鹿野道彦さんの確かな政局を見る眼

9月11日の総選挙は、民主党にとって結党以来の大敗北となる無惨な結果となりました。

郵政解散・総選挙という事態を予想しきれず、準備できなかった民主党の重大なミスが招いたものです。

9月13日(火)午後9時頃、今回の選挙で苦杯をなめた鹿野道彦前衆議院議員から当選祝いの電話がありました。私は慰めたいもののどう話したらよいかわからず、電話をできずにいたのに、ご自分のことには全く触れられず、ひたすら大逆風の中での私の再選を喜ばれ、民主党の改革、政権奪取、日本の再生について頑張るように励まされました。私には、できない芸当です。当選10回、自民党時代に農林水産大臣、総務庁長官を務められたベテランです。

私は、民主党は幹部の政局判断ミスにより、かくも大量の落選者を出したことを明確にすべきだと思い、このホームページで明らかにします。

鹿野さんこそ、民主党の郵政の対抗法案を用意し、先の国会に提出すべきだと主張し、かつ行動を起こしていた先見の明のある熟練政治家です。まず、小泉総理の嫌味な性格は熟知していました。小泉総理と同じく福田―安倍派に属し、安倍派のプリンスと言われ、順当なら安倍派は三塚博−鹿野と引き継がれ、森喜郎や小泉純一郎の出る幕はなかったのです。それを政治改革のため、自民党と縁を切ったのです。元自民党の民主党議員は竹下派が多いのですが、例外的な人です。

他の同僚が次々と自民党に戻ったり、自民党と手を組んだりする中、ただひたすら非自民を貫き通しました。その点、羽田さん、北沢さん、岡田さんと同じ筋を通す立派な方です。

皆がいくらなんでも解散などしないだろうと楽観している中、「小泉はやる」と見抜いていました。そして、国民に明確な対抗軸を示しておかないとよくないと主張されていました。

12年前に自民党を飛び出されてから「今ほど政権奪取の好機はない」と意欲満々でした。「国民の為にも政権交代し、日本を再生せねばならず、小泉政権を早く終わらせなければならない」と民主党の煮え切らない対応に苛々されていました。そして、想いを同じくする同志と数回会合を持ち協議し、幹部にも対抗法案の提出を促しました。しかし、残念ながら受け入れるところとなりませんでした。

1年半前、私は鹿野NC農林水産大臣の下、農業再生プラン作りに没頭していました。参院選に向け民主党から仕掛けたもので、各党が一斉に農政改革プランを作成し、参院選前に出揃いました。民主党は農林水産予算3兆円のうち1兆円を直接支払いに充当するという大胆なものです。農家の支持を得、27の1人区で民主党の13勝14敗という、その前の2勝25敗に比べると大躍進の原動力となりました。

鹿野さんは、郵政民営化でも野党として明確に対案を出していくべきだという当然の主張をされたのです。

両院総会でも、同僚議員がこの主張を展開しましたが、受け入れるところとなりませんでした。しかし、一切この動きは秘密裏に進み、外に出ませんでした。

鹿野さんは「小泉は昔からよく知っている。友人もいない。郵政民営化が趣味だ。国民のことも国家のことも考えていない。自民党のことも考えていない。自分の趣味の方が大切なんだ。だから常識も何も通用しない。解散でも何でもやる。」と予測していました。

一方、新聞報道どおり、小泉総理は7月5日の衆議院での採決後、解散の準備を進めていました。私が解散すると気づいたのは、森前総理の官邸での演技です。誰が空いた缶ビールを官邸から持ってきますか。おかしいと思いました。ただ、地元の労組の会合では、「希望的観測として解散はない」と喋り、笑いを誘っていました。私は長野市内の組織化が全く進んでおらず、困るからです。しかし、私の願いも虚しく、小泉総理は鹿野さんの見通したどおり解散に打って出ました。

その後の推移はご存知の通りです。

選挙戦の最中にやっと預け入れ限度額を1000万円から700万円とし、500万円にするとか、郵貯・簡保を縮小とか慌てて対案の説明を出しました。岡田代表は民営化どころか廃止まで発言しました。しかし、手遅れです。

民主党は議論をおそれ、守りに入ってしまったのです。自民党の党を割る議論を高みの見物していたのです。これでは、国民から見放されます。

私は、周りの同僚に「2004年5月の民主党の代表選びだって、政権取りに向けて真剣に取組んでいると映り、参院選にはプラスに働いた。だから、民主党も郵政問題を真剣に議論すべきだ。」と主張しました。党が割れる心配などないのです。何で郵政ごときで党を割る必要のあるのでしょうか。自民党は明らかに権力闘争も絡んでいました。しかし、民主党は、純粋に郵政民営化の中身を議論し、対案を出せばよかったのです。それを怠ったツケが今回の大敗北です。

何よりも残念なのは、日本政界がこの事態を予測して手を打とうとした鹿野道彦さんを失ったことです。

民主党にとっても痛手です。政局を見る眼のある人がまた一人欠けたのです。民主党の鹿野さんの必死の叫びに耳を傾けなかった幹部に猛省を促したいと思います。

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