年金問題と民主党、そして私の見解

大荒れの年金法審議

4月上旬の年金法をめぐる衆議院での審議ストップは、4月8日(木)の民主党の対案提出をもって再開されました。再開直後の本会議で、私が「高病原性鳥インフルエンザ対策緊急措置法案」の提案理由説明に登壇したとき、自民党席からはヤジの嵐だったことは、先にホームページでもご紹介したとおりです。  その後も、中旬には日歯連の疑惑や、閣僚の年金未納問題による大混乱のため、たった17時間しか審議されず、公聴会も開かれていないにもかかわらず、政府の年金法案は、28日(水)、衆議院厚生労働委員会で野党退席中に強行採決し可決されてしまいました。

年金法を通すまで与党は未納隠し

4月23日(木)に3閣僚(石破、麻生、中川)が未納を公表した後、政府・自民党は、全閣僚の納付状況を26日に公表すると約束しました。しかし、26日(月)になると「民主党の『次の内閣』も対抗法案を提出しているので同じく公表を」と要求して、自民党は自らの公表を先送りしました。さらに27日(火)には、福田官房長官が、「個人情報だ」と公表を拒否しました。ずるい自民党の常套手段です。

28日(水)、民主党は『次の内閣』の閣僚の年金納付状況を公表しました。

私は、自民党の手練手管に翻弄される若手執行部に苛立ちを感じました。『次の内閣』では、菅代表ただ1人が厚生大臣在任中の10ヶ月間が未納となっていました(この期間については、辞任表明した後の5月14日、社会保険庁が誤りを認め、脱退手続きを取り消したため、菅代表の未納はなくなっています)。今考えると、自民党側は、こちら側の不備をすべて承知していたのだと思います。民主党も菅代表も自らの脇の甘さをつかれました。

自民党は、政府の年金法案を強行採決し、28日の夕方になって、福田官房長官の他追加の3閣僚(谷垣、竹中、茂木)の未納を公表しました。4閣僚が未納だったことは何日も前からわかっていたのに、年金法を通すため隠していたのです。隠蔽体質も極まれりであり、許しがたいことです。

菅代表の予期せぬ落とし穴

年金問題で大荒れの中、私は、4月26日(月)、菅代表に完成間近の『農林漁業再生プラン』の説明を行いました。また、4月27日(火)には、農林漁業再生本部で小沢代表代行の農業観を聞く会を開き、数十名の議員と菅代表も出席しました。小沢代表代行は民主党の会合にあまり来られないため、菅代表と小沢代表代行が1時間も隣に並んで座っていたのは、珍しいことでした。このころ、まさか未納問題に巻き込まれるとは思ってもいなかった菅代表には、余裕が感じられました。菅代表は、帰国後直ちに農林漁業再生プランを引っさげて1人区を飛び回ることになっていたからです。

28日(水)に民主党が『次の内閣』閣僚の年金加入状況の調査結果を公表しました。ただ1人菅代表(総理)だけに未納期間がありました。前後の期間は国民年金に加入しているのに、厚生大臣在任中だけ脱退し、未納となっていたのです。菅代表は代議士会で、「役所のミスだ」と怒っていましたが、私は菅代表の怒りはもっともだと思いました。少なくとも10ヵ月後に再加入するときには、間違って未加入だと伝えてしかるべきです。

このころの未納議員で、(1)一番悪いのは、年金法を通すため、自分の未納を既に知っていながら、わざと嘘をついていた福田官房長官だと思います。(2)次は、国会議員に加入義務が生じた86年以降も加入していなかったルール違反の議員です。(3)大臣等の在任中だけ共済加入と勘違いしてという議員は、後でも述べますが、複雑な制度故に許される面もあると思います。

菅代表を救う道

私は、28日(水)の夕方の代議士会での菅代表の弁明の後、これは必ず政局になると直感しました。ひょっとして菅代表の退陣になるかもしれないと心配になりました。それでは菅代表とともにスタートした農林漁業再生プランの価値も下がり、参院選の1人区での戦いに支障をきたします。私は、ベストの解決方法を考えました。

