霧の中のチェルノブイリ

2005.11.8

<突然のチェルノブイリ訪問>

ウクライナ、キエフと聞いて、すぐチェルノブイリを思いつく人は少ないかもしれません。ウクライナの外交関係者との儀礼的挨拶に日・ウ両国の共通点として、世界唯一の被爆国と原発事故による被害国が挙げられました。

原田外務委委員長がチェルノブイリが近いならぜひ行きたいと言い出し、キエフを発つ朝6時車をぶっ飛ばして往復することになりました。とは言っても、30Km以内立ち入り禁止の入り口に言ってくるだけのことです。小型マイクロバスはスピードを出せないということで、公用車1台に民主党代表(?)の私と委員長と二人だけ乗り込みました。他の皆さんも行きたがりましたが、我々二人だけしか行けませんでした。

キエフでは珍しいという霧の中、暗いうちにそれこそ冷や冷やしながら対向2車線を追い越しながら、7時30分に着き、数分入り口で写真をとり、ただそれだけのことでした。先にある石棺(コンクリートで原発を覆って放射能が漏れないようにするもの)も何も見えず、それだけ不気味さが際立ちました。

<核兵器廃絶>

ウクライナは、ソ連から独立した時、3番目に多くの核兵器を持つ国となりました。しかし、原発事故で核の怖さを知ったのもあったのでしょう、世界で始めて全面放棄し、核拡散防止条約にも加盟しました。核軍縮についても、日本と共通の目的を持つ国です。

何の変哲もない村を襲った突然の悲劇。事故はすぐに知らされませんでした。翌日理由も告げられず、バスに乗せられ強制的に退避させられ、二度と戻れなくなりました。故郷を追われた村人の哀れな境遇に涙が出てきます。日本にも、そして世界にも起こる可能性はいくらでもあるのです。

<核廃絶の次は原発廃絶>

要人との会談は、専ら代表団長、すなわち原田外務委員長が発言します。時間が余ると末席の私にも順番が回ってくるので、用意していますが、空振りのケースもままあります。職業外交官上がりのタラシューク外相は、核廃絶を自慢しました。ロケット技術も誇り、20〜30年後は、EU(加盟と当然視)諸国で最も繁栄した国となっているとぶち上げました。

そこで、私は畳みかけて理想論をぶちました。

「核廃絶を世界に先駆けてやったのなら、原発の恐ろしさを知った今、自慢の科学技術をバイオマスエネルギーに向け、広大な国土も活用して原発をやめ、世界一の循環型国家を目標にして欲しい。ウクライナならできないわけはない。」

答えは正直なものでした。

「原発については矛盾に満ちたことをしている。石油・ガスのないウクライナは電力の50%を原発に頼っている。フランスの80%に次ぐ。努力してないわけではないが、バイオテクノロジー等に力を入れても、今脱原発は現実的にはむずかしい。」

原子力に変わる安全なエネルギー源がないとしたら、我々はやはり、便利な生活を徐々に見直していかざるを得ないかもしれません。

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