産廃残土とゴミマイレージ

衆議院議員 篠原孝

私は数年前から、フード・マイレージという概念を持ち出し、自由貿易に対するアンチ・テーゼとして使っている。つまり、地球環境にやさしい生き方が必要とされている今は、食べ物の輸送距離をなるべく少なくして、炭酸ガス(CO2)の発生を抑えるべきだという挑戦的概念である。これは、ウッド・マイレージ(木材)、グッズ・マイレージ(物全体)と広げて考えることができるが、食べ物は安全性や新鮮さ、おいしさ等のことを考えると、まさに輸送距離は少ないほうがよく、そこでできたものをそこで食べる地産地消が一番いいことになる。おわかりと思うが、Food.Wood.Goodsと英語ではまさに同じようなスペルと発音なのだ。

循環社会の実現には、ありとあらゆる輸送に伴う汚染を少なくする必要がある。そんな理想的なことを言ってもと悲観的に考える人が多いが、私の描く理想社会は、石油がなくなり、石油価格が今の数倍になれば大量輸送は採算が合わなくなり、一挙に具現するかもしれないのだ。

輸送コストを下げる努力は廃棄物や産廃残土にこそ必要であり、業界はみにくい動きを見せている。所沢産廃銀座は、都市近郊で平地林が残っていた地域が狙われたからなのだ。つまり、ゴミ・マイレージを少なくしたかったのだ。柳沢吉保の三富新田に代表されるように、2haの平地林が各農家の3〜5haの農地に付随している。農地と違って山林は相続税が地価評価そのままで課税される。数千万円も払えるわけがなく、相続時に大金を持った産廃業者の手に渡った。林の周りからは相当悪いことをしても何ら見えることはない。輸送コストも少なくて済む。そして、例のダイオキシン問題が発生した。

また、今新たな問題になっているのが千葉県の産廃残土の問題である。同じく東京近郊の神奈川や埼玉と2桁も違う大量の産廃残土が田畑を埋め、高く積まれている。農地制度は同じなのになぜ千葉に集中するのか、いまだ定かではない。他県と比べ農業委員会による農地規制が弱いのかもしれない。道路が整備されて残土を運びやすいのかもしれない。千葉県は「千産千消」という標語を作り、地元農産物の消費拡大に力を入れている。しかし、その動きに水を差さないためにも、産廃残土を何とかしなければなるまい。

建設業界が率先して解決しなければならない問題である。

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