  1. 29日(木)に成田空港で、「国民に重大な不信を招いたので、帰国後、出処進退を明らかにする」と発表して訪欧に発つ。日本向けには明らかに辞任もありという表明をする。
  2. 先手を打って7閣僚に辞任を迫ることになり、小泉内閣にそれなりの揺さぶりをかけられる。でたらめな年金法を廃案に持ち込むことも可能。
  3. 本当は、外遊を取りやめてもよいが、アポイントを取った相手国に迷惑がかかるので、あくまで現職の最大野党党首のままで行く(私は俄か外交官の頃、せっかくとったアポイントを突然キャンセルされて困りました)。
  4. 党代表を続けるためにこそ、ここで一旦身を引く必要がある。福田辞任なりに追い込めば、再選は確実になる。

北沢さんの進言

29日、私は、海野参議院議員の選挙の応援で静岡に行っていました。菅代表の携帯番号もわかっているので、直接電話しようと思いましたが、私としては珍しく躊躇して思いとどまりました。いくら親しくなっているとはいえ1年生議員が代表の座を退くように進言するのはあまりに尊大、のぼせ上がりすぎととられかねないからです。

そこで、まず、こういう件の指南役の北沢俊美参議院議員に電話して頼みました。北沢さんは、羽田さんと相談すると深刻に受け止めました。次に平野達男参議院議員から荒井聡役員室長の電話番号を聞き出して電話し、役員室長から間接的に伝えてもらおうとしました。しかし、さっぱり出ませんでした。それもそのはず、夜、テレビを見ると菅代表に随行していました。この電話を選挙カーに同情していた河村たかし衆議院議員が一部始終聞いていました。河村さんはそこでも「議員年金の廃止を菅代表に言え」と相変わらず議員年金ばかりでした。

5月1日(土)、北沢さんは、長野のメーデー会場で「自分は菅代表に辞めるよう進言する」と断言された由、これで動き出せばいいとほっとしました。

しかし、北沢さんや私の思いは菅代表には伝わらず、5月6日(木)、予定を早めて帰国したものの、7日(金)、福田官房長官が先に辞任し、菅代表も民主党も完全に窮地に陥ってしまいました。そして、いよいよ菅代表へのバッシングが強まってしまいました。

民主党の脆い体質(両院議員懇談会)

7日(金)と週明けの10日(月)、民主党両院議員懇談会が開かれ、年金改革3党合意について議論しました。手続き、内容ともに問題のある3党合意(腹立たしくて説明する気にもなれませんが、民・自・公が協議会を設けること等を内容とする、幹事長同士の合意です)については、いろいろ意見は出ましたが、執行部一任ということでおさまってしまいました。私は、ここでもこんな弱腰な合意をする党執行部にがっかりしました。国民の声も知らず、国会運営や政治手腕も未熟そのものとしか言いようがありません。菅代表の未納隠しなり延命のための妥協と受け取れられてもしかたがありません。

両院議員懇談会で感心したのは、石井一、西岡武夫、中井洽、渡辺秀央議員らのひな壇の2列目(副代表クラス)に座っている当選7~8回のベテラン議員たちです。民主党は、所属議員も執行部も若さが売り物という面がありますが、前列よりも後ろのほうが、立派な意見を述べていました。

石井さんの「鳩山代表の時と同じように、また引きずり降ろすのか。今頃辞めても役に立たない。こんなことはすべきでない。自民党に対して政権をとることを考えるべきだ」(7日)とか、西岡さんの「反転攻勢に出て、未納議員に罰金も含めて支払わせ、年金の加入歴を記した回答票を出すように自・公に突きつけるべきだ」(10日)という意見はまさにそのとおり膝を打ちました。民主党は、副代表クラスの人たちが党の要職についていなくてはだめだと思いました。(岡田新体制は、これに懲りたのか、藤井幹事長という重石がつき、ほっとしました。)

