2004.07.17

政治

参院選総括―農林漁業再生プランと27の1人区の勝敗

今日は、私の56歳の誕生日です。
長野に出るべき会合が数個ありましたが、咳と痰がまだ出ているので、杉並の家でゆっくり静養して早く風邪を治すことにしました。

(森田実さんの再生プランへの評価)
昨夜(7/16(金))、長高の大先輩の梨本修造さん(高山村)から電話があり、朝日ニュースターで森田実さんが「民主党の勝利は、農業再生プランを作って農業や地方の再生をアピールしたからだ」と発言しておられる旨、連絡がありました。長野県の高山村でちゃんとニュース専用の番組を見ておられる姿勢に敬服、すぐ連絡いただいたことに感謝しなければなりません。

早速、鹿野NC農水大臣にも連絡しました。

鹿野さんは、遊説中に手に大怪我をしてしまい、応援した舟山さんが僅差で敗れガックリされていましたが、プレス民主の号外の農林漁業再生プラン特集が、110万部注文があり全国各地に配布されたことを大喜びして知らせてこられました。
私も11県に14回応援に行きましたが、どこでも「8つの重点項目のうち3番目に農林漁業再生プランが入っている。民主党がこんなに農政重視を打ち出したことはない。加えてビラまで作成した」と説明に回りました。

(農林漁業再生プランの経緯)
1/13 党大会で菅代表が農業政策の重要性を訴え、参院選に向け農業再生プランを作成することを宣言。

1/17 菅代表、大潟村視察、篠原随行。以降、週末ごとに各地を視察。車座集会。

2/5~ 週2回の若手の勉強会を開始。3月までに14回。

2/17~ 鹿野NC大臣を筆頭に、山田総括副大臣、小平、筒井、鮫島、羽田、平野、篠原で再生プランプロジェクトチームを作り、本格的議論を開始。以降20数回、合計50数時間の議論を重ねる。

3/2~ 菅代表を本部長として農林漁業再生運動本部を設置。全国農業協同組合中央会から全国消費者団体連絡会まで25関係団体のヒアリングを行う。

2~4月 日本農業新聞等に民主党の農業再生プランへの取り組みが度々報じられる。

4/26 菅代表に農林漁業再生プランの概要を説明

4/27 小沢一郎代表代行の農政講話会。

5/13 農林水産部門会議で再生プランを了承。

5/26 岡田新体制の初閣議で再生プランを了承。記者発表。

5/27 朝日新聞、日本農業新聞等が民主党の農業再生プランを大きく報道。

5/28 自民党も農政公約を公表。(この前後に社民党、公明党、共産党も続々農政公約を公表)

6月上旬 マニフェストに反映させる。

6/10 新聞各紙の経済部の農政担当論説委員との懇談会を開催。全社が参加。

6月下旬 プレス民主の号外版として農林漁業再生プラン特集号を作成。20万部を各候補に配布。最終的に、110万部を配布。

(農林漁業再生プランのPR)
農林漁業再生プランを民主党の目玉の一つとするべく、完成後もあれこれ手立てを尽くしました。

(1) 新聞への掲載
全国紙数紙から、再生プランの事前レクを頼まれていました。政治部の記者にややこしい農政の話は無理ですから、私も積極的に応じるつもりでした。しかし、5月上旬に原案を関係者に配布して意見を聴取し、どんどん取り入れているのに、5/26の公表の直前になって、同僚議員がいろいろ修正意見を言い出し、事前レクの時間がなくなってしまいました。

かくして、私がゆっくり事前レクできたのは1社のみ。他社には不義理をして説明できず、そのため、大きく報道してくれたのは、全国紙では、私が事前レクした1社のみでせっかくの立派な再生プランもPRする絶好のチャンスを小さくしてしまいました。

(2) 民主党内への周知徹底
民主党のホームページに掲載
全議員に (a)再生プラン本体(18ページ)、(b)論点整理ペーパー(41ページ)、(c)統計表の簡略版(6ページ)をメールで送付。
農林水産部門会議の主要メンバーに (d)想定問答集(17ページ)、(e)統計の詳細版(15ページ)を配布。
参院選の全候補者、県連、全議員に(a)(c)(d)をメールで送付
参院選の全候補者、県連、全議員にプレス民主の号外で農林漁業再生プランを説明したものができた旨、更に注文に応じて送付する旨連絡。この作業を皆が選挙区へ帰った6月下旬、国会事務所で秘書2人とシコシコやりました。
(3) 関係団体への配布
再生プランをヒアリングした25団体への配布
県の農協中央会及び県の農業会議所への配布
(4) 日本農業新聞への広告の掲載
自民党は6月下旬より日本農業新聞に農政公約の広告を載せ始めました。広報に民主党もと頼むと、2回に分けてする予定との返事がきましたので、さっそく菅農林漁業再生本部長と鹿野NC農林水産大臣との対談の原稿を作り、6/27(日)の舟山さんの応援の時には、写真もとりましたが、広告は7/3、7/10の2回とも岡田代表の写真ばかりでした。どうも古い人には党本部は冷たいようです。

