外務委員会質問

3月29日、外務委員会で日・マレーシア経済連携協定(EPA)に関する質問に立ちました。

日本は、近年シンガポールやメキシコ・チリ等の国々とFTA(自由貿易協定)を締結していますが、どうも外交上の戦略が欠けているのではないか、と私は考えていました。そこで、ポスト小泉の一人でもある麻生外務大臣に、そもそも日本の将来の姿をどのように考えているのか、という大局的視点に立った質問をすることにしました。

<反骨の吉田茂と石橋湛山の経済重視路線>

私は、日本が国づくりの将来ビジョンを熱心に考えた時期は、戦後すぐの吉田内閣の時代ではないかと思っています。この時、吉田茂総理は大蔵大臣に民間から石橋湛山を任命しました。石橋湛山は戦争中、軍事大国化して海外に植民地を求める軍的大日本主義に対して、「小日本主義」を唱え、国内で製品をつくって輸出して、必要なものは外国から輸入すればよい、日本軍は満州から戻って来いと主張しました。

反軍という点で同志だった吉田首相と石橋湛山は後に袂を分かちますが、戦後日本を経済重視路線で、復興にとりかかりました。

<工的大国主義に陥った日本は環的小日本主義へ>

現在の日本はその経済重視が行き過ぎて、工的大日本主義に陥っているのではないでしょうか。生産コストがかからない東南アジアに工場を建てたり、日本製品の販路を拡大するために、得意なものの生産に特化したりしようとしています。

しかし、日本は「大国意識」は持つべきではなく、もう少し環境に配慮し、適正な規模で持続的に発展する環的小日本主義を目指すべきである、と質しました。

麻生大臣は、「この数年で、日本の輸出も減って各国から侵略だといわれることはなくなったのではないか。今は経済復興と血道をあげる必要はなくなったし、人口減・少子高齢化等社会状況も変化してきている。改めて国の将来像を落ち着いて考える時期に来ているのかもしれない。」と認識を表明されました。

<自由貿易は絶対的善ではない>

続けて、今のように戦略なく、話し合いさえできればどことでもFTA・EPAをどんどん連携していくと言うのは、まさしく「ダボハゼFTA」「入れ喰いEPA」と呼ぶべきもので、自由貿易は、現在誰も疑わない金科玉条のように受け入れられています。しかし、将来「国際分業論や自由貿易は強い国の論理だ」と疑問視されることになる。そもそも吉田首相は、品格あるバランスのある美しい国を作ることを目指していたのではないか、と質しました。

これについては、吉田茂の孫にあたる麻生大臣は、「FTA・EPAは、他国がやっているからうちもというのは不見識である。共益を目指すべきである。自由貿易も絶対善ではなく、これを強力に推し進めれば、弱肉強食になる。ご指摘は大事な点なので、腹をすえて国柄を考えていこうと思います」と答弁されました。

今回は、いつものように提案型で質問したわけでもなく、また問題点を具体的に追及するというわけでもなく、哲学的な議論を中心としたものでしたが、ともに政治家として、日本の将来像への危機感は共有できたのではないかと思います。

<渡部国対委員長の傍聴>

余談になりますが、民主党の渡部新国対委員長は、この石橋湛山に感銘を受けて政治の世界に飛び込んだそうです。二人とも早大哲学科で、石橋湛山さんの選挙の手伝いをしたそうです。そこで、質問する前日に「外務委員会の質問で石橋湛山を取り上げますので、ぜひ聞きに来てください」と連絡しておきました。

朝一番で8時50分からの質問でしたが、渡部国対委員長は私よりも先に委員会室に来られ、他の委員や事務局員など突然の大物の来訪にびっくりしていました。その質問の前に、麻生大臣と立ち話をされました。お陰で大臣も私も委員のメンバーもピリッとしたのではないかと思います。

本来ならば、9時15分から国対役員会があるのですが、途中で退席されることなく、私の質問の最後まで聞いておられました。

私の質問後に「委員会を傍聴するのは面白いな。これからは他の委員の質問も時々傍聴するか」と発言されたことがマスコミでも報道されていますが、そのきっかけを私が作ってしまいました。これから「渡部黄門」が委員会をまわることになりそうです。

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