それにしても思い出すのは、1週間は粘りつづける今はなき米価決定の際の議論です。自民党の粘りに比べ、民主党は良くも悪くもあっさりしています。農林水産大臣としても米価決定の場を経験していた鹿野道彦議員も同意見でした。民主党で、米価を経験しているのは、羽田、鹿野、西岡、石井の旧自民党の議員、そして、行政側で参加していた私の5人ぐらいです。これまた手前味噌になりますが、ひょっとすると私のほうが当選3〜4回の議員よりも政治の現場なり土壇場のかけひきを経験しているのかもしれません。

菅代表へ宛てたメモ

私は、また一つ余計なことをしました。

5月7日(金)、両院議員懇談会で三党合意の是非が議論されました。しかし、背後には菅代表の未納問題、そして出所進退問題がありました。私は、前述のとおり、手続き、内容とも全く承服できませんでしたが、発言は控えました。菅代表に辞めろということに対しては不快感を覚えました。ここは、ドジをした執行部だけれども仲間であり任すしかないのです。その流れにならなかったら発言するつもりでしたが、大体その流れになりました。

私は、この福田官房長官に先を越された今になって辞めても無様すぎるので、ここは黙って凌ぐ以外にないと考えました。そして、辞めずに耐えるべしとの意を某側近に伝えたところ、「本人に直接言ってよ」と言われ菅代表の部屋に行きました。本人は出かけた後でした。政治の世界も冷たい人が多いようで、誰も来ていませんでした。

私は、持っていたノートの切れ端で3項目のメモを残しました。

  1. 絶対辞めるべきではない。(辞めるならもっと前)
  2. 小泉首相にも何かおかしなことはあるはずなので、年金の回答票を出させることを要求して待つ。
  3. 未納の元凶の一つである議員年金廃止法案を出して参院選を戦う。

しかし、菅代表は、8日(土)、9日(日)とTVに出ずっぱりで三党合意の説明をし、辞任を迫られるという変なことになってしまいました。

菅代表の引き際

10日の懇談会では、冒頭、菅代表が混乱の責任をとって辞意を表明しました。私が身近で政治家トップの思わぬ退陣劇に接したのは2度目です。内閣総合安全保障閣僚会議担当室に勤めていたとき、鈴木善幸総理の突然の鮮やかな退陣が一つ。そして今回です。

別掲しますが、私は農林漁業再生プラン作りに心血を注いでいました。菅代表は農林漁業再生プランを引っさげて1人区でより多くの議席を得て、秋の代表戦で再選、次の総選挙での政権交代を頭に描いていました。私も必死でそれを支えようと時間を割いてきました。その意味で、ひょっとすると私は菅代表以上に菅代表の行く末を案じていたかもしれません。一歩引いてみているが故に、ことの重大性を感じることができたような気がします。

菅さんは、相手を攻撃することが得意です。「未納3兄弟」「やるやる詐欺」とよく言葉が出てくると感心します。しかし、その得意な弁舌で墓穴を掘ってしまった感があります。そばで見ていてまずいと感じたのは、回りに菅代表にきちんとアドバイスするベテランがいなかったことです。自ら任命した若手執行部が菅代表を支えきれなかったとしか言いようがありません。

私は、訪米欧直前に余裕しゃくしゃく、農政問題の勉強をする、いわば絶頂期の菅代表を間近で見、そして十日後の変わり果てた姿を目の当たりにしました。「政界は一寸先は闇」を地でいく展開になってしまいました。

私は、10日、隅のほうで議論を聞きながら、菅代表の心中を思い、目に涙がこぼれました。いつか復活の日が来るのを願わずにはおれません。

複雑な制度が手続きミスの一因

国家公務員は、年金、健康保険とも、共済に加入しますが、国家公務員特別職の大臣等は、健康保険のみ共済に加入し、年金は国民年金のまま(営利企業役員は兼職禁止なので、厚生年金だった人も退職して国民年金に入る)ということになっています。ちなみに、国とは違い、知事・市町村長等の地方自治体の首長は年金も共済に加入します。多分、直接選挙で選ばれ、専業でやるからです。それに対し、大臣は大半が国会議員から選ばれ、任期も1年か2年くらいですから、議員年金と重複するというので、健康保険のみの加入なのでしょう。もっとも、これは、国会議員が国民年金へ加入できなかったころは、この制度でいいのかもしれませんが、任意加入となった80年4月から、遅くとも強制加入となった86年4月からは、健康保険と同様、年金も共済に加入するよう制度を変えておくべきだったと思います。

