本会議場演壇席に立つ!!

【突然決まった趣旨説明】

4月8日に国会議員となって初めて、衆議院の本会議場演壇席に立つ機会に恵まれました。 前日の7日まで、年金制度改革の審議をめぐって、与党自民・公明両党は強引ともいえる審議を行なったため、民主党は審議拒否を続けていました。しかし同日夕方、与野党の合意が成り、翌8日から国会審議が正常化されることになりました。

民主党の年金制度の対案が9日の本会議で提出されることが決まり、空いたその前日8日に農協法の一部改正案および、鳥インフルエンザ対策としての家畜伝染予防法の改正案(政府提出、以下「家伝法」)の提案理由説明と質問が行なわれることになりました。民主党は、鳥インフルエンザ対策に関しては家畜伝染予防法の改正だけでは不十分であるとして、対案となる「高病原性鳥インフルエンザ対策緊急措置法」(以下「緊急措置法」)を政府より先に提出していましたので、その提案理由説明および質問も行なうこととなりました。

国会では多くの法律案が審議されます。通常は各委員会でそれぞれ法案の趣旨説明・質問・採決が行なわれ、本会議にて最終的に採決が行なわれます。しかし、重要法案の場合はまず本会議で法案の趣旨説明と質問が行なわれ、その後委員会へと回されます。本会議に先にあげられた法案は、他の法案に優先して扱われます。従って当初予定されていなかった家伝法は他の法案より先に審議されるというメリットが生じます。対決法案である年金改革法案が典型です。 農林水産委員会に係る10本余りの法案では農協法と家伝法改正案とその対案である、民主党の「緊急措置法」のみです。 7日にいきなり、山田正彦NC農林水産総括副大臣から明日の本会議で「緊急措置法」の趣旨説明を行なってほしい旨依頼がありました。農業再生プランで、てんてこ舞いの毎日ですが、お受けしました。

【突貫工事での準備】

趣旨説明は翌日の昼間です。一日で準備を進めなければなりません。夜にあった会合もそこそこに抜け出し、会館事務所に戻り準備を始めました。初めてのことなので、流儀がわからず時間だけはかかりました。 これまで本会議での法案趣旨説明は大臣が原稿を淡々と読むだけのものでしたが、私は原稿を見ずにやることにしました。自分で作った法案ですし、いつもの自分の考えを付け加えるだけですので簡単です。

議院運営委員会の藤村修筆頭理事から時間は3分以内でお願いしますと言われ(後にこれはさる議員からの要請に基づくものだったことが判明)、多少時間は押すものの、夜12時近くになって準備が整いました。

【代議士会での激励】

本会議(大体午後1時開始)の前12:40から開かれる民主党代議士会(全衆議院議員が参加)で、関係者が決意表明をします。「民主党が政権をとった時の農林水産大臣のつもり、すなわちバーチャル農林水産大臣として、法案の趣旨説明をする」と発言して、同僚議員から熱い拍手を送られながら、本会議に臨みました。 議場ではひな壇に向かって右側(通常は副総理格の大臣席)に腰掛けて、出番を待ちました。

先に、農協法と家伝法の改正案についての趣旨説明(亀井農林水産大臣)がありました。その後、議長の「提出者篠原孝君」との掛け声がかかりました。私は椅子から立ち上がり、同僚議員の拍手の中、議長や亀井大臣に一礼をして、演壇に立ちました。

【非難の嵐の中での趣旨説明】

壇上に立つと「よっバーチャル大臣!!」と、応援の掛け声がかかりました。 冒頭の定型的な切り出しの後、「人間に例えるならば、皆さんの議場のスペースでえさを一生食べ続け、ひたすら太るか卵を産む一生でございます。まあ、食い意地の張った怠け者には非常にすばらしい一生かもしれませんけれども、一般的に考えますと、哀れな一生涯ではないかと思います。非常に非人間的、あるいは非鶏道的な飼い方ではないかと思います。」

私は少々冗談もまじえて説明し始めました。法案の趣旨説明は本来粛々とした中で進められるのが通常です(現に亀井大臣の趣旨説明は静かに行なわれました)。

しかし、私が説明を始めると、自民党議員から猛烈な野次や罵声が飛び出しました。 動画でご覧いただくと、そうした野次は聞こえませんが、私の秘書二人が自民党側の3階の傍聴席から本会議を傍聴していましたが、野次で私の趣旨説明が全く聞こえなかったそうです。

自民党からの野次と民主党からの拍手とで騒然とする中、議院運営委員が壇上に登り、相談を始めました。通常問題発言、答弁漏れ、時間オーバー等があると協議します。時間もいつのまにか5分になっていましたし、なぜかよく判りませんでした。

法案の説明事項を(1)内閣総理大臣を本部長とする緊急対策本部の設置、(2)生産者の損失を全額補償の2点について説明して少々省いて最後に以下のように切り上げて趣旨説明を終えました。

「最後に、我々は、畜産の根本的問題を解決しなければなりません。そのためには、加工畜産から脱却し、人間も自然の一部であるということを認識し、環境保全型農業を推進し、地産地消、旬産旬消をもとにした食生活が復活することを願って、私の提案理由説明と致します。議員各位の御審議と御賛同をよろしくお願い致します。」

議場と議長に一礼して壇上を降りました。

【野次の真相】

今回の趣旨説明では、なぜかしら自民党から「謝れ」「謝罪しろ」という野次の嵐でした。後でわかったことですが、(1)長らく審議拒否していた民主党の最初の登壇者なのでまずそれを詫びてから話を始めろという趣旨だったようです。それに加えて(2)私が一回生議員なのに生意気にも原稿なしでやっているので、野次で騒然とさせて困らせてやろうという魂胆も加わったようです。

(1)は何も私が、代表して謝る必要はないですが、どうやら原稿を丸暗記して趣旨説明をやった私の行為が慣例に反すると問題にされかかったようです。提案理由説明は原稿を持って行なえとはどこの法規にも書いていなく、何もお咎めは受けませんでした。私が日本の加工畜産を問題視したことに対し、「農水省にいたんだろっ、お前が謝れ!!」という野次には少々耳を傾けました。

民主党は対案を出すことが多くなりました。それが重要法案として本会議で提案理由説明を行なうということもそれほどありません。その意味では、年金法審議の与野党の駆け引きの中で、瓢箪から駒で生まれたものですが、大変よい機会だったと思います。民主党は新人に代表質問の機会を意識的に与えていますが、議員提案の理由説明などは多分当分回ってこないと思います。

同僚議員からはなかなかだったと誉められましたが、農林水産省出身の先輩議員からは「おまえ疲れてたんじゃないか」という厳しい指摘がありました。事実バテ気味でした。それから先輩議員からは「やはり原稿を読んだほうがいい。」というもっともな注意も受けました。

私の提案理由説明は、衆議院のホームページから動画で見られますので、そちらをご覧いただき(野次などはあまり聞こえないのですが)、ご意見をたまわればと思います。



戻 る