代表選を前にして

2006.4.7

<残念な前原代表の辞任>

 今回の一連のメール問題は、前原代表自身、「楽しみにしてください」発言は致命傷だと思います。一議員と党代表の発言の重みの差がまだわかっていなかったのかもしれません。しかし、この混乱の中でも、私は前原代表には任期を全うしてほしいと願っていました。

去年の総選挙で民主党が大敗した直後の代表選で前原代表が選出されましたが、私は、そのときは、経験豊富な小沢さんに代表になってほしいと思っていました。前原さんは、民主党が上り調子で政権奪取するときの代表にこそふさわしいのであって、選挙に大負けしてガタガタになっているときは、自民党と伍してやっていけるベテランでなくてはつとまりません。

<俗論を排す (1)選挙が必要>

 辞任表明後、前原さんは密室の談合で代表を選んではならない、選挙をするべきだと発言しました。自分で代表の座を投げ出しておきながら、あれこれ言うのは美学に反します。2年前の代表選(2004年5月)では、菅さんが辞任して小沢さんが辞退した後、岡田代表が無投票で選ばれています。これが談合でしょうか。このときはよく、今回は選挙でなければならない理由はどこにもありません。

国民は、安定感のある野党第一党を求めています。話し合いで代表にふさわしい人を選んで何の問題もありません。何が何でも選挙という原理主義を唱える人がいるのは、大人の党ではない証かもしれません。もしわかっているなら、主張する者は、正論を盾に話し合いで決着する者(今回は小沢さん)が嫌だと言っているにすぎません。国民のまとまってほしいという声を無視した政治ゲームは許せません。

 マスコミも党幹部自身も2004年7月の参院選への悪影響を予測していましたが、案に相違して、民主党の大躍進、勝利となりました。国民は民主党が話合いで物事を決着できる大人の党になったと肯定的に受け止めていたのではないかと思います。

<民主党と自民党の違い>

04年春は小沢待望論があり、決まりかかったのが、岡田さんになりました。05年秋の代表選は、ドタバタ決まりました。立会演説会の前原演説が効いたと言われていますが、多数派工作のすごさを知りました。政治家は政治好きな人が多いことを知りましたが、もっと政策にエネルギーをと思うと同時に、個人個人があまりにバラバラな気がしました。派閥がきちっとしてる自民と比べ票が読めないのがよく分かりました。

<国民の声は話し合い決着>

(1) 今回の代表選は、岡田さんが途中退陣、そして2票差で勝った前原さんがメール問題で退陣した後の、つまり残任期間のそのまた残任期間の6ヶ月だけの代表です。まして国会中です。国会会期中に1週間もトップの争いをするのは国民に対して失礼です。

(2) それでも国民が投票による代表選をやるべきだと期待するなら、その声を受けてすべきですが、そういう声は聞かれません。他党の支持者で、民主党が弱体化すればいいと思っている人以外は、第一に民主党にまとまってほしいと願っています。さもないと民主党の支持者にも見切りをつけられてしまいます。

(3) もっと前向きに考えれば、寄り合い所帯と言われる民主党が話合いでもまとまることのできることを国民にアピールする絶好の機会です。つまり、ピンチをチャンスに変えるのであり、前原代表は、政策で強引な手法でまとめようとしましたが、政策こそ徹底して論議すべきであり、代表の趣味でまとめるものではありません。しかし、人事についてはゴタゴタ見苦しいのです。羽田最高顧問がまとめに乗り出しました。私はこれに乗るべきだと直感しました。元総理、そして誰からも嫌われない人格者。私はいつも「民主党統合の象徴」と称していますが、その方がまとめようとされたのです。それに従うのがベストでした。

<羽田さんの「今度は最後だ。小沢にやらせてやろう」という決意>

 こうした中で、羽田さんは4月3日(月)、北沢俊美さんをはじめとする羽田グループの内輪の会合で、小沢さん支援を明確にされました。それは何よりも民主党の信頼回復、政権交代を考えてのことです。その上で、菅さんの立場も十分に考慮されていました。私はさすがと思いました。

<出てほしくなかった菅さん>

私は、菅農林漁業再生本部長と農林漁業再生プランにかかわってきました。一緒に農業・農村視察をし、その人柄に触れ、虚像(イラ菅といってすぐ怒る。都会派)と実像(農村を大事にするエコロジスト)の差に驚きました。日本社会をどう持っていくかという価値観で見れば、私とほぼ同じで、総理の座についてもらいたい人です。

農林水産委員会で民主党農政改革基本法の審議か始まり、菅さんに初日だけは出てもらうことにしていました。4月5日は菅さんの出馬表明の日と偶然重なりました。従って、「農業の再生なくして日本の再生なし」という持論がマスコミに登場しました。私としては嬉しい限りでした。菅さんはまさに政治的同志です。

しかし、今は時期が悪いのです。待ってほしいと思いました。

<一本化のシナリオ>

私なりのシナリオを示してみました。

(1) 民主党支持者や国民の声を反映して、菅さんが民主党一本化に向けて、今回は出馬しないことを明確にする。

(2) これが、小沢さんに「あ・うん」の呼吸で伝わり、小沢さんもそれを呑み評価する。

(3) これにより、党内には次は菅さんという「あ・うん」の呼吸が生じる。

(4) 国民もまとまったと認識する。

(5) 菅さんは、小沢体制にはそれほど深入りせず、幹事長ではなく、代表代行か政調会長で支える。つまり、菅さんは小沢さんの後に取っておく必要があり、一蓮托生は避けるべき。

(6) これにより、小沢・菅を中心とし、挙党態勢が出来上がる。

という単純なものです。私は全く知りませんが、報道されたとおり、岩国さんたちがこれと同等の話を菅さんにしたようです。

<俗論を排す (2)小沢の脅威論>

小沢さんと菅さん、2人の争いになってしまいました。

ところが、残念ながら、民主党の一部には「小沢アレルギー」があります。私自身の政治信条としても、羽田さん、岡田さんのように2大政党制をめざし、反自民を貫き通した「ぶれることなく筋を通す政治家」が理想ですし、私自身そうありたいと考えています。ただ、小沢さんのカリスマ性は民主党として利用し、柔軟な対応をすべきときだと思います。

 小沢さんも、協調してやっていこうとしているはずです。やってみてもらえばいいのです。それで、もし、小沢さんが世情言われているような独断で代表選を行うようなら、9月の代表選でやめてもらえばいいのです。それをする前から、マスコミの論調に踊らされて、批判するのはいかがなものでしょうか。

<胸が痛む今日の投票>

それにしても、また悩ましいかぎりです。菅さんは前回の代表選では僅差で敗れており、今回大差で敗れると次がなくなる恐れがあります。それは絶対避けなければなりません。羽田さんは、今回は小沢さんということで、まとめようとして努力をされていました。2大政党制、政権交代への真摯な願いが手に取るようにわかります。期待の星の小沢さんが敗れるのも困りますし、国民の期待に反します。大差がつかず、小沢さんが勝ってほしいと思いつつ、菅さんに傷がつかないようにというのが、私の正直な願いです。

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