土建国家日本の凋落

ここに厳然たる数字がある。日本の戦後を象徴する数字である。

1960年農林業1300万戸建設業250万人
1980年530万戸550万人
2003年270万戸600万人(55万社)

つまり、農業就業人口が減り、その分建設業従事者が増えたということである。

今は昔となった日本列島改造論がこれに拍車をかけた。

新幹線ができ、高速道路網も整い、あちこちにコンクリートの建物が乱立した。この状態がいつまで続くのかと私は疑問に思い続けた。しかし大半の人は、高度経済成長時代ほどでなくとも、そこそこの成長が続くものと思っていたに違いない。

ところが、やはりそうは問屋が卸さなかった。バブル経済の崩壊であり、狂乱地価の大幅な下落、大量の不良債権、そしてトンネルを抜け出せない不況である。預金金利がゼロに近い時代など誰が予測しただろうか。

建設業界は、銀行・流通業界とともにバブル経済崩壊の大波を受けることになった。

なかには、いつか昔の夢よもう一度と甘い期待を抱いている人がいるかもしれないが、まずなかろう。つまり、今のほうが正常なのである。建設業界の規模は何分の1かに縮小せねばならない。かつて農業が縮小したのと同じように。

そして、その代わりに人々が意を尽くすべきことは、人がらみの仕事である。介護、福祉、教育といった分野であろう。より建設業に近い分野でいえば自然環境回復のための仕事であり、第一次産業である。

民主党は昨年の参院選に向けて「農林漁業再生プラン」を作成して、政権交代後の農政ビジョンを訴えた。その中に遊休農地の有効活用、自給率向上のため、株式会社にも農業への参入を許すべきだという考えが入っている。問題のある農地の所有権は、第2のバブルにつながる怖れ、すなわち農地として保有して地価の吊り上げにつながる怖れがあるので認めないものの、利用権は認め、積極的に農業に参入してもらおうというものである。

どのような企業がふさわしいか考えてみると、地元の建設業者が1番だということが見えてくる。建設業者には地元の事情に通じている。従業員は兼業農家が多く再訓練の必要はない。ブルドーザー、ホッパートラック等共通の設備が多い。経営感覚のある者が多いので、大儲けはできなくとも継続的に仕事がある等の有利な側面がある。

既に多くの建設業者が農業に参入している。優良事例を見るとまず社長が地元活性化に貢献するという理念を持っていること、従業員を雇用し続けられればよいという、地道な経営に徹していることなど共通点が多い。長野県からもっともっと意欲的な優良事例が出てくることを希っている。

戻 る