自民党にも、大臣や副大臣等になった時だけが未納という議員が何人もいました。民主党の鹿野NC農水大臣は閣僚経験者でしたが、そのようなミスがありませんでした。鹿野さんに尋ねると、対応した市役所の職員が制度を理解していたからということでした。逆にいうと他の未納閣僚の場合は、市町村役場の職員が制度を理解していなかったのです。

確かに、忙しい議員自ら手続きをすることはありません。秘書や家族まかせです。誰かが気付けばミスは防げるわけですが、やはり、これは、手続きの際、窓口の職員がどういう原因で年金を移るのか確認し、適切な対応をするべきだろうと思います。しかし、菅代表の場合のように、市役所や社会保険事務所の担当者でさえ、この複雑な制度を理解しておらず、ミスをおかしてしまったということです。このような欠陥だらけの制度自体をわかりやすいものに変えなくてはなりません。バラバラな制度といい、グリーンピアに代表される無駄遣いといい、年金の仕組みは杜撰そのものです。何よりも国民の大切なお金をそれこそいい加減に扱っていることに怒りを覚えます。こんな欠陥法案は、絶対に認めるわけにはいきません。

私の年金手続き

私は、去年の9月17日、30年余り勤めた農林水産省を退職しました。9月下旬、長野1区からの出馬のために、実家の中野市に住民票を移した際、国民年金の加入手続きもしました。中野市役所での手続きは、忙しい私に代わって弟がしてくれました。市役所から社会保険庁へは自動的に連絡されるので、国民年金の加入手続きはこれで完了という説明でした。

選挙活動で慌しくしていたため、全く気が付かなかったのですが、国民年金に加入はしたものの、その後、社会保険事務所からは何の通知もありませんでした。2月に確定申告の準備をするにあたり、妻から国民年金保険料の支払い証明書が必要だと言われました。妻は子どもの学校の関係で東京に住民票があり、自分の国民年金は、区役所での手続きをした後、社会保険事務所から送られてきた納付書で支払っていたというのです。

ところが、私の中野の実家には、納付書も何も届いていなかったため、中野市役所に納付書が届いていない理由を確認したところ、市役所の記録では確かに9月に国民年金に加入しているとのことでしたが、社会保険事務所での入力もれのため、納付書が発行されていなかったとのことでした。すぐに、9月分からの納付書が送られてきて、支払いをすませたため、未納には至りませんでした。まさか、その2ヶ月後、国民年金の未納騒動が起こることなど知る由もありませんでしたが、そのまま、気付かずにいて、市役所に確認しなかったら私も数ヶ月未納となっていたはずです。ただ、2年間はさかのぼって納付できますので未納にはなりません。公明党の議員の中に、納付書が送られてこなかったため未納になったというケース(この場合は、おとがめなし)がありましたが、このようなミスも結構あるのだと感じました。

確定申告には、生命保険料控除や医療費控除と同様に、国民年金保険料も支払い証明書が必要と思っていましたが、その後、江角マキコさんの未納のニュースの際に、国民年金保険料の支払い証明書は不要だったということを知りました。これでは、未納者へも税金の控除をすることになってしまうのではないでしょうか。

年金の必要性を感じない金持ち(?)議員

その後、5月10日(月)には、社会党の土井前党首が未納を公表しました。地方自治体の首長の未納も次々と明らかになってきました。

11日(火)の衆議院本会議で年金法案が通過したのを見届けて、12日(水)、公明党の神崎代表が未納を公表しました。さんざん菅代表を攻撃したのに「譴責処分」とやらでお茶を濁して居座りました。さすがしぶとい対応です。更に、年金法案を提出した厚生労働副大臣の2人(森、谷畑)や衛藤厚生労働委員長までが未納でした。よくもこんなにしらばっくれていられると感心します。誠実さのかけらもみられません。

