 22.08.05

 政権運営に汲々として漂流する民主党政権を尻目に、11年秋、自民党総裁選(安倍、町村、林、石原、石破)が行われ、安倍首相は総裁に復帰した。私は長野駅前の演説会を遠くから見守っていた。一方、09年08月の総選挙で308議席の大勝で政権交代を果たした民主党は鳩山、菅、野田と3人がほぼ1年交代で首相を務める。安倍首相は消費増税、TPPと功名に走る野田首相を唆し、12年11月の解散に持ち込んだ。民主党は57議席と大惨敗で、僅か3年3ヵ月で政権を自民党に明け渡すことになった。
 そして、この後に続く安倍政権で、私と安倍首相との国会論戦が度々行わることになった。それを辿って追悼してみたい。

<長野県の高齢者医療費が安い理由>
13年3月18日 予算委
篠原...福岡県と長野県の医療費の差は年間約40万円なんです。そして、75歳以上後期高齢者は1,470万人いるんです。日本人全員が福岡県人、長野県人だとしたら、医療費の差がどれだけになるか。5.6兆円なのです。65歳以上は日本全体で約3,000万人。正確な計算ではありませんが、12兆円も節約できるわけです。医療費はGDPは8%、34,5兆円かかっています。ですから、国益を考えるのであれば、規模拡大ばかりではないような気がしているのです。
安倍...篠原委員のご指摘された通りだと思います。私がかつて自民党で、社会部長(現厚生労働部会)の時に、長野県に倣えといって、政策を中心的に予防に力をいれるようにしたところでございます。私も地元で、長野県に見習うようにということを常々申し上げております。ほかでは悔しいですからあまり言わないんですが。
確かに健康寿命も、そして1人当たりの医療費も少ない、そして人生ずっと仕事を持ちながら、生きがいを持ちながら、かつ自然と触れ合いながら、物を作っていくという喜びに触れながら人生を送ることは、健康を維持し、かつ豊かな人生につながっていくのだろうと思います。こういう観点もしっかり採り入れながら、すばらしい国、美しい国をつくっていきたいと思うところでございます。

 数字をもとに安倍さんに規模拡大ばかりではない、ゆったり農業をやる人がいた方が医療費も少なくて済み、国益にかなう、という逆手の指摘をした。それに対して、安倍首相は社会部長の時に長野県を倣えと言っていた、と正直に反応した。更に、私が云わんとした高齢者が農業に勤しむのもいいということを言ってのけた。

<タカ派の岸信介ばかりでなく、安倍寛も見倣ったらいかが>
13年3月18日 予算委
篠原...攻めの農政という言葉は1975年安倍晋太郎農水大臣が使われていた言葉なんです。安倍総理はお父さんを意識されているのでしょう。総理、おじいさん(岸信介)のことも考えていらっしゃる。私は、これは同じDNAだから当然だと思いますけれど、どうも外に出て行って云々というTPPは安倍総理の政治哲学とちょっと違うような気がしています。満州に、東南アジアに出ていく。これで日本が失敗した。しかし、安倍寛さんというおじいさんもおられて、この方は東条英機さんの方針に反対して、翼賛選挙のときも無所属で出られて当選されている。つまり、いたずらに外に出ていくのはまかりならぬということで政治活動をしておられたんじゃないかと思うんです。(時間足りなく答弁求めず)

 母方の祖父岸信介ばかりでなく、翼賛選挙に反対していた父方のリベラルな祖父安倍寛も見習ったらと親切な注文。こんなお節介を国会質問でするのは私ぐらいだっただろう。安倍首相は政治家としては10年先輩だが、人生では私が6年先輩。時々駄々っ子をあやすような気になっていた。
 後(14年5月28日予算委)に岡田克也が、自席で野次るような言い方でなく、懐深く議論をと言ったときには、猛反発していたが、私のこの手の忠告には一度も怒ったことがなかった。

