郵政問題について

篠原 孝

もっと大事なことがある 国民は郵政問題に関心がない!!

各種世論調査においても、総選挙における国民の最大の関心事は「年金をはじめとする社会保障制度改革」であり、「郵政民営化」はわずか数%の関心しかありません。

小泉総理は自分の趣味を押し通し、郵政法案の可否だけで衆議院を解散しましたが、本来民意に問うというのであれば、昨年の「イラクへの自衛隊派遣」こそ国民に信を問う重要案件があったはずです。

小泉郵政オタク内閣が、自分の趣味を押し通した解散を行なったために、国費で700億円を浪費し、政治的な空白が生じることになってしまいました。

郵政問題の本質はなぜか触れられないまま

小泉総理は「郵政民営化は改革の本丸」と言います。しかし、郵政問題の本質は、郵貯・簡保で集められた350兆円のお金の使い途を改革すること、です。これまで350兆円のお金は、特殊法人など公的部門の非効率な分野・事業に流れ、ムダ遣いされてきました。

郵便局が株式会社になったからといって、こうしたお金の流れが止まるとは思えません。

民主党は、すでに特殊法人や国家予算の特別会計など公的部門のムダな部分にメスを入れて国会でも追及してきました。

民主党は、郵貯の預け入れ上限を1000万円から最終的に500万円に下げて、郵貯210兆円のうち100兆円を民間に開放して特殊法人へのお金の流れをストップします。

郵便局が株式会社化されれば、郵政事業の現状サービスは困難

竹中大臣は、「民営化されても現状の郵便局は維持されます」と国会で答弁しています。

しかし、赤字が見込まれるから民営化しようと言いながら、赤字であっても現行サービスが維持されるとは思えません。政府は地方の郵便局を維持するために「社会・地域貢献基金」として2兆円を積み立てると言っていますが、とてもそれだけの金額では足りません。

長野市に芋井という集落がありますが、ここは公民館の前に各戸の郵便受け(?)のようなものがあり、信濃毎日新聞はここに配達されています。山間地を配達していては採算が合わないからです。民営化された郵便事業の将来を暗示しています。現在、郵便局は一軒一軒に配達されています。それだけなく、郵便局員が遅れた時計の針を直すなど、住民のお世話までしてくれています。民間では、どうしても効率性を重視してしまい、こうした住民サービスまではしてくれていません。  

郵政事業は三事業一体は農協の仕組みと同じ

小泉内閣の郵政法案では、郵便・郵貯・簡保の三事業を分離し、窓口会社を新たに新設する案になっています。

しかし、本来郵便事業は、全国一律のユニバーサルサービスを実施するため、必然的に赤字になります。郵貯・簡保事業の収益がそれを補っています。

これは、ちょうど農協組織と共通しています。農協も営農指導は無償でやっており、採算は取れません。経済事業や金融事業がその赤字を埋める形になり、農協の仕事が一体となって回っているのです。

農協の職員が経済事業も金融事業もやるのと同じように、郵便局員もなんでもしています。だからこそ効率がいいのです。形だけ三つに分けて一体何をするのでしょうか?

みせかけの「民営化」より「正常化」

郵便局が郵便・郵貯・簡保と一体で行なうにしても、現行制度ではその額があまりに巨大であり、また前述のように資金が公的部門に流れて極めて不明朗な使い方をされています。

これを「正常化」することこそ郵政改革であり、単純に「民営化」するだけでは改革とはいえません。「正常化」というのは、肥大化している郵便局の資金を縮小していくことです。現在、郵貯210兆円・簡保140兆円合計350兆円の資金がありますが、民主党は郵便貯金の預入れ限度額を1000万円から500万円に引き下げて、郵貯の210兆円を100兆円に縮小して、正常な状態に戻します。

今、いきなり民営化しては、リスクが大きすぎます。つまり、貸し出しなどの銀行業務は素人ばかりです。それに企業は、すでにお金が余っています。ですから、郵貯と簡保は縮小して、民間を圧迫しないまでにしてから、中山間地域など一般の銀行が支店を置かないところに庶民の金融機関として残るのが、最も現実的だというのが私の考えです。

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