腹立たしいことに、菅代表に社会保険庁から不備を認める文書が届きました。代表を辞める必要などなかったのです。公明党の処分基準からすると「譴責処分」ですむ話でした。しかし、すべて後の祭りです。

5月13日、民主党は、所属全議員の納付状況を公表しました。244人中33人に未納期間がありました。他の年金からの切り替え忘れもありますが、特徴的なのが、私の親しい友人2人を含む5人もの弁護士議員が未加入でした。高収入で定年もなく、辞めても全く困らない人は、年金などあてにしていないための未加入ということなのでしょう。

他党や地方自治体の首長や議員の未納も次々に明らかになっています。他の仕事を経験していない政治家の未加入も目立ちます。年金問題を議論していながら、自分の年金には無関心だったということです。必要性を感じないからかもしれません。

自民党は、未だに全議員の納付状況の公表を拒否しています。ここまで来ると今や、年金改革を行う国会議員への国民の信頼は、崩れてしまった感があります。

総理にあるまじき詭弁と破廉恥な開き直り

そして、予想どおり14日(金)、小泉総理が、唐突な北朝鮮訪問の発表にまぎれて、翌週の週刊ポストに掲載されるに及んだ自分の年金未加入を公表しました。それまでに、何度も問いただされていながら「未納はない」と答えていたのに、「加入していない時の未納はないということだ、未加入と未納は違う」とまさに詭弁を弄して開き直ったのです。確かに、国会議員になる前の未加入を問われるのもかわいそうな気がします。また、勉強に専念しなければならない予備校生が国民年金の加入義務があり、大学生は義務がないという制度もおかしいでしょう(結局小泉首相が未加入だった期間も大学生だったことが後に判明)。

しかし、小泉首相の対応は、これまで「未納はなかった」と言っておきながら後になって釈明している点で許しがたいことです。一国の宰相が詭弁を弄して開き直るなど、言語道断です。さらには、小泉首相には民間の不動産会社の社員として勤務実態が全くないのに厚生年金に加入していた問題も発覚しました。これに対しても、小泉首相は「(不動産会社の)社長からは『あんたの仕事は次の選挙に受かることだ』と言われた」、「会社には出社していなかった」と平然と開き直る始末です。政治家の中には民間会社に籍がありながら勤務実態がないため、離党した人もいたことを考えれば、これもあまりに軽い発言と言わざるを得ません。

自民党小泉政権は、政権に長く安住しすぎ、感覚が麻痺してしまったようです。もう政権から降りてもらわねばなりません。

未納国会議員のけじめ

私は、まず、すべての議員が社会保険庁の証明書をつけて、年金保険料の納付状況を公表し、その上で、未納のある議員には追徴金を払わせるのがよいと考えます。年金の相互扶助の義務については、どんなに遅くなっても果たさなくてはならないからです。これは、未納の保険料分の金額は払うが保険料支払いとカウントしない、支払い分は控除の対象としない、つまり、罰金として懲罰的に支払うだけという法律を議員立法で作れば可能です。びっくりしましたが、参議院で平野さんと西岡さんが同じ議案を作ってくれていました。私はこれを『未納国会議員懲罰支払い法案』と名づけ、いつも仕事が一緒の2人の未納弁護士議員を冷やかしながら、「自らの責任で速く立法化すべし」とけしかけました。衆議院の厚生労働委員会の理事、NC厚生労働大臣等の関係者に根回ししましたが一向に日の目を見ませんでした。しかし、やっと参議院で法案提出ができ、拍手喝采しています。もっと早く行動をすべきなのです。