<憲法は自説を長々述べる>
13年10月21日 予算委
篠原...憲法九十六条で、憲法改正の発議を、衆参両院の3分の2から2分の1にするという、非常に横道からの変なアプローチです。そして集団的自衛権を認め、法制局長官を変えて解釈を変える、というのはよくないやり方じゃないかと思っております。安倍総理は何ごとにも正攻法です。3矢を300本打つという気概でやっておられるんだと思いますが、この2つは絶対に賛成できない。
安倍...なぜ九十六条なのかといえば、3分の1を超える人たちが反対すればたとえ、国民の6割、7割が変えたいと思っても国民投票すらできないというのはおかしいのではないかという問題意識であります。
そして、憲法解釈の問題でありますが、これは集団的自衛権に限ったことではありませんが、長官に解釈を変えさせるということではなく、安全保障法制懇の場で議論を行い、そして与党の中でも議論を行い、その中で判断していきたいと考えております。

 長々と自説を展開した。憲法改正への拘りが手に取るように分かった。

<原発輸出は日本のノウハウを輸出と強弁)
13年10月21日 予算委
篠原...世界に原発を売り込むことをやられていますが、異様だと思います。こういうことにあまり口を出されるべきではないと思います。
安倍...原発において過酷事故を経験したが、それによって培われたノウハウがあります。この経験を世界に共有する責任があると考えているわけでありまして、その中において、我々の高い水準の技術を世界に出していくべきだろうとこのように判断しているところでございます。
篠原...日本の国土の3%が住めなくなっている、16万人が避難している。この国土を汚してもいいんでしょうか。日本の国土を守ろうとした靖国神社の英霊は、しっかり考えてくれと言うんじゃないでしょうか。

 昭恵夫人は原発に反対するなど「家庭内野党」だ、と雑誌の対談記事で冗談を言われたことがあった。安倍首相は国内に原発を置くことはともかく、さすがに原発輸出は強弁だと気づいていたのだろう。同じ反論でも迫力は感じられなかった。
 安倍首相の右寄りの考えをくすぐらんとした靖国神社の英霊発言は、本人には通用しなかったのに、私はネトウヨ(ネット右翼)の標的にされてしまった。

<STOP!TPPネクタイで篠原ワールドが出来上がる>
13年10月21日 予算委
篠原...皆さんこのネクタイご覧いただけますでしょうか。「STOP!TPP」と書いてあるんです。これは総理、ご存知だと思います。全国的に使われているわけではないんです。山口県農協中央会が、えんじと紺の2セットを作っています。

 質問の終了後、安倍首相が近寄ってきてネクタイ論議。「野党議員なのに、安倍首相と馴れ馴れしいのは問題」と一部の視聴者からお叱りを受ける。しかし、私が6年間ずっと着用し続けた「反TPPバッジ」と「STOP!TPPネクタイ」を、水戸黄門の印籠よろしく晒した時に大爆笑が生じたことは間違いない。
 この時の同僚から、「順番を篠原さんの質問の後にするのはやめてほしい。完全に篠原ワールドが出来上がってしまっていて、普通の質問がしにくい」との苦情が出されていたことを知った。 

<慢心なくして、あと数年間政権を担ってほしい。民主党的総理になるな。>
2013年10月21日 予算委
篠原...総理がくるくるかわるのはよくないです。この次の総選挙ぐらいまで頑張っていただくというのが一番いいんです。絶対長くやっていただきたい。見ていますと、ちょっと慢心がおありになるような気がする。我が党の三年間、それが過ぎたようです。総理がそういうふうな民主党的な総理に絶対なられないことをお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。(時間切れで答弁なし)

 私には第二次安倍政権は07年の屈辱を胸に反省し、同じ失敗をすることなく長期政権になるであろうことが予測できた。1年交代の首相では世界に通用しないので、長く続けてもらいたいと元気づけると同時に、世論受けを狙う「民主党的な総理」になるなとアドバイスをしただけである。これに対して、野党第一党の議員なのになんだと同僚議員から批判された。

 1  |  2  | All pages