2006.11.22

外交安保

【メルマガ】中川昭一発言核保有論議について 06.11.10記

11月8日安部VS小沢の二回目の党首討論は核保有論議が中心となった。  私自身も傍聴していた7~8m以内で、安部首相がつい本音を漏らしたことが感じられた。45分間というと短い位でいて結構長い。

【中川政調会長擁護論】~軍事安保と食料安保比較~
 中川昭一政調会長は、昔からタカ派である。農政畑では、それなりに交流があったが、日本国全体については、政治家と役人の間であり、じっくり話したことはない。私は私自身の考え方をそれなりに著書にしているが、政治家のほとんどは、励ます会配布用のいわゆる「まんじゅう本」(まんじゅうの代わりに配布するので、この名がついた)くらいしかないので、その考え方はわからない。
 ただ、論議の一貫性、行動の一貫性は認められる。つまり、日本の国の安全保障は軍事的にも自力を旨とすべきであり、核兵器を北朝鮮すら持とうとしているのだから、日本も核を持つことの可能性を含め議論をしていくべきだ、という極めて当たり前のことを言っているにすぎない。農林族の大御所として、食料安全保障の観点から食料自給の必要性を力説するのと同じなのだ。   
                  
≪軍事安保≫ アメリカの核の傘             ⇔     日本も核を持つ
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≪食料安保≫ アメリカ等から食料を大量輸入   ⇔     日本国内の食料自給を目指す

【中川政調会長の論理矛盾】~軍事安保と食料安保比較~
 ところがやはり、日本人の議論は情緒的で非論理的である。
 日本の自衛を核保有論も含めてすべしと発言している中川政調会長が、一方で小沢一郎代表の食料自給率100%を目指すという政治目標に対して、ありえないと批判している。日本には非核三原則があるのは認めるが、核保有の可能性についても議論していくべきだということと、食料自給率が40%を仕方ないとして、あきらめず自給を目指すべきだということが、全く同じことに気づいていないのだ。
 一方、新任の松岡農林水産大臣にいたっては、小沢代表の完全自給を目指すという目標に対し、農水委員会で「絵に画いた餅にもならぬ」とこき下ろしている。自ら一兆円の農林水産物輸出目標、輸出などできないで固定観念の打破だと吹聴していることと矛盾していることに、同じく気づいていない。つまり、食料自給率を上げられないと固定観念にとらわれているのは、松岡大臣自身なのだ。

【意味のない核保有論議の是非】
 中川政調会長が格好よく核の保有も含めて議論をしてもいい、というのはこの時期に全く不要のことである。
そんなことをわざわざ言わなくたって今までも議論してきているのだ。例えば、アメリカは本当に核の傘とやらで日本を守ってくれるのだろうかとか、やはり核保有はしないほうがいい、唯一の被爆国として核廃絶を唱えていくべきだといった議論は今までもしてきており、北朝鮮の核問題と同時に再び考えてみようというのは何も驚くに当たらない。
 あちこちで言い訳しているとおり、こういう議論すらしていけないなどとは誰も言っていない。それをいいことに、中川政調会長の言い訳は、非核三原則について触れないと言い逃れをしている。そんなことなら何も今更あちこちで言い訳する必要もないことであり、単に波風を立てただけのお騒がせ発言である。
 なぜ問題にするかといえば、核保有をしてもよいという方向に持っていき、いずれ日本も核保有したいという明確な意図が見透かされるからだ。ところがこれはムニャムニャと否定するので、何を言っているのかわからなくなってしまう。

【日本の核保有を最も怖れるのはアメリカ】
 日本が核保有などと言いだしたら、どこの国がどう応えるか。
アメリカは、イラクに大量破壊兵器などなかったのに、あると言いがかりをつけて爆撃をする国である。ほっておくと、核保有しかねない日本を危険国家とし、突如爆撃してくる可能性も、論理的にはありえないことではない。微妙な国際政治の中で、核を持とうとすることがいかに危険かわかっていない。
どうせ議論するなら、こういうきちんとしたシミュレーションもしてみるべきである。何も憚ることではない。ところが、こんな厳しい世界の軍事力学も知らずに、徒らにナショナリズムを煽っているのが、最近のタカ派の皆様方の発言である。
拙著『農的小日本主義の勧め』にある程度書いたので詳細は避けるが、私は中川政調会長よりも誰よりもタカ派かもしれない。つまり、どこの国の力も借りずに、理念ある国家としてバランスよい自立できる国づくりをしていこうと考えているからだ。つまり、平和を希求する国家として、世界から一目置かれる国であることが最も合理的な総合安全保障なのだ。

        《北朝鮮の核保有に対し、矛盾するアメリカの対応》
1.米はイラクに大量破壊兵器がありそうだからといって爆撃した。小泉前総理はミスを認めず不誠実である。
2.インド・パキスタンに核を許し、北朝鮮とイランへの対応の矛盾、米の論理は一貫してない。
3.日本は核に対しても、北朝鮮に対してアメリカとは違う自立的な態度を貫くべきである。
4.唯一の被爆国として、核廃絶を叫び続け、それに向かって全力を傾注する事が日本にとってベストである。

投稿者: しのはら孝

日時: 2006年11月22日 16:39