年金改革では、国民が信頼できる、公平で透明性のある年金制度を作ってゆかなくてはなりません。議員年金廃止を訴えている河村さんは、「議員年金をなくして国民年金だけにすれば、国会議員も年金問題に真剣に取り組むようになる」と言っていますが、自分が経験した痛みしかわからないのでは、政治家としては失格です。あらゆる人の立場になって考えることができなければ、政治家は務まりません。議員年金の廃止も必要ですが、それより先に未納国会議員のけじめが必要です。いま、自民党が国民一般の未納解消の法案を出しつつありますが、その前にまず、国会議員がいわば責任をとり落とし前をつける必要があります。

将来を見据えた年金改革

現在の年金制度は、出生率の高い経済成長期に作られました。大勢の勤労者で、少ない高齢者を支えるようにできているのです。しかし、今や、少子高齢化で、安定成長というかマイナス成長ともいえる時代です。少々手直ししたところで、早晩この年金制度は破綻してしまいます。問題先送りの政府案ではなく、これからの時代に合った年金制度に根本的に変えなくてはならないのです。

国民保険料の未納率が37.2%と急増しています。今の年金制度に不安があるのも一因ですが、保険料の徴収方法にも問題があります。社会保険事務所と税務署も一元化し、基礎年金については、税金と同じ扱いにするべきです。

消費税を財源とする案については、増税だとか、低所得者層の負担が増えると反対する人がいますが、現在の国民年金保険料は、1人1ヶ月13,300円で、所得にかかわらず、すべての加入者が同額を負担しています。総理府の家計調査によると、平成16年度の全世帯平均の消費支出は、304,085円/世帯・月(世帯人数3.2人)ですので、年金加入者が2人いると仮定すると、2人分の保険料26,600円は消費税率8.7%に相当します。これは全世帯平均ですので、消費支出の少ない世帯はもっと税率が高くなっていることになります。

消費税等の税方式にすると、定額の保険料を払わなくてもいいので、低所得者層の負担は少なくなり、すべての国民に年金をという国民年金法の目的にかないます。

基礎年金では少ないという人のために、2階部分として、例えば保険料1万円から10万円の5コースに分かれた年金をつくります。コースは各人が選び、途中で変更できるようにし、自分が通算で支払った保険料に応じた年金を受け取るようにします。自営業者の所得の捕捉はできないと言われますが、納税者背番号制などを待っていたら、いつまでたっても厚生年金と国民年金の一元化などできません。そこで、所得比例方式ではなく、自分で金額を選ぶ積み立て方式を加味したらよいような気がします。

政権交代のためには政局よりも政策を

そもそも年金改革の民主党の対案作りが遅れたのは、厚生労働省や財務省が明らかにしないので数字が入らないという理由でした。民主党は、脱官僚で、自分たちで政策立案を行うといっているものの、それぞれの分野のプロがいないということです。こうした中で、農林漁業再生プランは、再生プランプロジェクトチームが独自に作り上げています。

自民党の故山中貞則さんは税や畜産行政のプロで、三塚博さんは国鉄改革のプロでした。残念ながら、民主党には同じようなプロはあまり見受けられません。族議員というのではありませんが、地道に年金や農政の勉強をする議員が少ないように見受けられます。

私は、5月の連休中、毎日、議員会館に来て農林漁業再生プランを作成していました。役人時代、海外出張で連休がつぶれたことは何度かありましたが、日本にいてこんなに仕事をしたことはありません。同僚議員が「政局」に熱中している時も、私はずっと「政策」をやっていて、農林漁業再生プランを農林水産部門会議で了解を取り付けた13日(金)の夜になってやっと「政局」の会合に参加しました。その時は、小沢さんに流れが決まっていました。

民主党の若手の政治家は、「ドタバタ政局」なんかではなく「政策」に取り組むべきです。全体でみると自民党よりは、政策能力はあるかもしれませんが、個々の分野に専門家は少なく、こんなことでは、政権をとったときが思いやられます。「脱官僚」などといってはいても官僚を牛耳れる政策通がいなくては政権運営ができません。

代表のつまずき、代表選びの混乱と民主党もまだまだ未熟な政党です。今度は、『民主党再生プラン』作りが必要かもしれません。

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