(全党が農政公約を発表)
民主党が農林漁業再生プラン作りに取り組んでいることが日本農業新聞等で度々報じられていました。これ自体はよいことです。ところが例えば、内容の自給率について、やれ48%、50%、60%といろいろ新聞にも出てしまいました。きつく箝口令をしきましたが、どうも政治家はお喋りの人が多いようで、何度となく内容の一部が漏れました。すると驚いたことに、自民、社民、公明、共産の他の4党も一様に民主党と同じ直接支払いの導入、自給率向上といった似たような公約を次々に発表しました。

一般には、あまり知られていませんが、年金、イラクに次いで、農政も静かな争点の一つになっていったのです。ただ情報漏れの成果(?)となると複雑な気持ちです。

(農民の自民党離れ)
選挙期間中、各社の世論調査結果が報じられました。

何と驚いたことに、民主党が27の1人区でも善戦しており相当取れそうだというものでした。

なかでも、共同通信社のものは職業別の支持政党で、かつて圧倒的に自民党支持者が多かった農民が、14ポイント減り46.9%に下がり、民主党が1桁から2桁台になったと報じました。農家が自民党農政に飽き足らず、我々の再生プランに目を向けてくれた証左です。

慌てた自民党は、7月2日見開き2面ぶち抜きの広告を出しました。「守りから攻めの農政へ」「常に農家と一体です」のタイトルに、小泉首相の写真、農政公約、そして農業課題のQ&A入りです。さらに7月10日にも1面の全面広告を出しました。

それだけではありません。共産党も1面の全面広告を出し、公明党も社民党も大きな広告を出したのです。こんなことは前代未聞のことです。

(13勝14敗は農政重視の成果)
1人区で民主党公認が9人、民主党系の無所属候補の5人も勝ち、菅さんの10人という目標は見事に達成されました。

エコノミスト誌(3/30号)に、菅さんの農村行脚に対し「農村票が1票増える間に都市票が3票減っている」と愚かなコメントを述べた同僚議員がいましたが、都市部は減らず、東京2人、神奈川2人、愛知2人をとり、農村部で思いもよらない大勝利となりました。変ないちゃもんをつけた人は不明を恥じてほしいと思います。菅さんの描いたとおりの勝利で、私は今回の勝利は農政重視をアピールした民主党の戦略の成果だと思います。小沢一郎前代表代行が、専ら農村地帯を行脚されていたというのは、まさに同じ考えに立つ動きであり、農民票の獲得に大きく貢献しました。

大半のマスコミは、民主党の1人区の善戦を、『1区現象が2区まで及んだ』『岡田新代表のまじめさの勝利』等の言葉を並べています。そして、小沢さんの農村行脚は新聞に報じられました。

手前味噌になりますが、民主党の農政重視が地味ながら静かに農山漁村に浸透したことがほとんど忘れられています。110万部も配布された農業再生プランのことが我々のPR不足か、さっぱり全国紙に出ないのは口惜しい限りです。

(政権交代は目前)
そして、山形と富山は社民党と共闘すれば勝っていました。岡田代表は、「香川、山口、山形は本当に残念だった」と選挙後繰り返していましたが、徳島、佐賀もあとちょっとでした。

かくして、自民党が安泰なのは、南九州、山陰、北陸のみとなりました。このまま行けば、共同通信のシミュレーションではありませんが、今回の参院選の得票結果に基づき、各党の比例獲得票で衆院選の獲得議席を単純計算(自民党が単独で戦った場合)すると(民主党308、自民党130、公明党27、共産党9、社民党6)次期総選挙では間違いなく、民主党が大勝利し、政権交代が実現します。ただ、自公が完全協力すると自公で320となるという恐ろしい数字がでています。

さて、民主党はどう打って出て、自民党はどう対応するか、政界もにぎやかになりそうです。

投稿者: しのはら孝

日時: 2004年7月17日 20:19