郵政国会政局

7月6日、いよいよ郵政民営化法案の本会議採決を迎えました。

前日5日に、郵政特別委員会で採決が行われましたが、事前に自民党内の反対派の委員は、賛成は委員に差替え(メンバー交替)させられていたので、与党賛成多数で通過しました。

しかし、全議員の投票する本会議では、予断を許さない状況のようでした。民主党は竹中郵政担当大臣の不信任案を提出を検討していましたが、自民党の郵政民営化反対派議員が不信任に賛成してしまうと、民営化に対する態度が明らかになってしまい、切り崩される恐れがあるので、今回は提出を見送りました。

13時の本会議前、民主党の代議士会では「しっかり反対をしていこう」と確認するのみでいつもより早く本会議場に入りましたが、自民党の議員はなかなか姿を現しません。相当混乱していたようです。

何とか定刻どおり本会議は始まり、各党の賛否の討論が始まりました。民主党を代表して登壇した伊藤忠治議員の演説に対して民主党からは大きな拍手が起こりましたが、自民党代表の山崎拓郵政特別委員会筆頭理事の演説に対しては、自民党議員からは賛成も野次もありません。息をひそめて採決を待っているような印象です。この瞬間もかなり賛否を悩んでいる議員も多くいたことでしょう。

そんな中、自民党の安倍幹事長代理が同じ森派の1回生議員で青票を投じると見られる城内実議員を呼び出し、議場の後ろで立ち話を始めました。これには議場が少し色めきました。城内議員だけでなく他の反対派議員へプレッシャーを与える意味もあったのかもしれません。

他にも反対を予想される能勢和子環境大臣政務官も3人くらいの議員に囲まれていました。

各党の討論が終わり、採決に向けて議場が閉鎖される直前、古賀誠元幹事長や高村正彦元外相等の大物議員や反対派の多い旧橋本派の小渕優子議員運営委員会委員が退席しました。合計14名が退席しました。反対だけど青票までは投じられないという、いわば正義と義理の合間に悩む人達です。

郵政民営化法案などの重要法案は記名採決で行われます。一人ひとりの議員の名前の入った札(賛成白票・反対青票)を壇上で渡していきます。

共産・社民・民主全員反対、公明全員賛成の中、自民党の投票が始まります。自民党の中から青票を投じた議員には野党席から喝采が上がり、法案に批判的だった議員が白票を投じると「裏切り者」と野次が飛びました。

採決の結果は賛成233票反対228票で、残念ながら僅か5票差で郵政民営化法案は衆議院を通過してしまいました。つまりあと3人が反対するか5人が退席していたら逆転していたということです。ハプニング解散と言われたこともありますが、政治の一つのドラマを見る思いでした。

地元で反対と大見得を切りながら、投じた票の違う議員も多くいました。9月の内閣改造で入閣という人参をぶら下げられたり、将来ある身だからと説得されたりした若手も多くいたようです。また、公認せずとか公明党が支援しないということに恐れたおののいた人も多かったようです。マスコミは反対者はもちろん反対していて賛成した者も名前を明らかにしています。

本会議後の岡田代表の記者会見では、賛成に転じた元反対派議員に対して「有権者がきちんと判断するだろう」と皮肉を述べていました。そんな中、身近な人では村井仁議員は当初、賛成派だったのが、自民党郵政事業改革特命委員長として議論する過程で法案の欠陥振りに気づき、反対に回り、筋を通し、青票を入れられていたのが、印象的でした。

近代的な電子投票にという人もいますが、私はやはり今の方式を支持します。政治家の信念がこうしたところに表れ、それを確認でき、また国民の眼の前にも明らかにする必要があるからです。

そもそも郵政問題に関しては350兆円余りの郵貯・簡保の資金の使い道等も問題視されていましたが、それ以上に市町村合併で村役場も廃止され、農協も撤退したような過疎地で郵便局までが消えてしまうことも大問題です。この点を委員会で指摘しようと、資料も揃えて準備していましたが、質問の機会は与えてもらえませんでした。

民主党は郵政問題に関しては、対案を出しませんでしたが、私は対立軸を明確にする為に現状の郵政公社の改革を進める対抗法案を作るべきではないかと、民主党内の同志と対策を考えていました。執行部は民主党内の意見の対立の表面化を恐れたようで、残念ながら受け入れられませんでした。

舞台はいよいよ参議院に移ります。参議院では18人の反対者が出れば法案は否決されます。衆議院での5票差が参議院中でどのように評価されるのか。ひょっとすると衆議院でも反対者が多かったことを受けて参議院の自民党が雪崩をうって反対に回るかもしれません。

その場合は、珍しく両院協議会が開かれ、衆議院の3分の2以上の賛成がないと法案が成立しませんが、それはとても無理です。だからといって、参議院の反対では解散もできず、法案は廃案になることが必至です。

このように揉めると、でたらめをし公約破りをしてきた小泉総理は初めて公約を果たすことになるかもしれません。

「自民党をぶっこわす」という公約を、です。

どうなるか、参議院の審議から眼を離せません。

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