2007.02.07

政治

政治の世界の競争原理不足 07.01.20記

― 日本JC・看護協会から民主党全国区への出馬の意義 ―

<歯止めのない自由競争の矛盾>
競争原理を前面に押し出したのが、小泉・竹中・ホリエモン路線である。私は、あまり好きではないが、事業への新規参入などは賛成である。しかし、すべてに当てはめようとするからおかしくなる。昨年(10月30日放映)のTVタックルでも、隣に座った松原聡東洋大学教授があまりに自由競争、規制緩和ばかりいうので、ビートたけしが「それで何でもうまくいくんなら、何でヒロポンも麻薬も自由にしないんだ」とわめいた。放映時間の倍以上収録し、筋書きに沿って編集され、私の発言もカットのオンパレードだったが、たけしの過激発言も当然カットされていた。

<二世議員で競争原理は働かず>
政治の世界では、各党が候補者を立てており、最も競争原理が働いてようにみえるが、どっこい、かなり閉鎖的である。その悪例の一つが二世議員のばっこである。よく言われる地盤・看板・鞄の三つが揃った二世が圧倒的有利となり、日本では四世議員まで生まれている。政治の世界へは、各界各所からの意見が反映されてしかるべきであり、同じ家系ばかりから出ていては、同じような意見しか反映されなくなる。ただ、この点は、語り尽くされているので、ここでは論じない。

<自民党を支持し続ける全国団体>
私が問題にしたいのは、日本独特の、一つの団体が一つの政党しか支持しないという歪んだいわゆる旧態依然とした55年体制である。昔の圧力団体を10としたら、経団連6.農協3.医師会1.といわれ、経団連と医師会は自民党に金を出し(政治献金)、農協は票を出していた。
参議院全国区に農林官僚が必ず2人出て、医師会からは1人出していたが、前者は2004年に落選し、この連携が崩れつつあり、今回は農協界から独自候補を立てている。ただ、農協も自民党、医師会も自民党という構図は、変わらない固定観念として続いている。

<アメリカの全国団体はどちらも支持せず>
自民党の長期政権が続いているので、日本国民はこの異様さに気づいていない。アメリカでは、全国団体が、民主党か共和党のどちらかの支持を表明することはほとんどない。つまり二大政党制が定着し、政権交代が行われるので、全国団体が一党一派に偏することはないのである。もし、支持した党が野に下ったら、その間はずっと冷や飯食いになってしまい、やっていけなくなるからだ。2004年の大統領選で、現職のブッシュ大統領が、公約の一つとして「日本に牛肉の輸入を再開させる」と掲げたのを受けて、全米牛肉生産者協会が、史上初めて共和党支持を明確にした、とニュースになったぐらいである。

<政権交代で癒着・馴れ合いを断つには>
アメリカでは、誰を支持するかは各州の団体に任されたり、あるいは州の団体すら立場を明確にせず個々の判断に任せている。つまり基本的に人物本位なのだ。アメリカの眼からすると、一つの団体が一つの政党をずっと支持し続けているのは信じがたいということになる。
それもこれも自民党一党支配が続いているからである。その結果、こうした政治と団体の癒着を断ち切るにも政官の馴れ合い体質を是正するためにも、政権交代しかないという結論に達する。自民党と全国団体や中央官庁はあまりに親密すぎるのだ。

<日本看護協会とJC(日本青年会議所)の快挙>
これに風穴を開けたのが、日本JC直前会頭(第54代)の高竹和明氏と日本看護協会の山崎麻耶氏の、民主党から全国区への公認・立候補である。日本JCのOBは、麻生太郎外務大臣、斉藤斗志二元防衛庁長官等ほとんど自民党である。日本看護協会は、毎回参議院全国区に自民党から1人を送り込んでいる。大臣としての適格性を欠くと問題になった南野知惠子元法務大臣はその一人である。
日本看護協会の場合は、会員からお金を集め、それを元手に選挙活動を行い、自民党から全国区に1人の参議院議員を送り出している。今回、民主党から立候補する山崎さんは著書も数多くあり、かつ、団体歴も長い。いってみれば、日本医師会や全国土地改良連合会の元役員が民主党から出たということであり、一つの団体から二つの政党の全国区候補が出るという、いまだかつてないことになる。

<政権交代は全国団体改革から>
全国団体は、政権与党なるが故に自民党を支持し続けてきたのである。野党に転落すれば離れていくのは明らかである。ただ、我々民主党は、順序を逆にして全国団体の自民党支持を見直すことにより、政権交代に結びつけていくことこそ考えていかねばならない。一つの団体が、比例区に二つの政党から出馬させるというのもその団体の活性化には大いに役立つはずである。つまり、政治の場にこそ競争原理を働かせる必要があり、山崎・高竹両氏の動きはまさにこの流れに沿ったものである。
二大政党制の一歩は、山崎・高竹両氏の動きから始まっているといってもいいのではないか。

投稿者: しのはら孝

日時: 2007年2月 7日 18:20