集団洗脳のおそろしさ

 昨12月9日、日本はイラクへの自衛隊の派遣を決めた。国民の多くが疑問を呈している中での、小泉政権の決断である。この判断の正否は、今のところはわからない。私は、何10年かあとに歴史が教えてくれる以外にないと思っている。

  例えば、満蒙開拓や満州国の建設である。我々の身近からも開拓団が派遣され、私の祖母の兄、桜井万次郎(私のまた従兄弟、桜井純氏の祖父)は、茨城県内原で訓練を受けた後、下高井郡の満蒙開拓団長として乗り込んだ。しかし、桜井万次郎は、現地で結核にかかり、石もて追われて本国に帰らざるを得なかった。残った人たちは、その数ヵ月後のソ連の参戦により、集団自決の道を選ばざるを得ないという悲惨な結果となった。桜井は、その後96歳の天寿を全うした。この件は、もう一人の生き残りの高山すみ子著『ののさんになるんだよ』に詳しい。

 そもそも、他国に軍隊を送り、農民まで送り、五族共和と称していかがわしい国まで造ってしまうというのがおかしかったのである。ところが、日本国民は疑問を感ずることなく、積極的に参加した。今、小学生でも高学年なら、他国に勝手に農民を送り込んで、その国の農民の土地を取り上げて植民地を作ることなど許されないというであろう。ところが、数10年前に、そういうことを、指摘出来た人は皆無に近い。

 日本は国連を脱退し、今、思えば、危険でよからぬ方向に突き進んでしまった。つまり、かつての日本は、北朝鮮以上のならず者国家だったのだ。イスラム過激派のリーダーが「自爆テロは神風に学んだ」と言ったという新聞記事を読むに至り背筋が寒くなった。

 我々は、いつでも確かな目を持たねばならない。私は、社会人になってから、戦前の日本国民のほとんどが政府広報等により、いわばマインドコントロールされている中で、満州への進出に異を唱え、決然と発言していた人がいたことを知った。

 議会で、粛軍演説して除名になった斎藤隆夫であり、言論界の石橋湛山である。私は、二人に目を開かされ、湛山の「小日本主義」にならい『農的小日本主義の勧め』(1985年初版、1995年創森社から復刊)を上梓した。

 2003年11月、図らずも、私も政治の道を歩むこととなった。

 自衛隊の復興支援というあいまいな日本語でごまかしても、世界は、軍隊の派兵ないし出兵としかみていない。その前に、自由貿易と称して外国に経済進出し、経済大日本主義を当然のこととしている。外国の資源は、まず、その国の人たちが豊かになるために使われるべきであり、一人、日本がちょっと資金力、技術力があるからといって持ち去り、製品を作って豊かになっていいものではない。 いつか、こうしたことが全面否定される時が来るかもしれないことも、誰もがあまり心配していない。 私は、政治家の第一歩を歩み始めるに当たり、二人のように、世論にもおもねることなく、自らの正しい道を歩みたいと願っている。

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