2008.01.30

経済・財政

道路特定財源問題(その1)08.01.30

道路特定財源の一般財源化問題は、民主党が第169回通常国会を「生活第一・ガソリン値下げ国会」と位置づけることにより、一挙に国民的関心を呼ぶことになりました。暫定税率を停止すると1ℓあたり25円ガソリン価格が下がることから、民主党は1、2期生でガソリン値下げ隊を編成しました。私は参加しませんでしたが、1月16日 パシフィコ横浜の党大会後、第一声を挙げました。象徴的なことをピックアップしたわけですが、この問題はいろいろな観点から見なければなりません。

まず、それは道路特定財源の成り立ちから見ていかねばなりません。日本の道整備が必要とされる頃、今から54年前にひな型が出来、34年前に暫定税率も導入されました。自動車がまだ贅沢品とされていた頃の話です。そして、それが度々延長されました。この税収により日本の道路整備に役立ったことは事実です。
ところが、自動車は公共交通機関が次々消えていった地方では、庶民の足としてなくてはならないものとなりました。一方で道路整備が相当進みました。こうしてそこで道路特定財源の一般財源化が問われるようになりました。状況の変化に合わせた当然の見直しともいえます。
しかしそこに問題が生じます。地方の人たちが車なしでは生活出来ずに多くの揮発油税を納めており(収入の低い人たちが多くの税金を収めているのに)それを一般財源化するのはおかしいのではないかという税の公平性の問題です。地方から道路無しでは生活していけない、引き続き道路特定財源が必要だ、開かずの踏切をなくす必要がある、救急車が通れない国道があるといった大合唱が繰り広げられました。一理あります。
この論争に拍車をかけたのが、民主党の主張、すなわち租税特別措置法の見直しによる暫定税率の廃止です。石油価格高騰で困難を極めている地方の人たち、すなわち、農林漁業者、トラック業者等に少しでも安い燃料を届けるという、極めて現実的政策です。これにより、2.6兆円の税収が減り、地方財政だけでも9000億円の減となり、予算が組めず大混乱が生じると、地方自治体関係者(知事、市町村長)が騒ぎ出しました。
かくして、前回のブログの通り、ガソリン代の値下げを望む国民+民主党対地方行政関係者+政府与党という明白な対立構図が出来上がりました。
この問題にからむ、1つ1つのことについて私の考えを述べてみたいと思います。

(1)これ以上道路は必要か
 明確な答えは、道路が足らない所には必要だという事になります。そして、どんな道路でもあったにこしたことはありません。ただ、今すぐ緊急に必要かというのでありません。それに少なくとも都市部ではもう十分という感があるのではないでしょうか。
国際比較で見ると、道路密度は、日本は群を抜いて高いのです。狭いところに多くの人が住み、人口密度が高いのだから当然のことかもしれませんが。日本の道路は全体で見ると、舗装率も高く、整備されているといえるでしょう。問題はここでも地方と都市の格差で、地方の道路整備が遅れていることにあります。中山間地域等の必要な財源は確保しなければなりませんが、今や道路特定財源は余り始めているのです。ですから今は高騰するガソリンの価格を下げることが、一番国民のためになることなのです。
(2)地方の財源不足をどうするか
三位一体改革で地方交付税が大きく削られ、地方自治体は大弱りです。それを棚にあげておいて今になって道路特定財源の減のみをあげつらうのはおかしな話です。正論で言えば、道路特定財源からなどではなく、正々堂々と地方に財源を移譲していくべきなのです。金も人も物も情報も何もかも、大都市に集まりすぎているのが問題なので、ふるさと納税ではないですが、地方にお金が行く仕組みが必要なのです。
 民主党の反論は、国の直轄事業3兆円のうち地方公共団体負担分1兆円は、直轄事業にふさわしくないので、全額を国が負担すればよい、それで1兆円の余裕が出てよく言われる地方の9000億円の欠損は解消できるというのです。これに対してはその国の一兆円なりはどこから手当てしていくかという問題が残ります。これに対する再反論は、他の施策の無駄を省いて捻出するということ以外にありません。
とりあえずの問題については以上です。これからこの問題についてざっくばらんな考えを続けて述べていきたいと思います。

(3)国土交通省の差し金
 私が政界に入った2003年11月以来いくつもの与野党の対立がありました。年金問題、郵政民営化問題、農政問題等、総選挙や参院選の焦点にもなりました。
年金問題、政府案に対して、民主党が例えば消えた年金等問題点を指摘しつつ、基礎年金を消費税で賄う案を提示しています。どちらかというと民主党は問題点を指摘することが中心で厚労省は防戦一方です。
郵政民営化は、総務省は本音では冷たく、もっぱら小泉首相が一人芝居を演じ引っ張ってきました。
農政の直接支払い、農業者戸別所得補償をめぐる対立は、2004年の参院選の前の「農業再生プラン」の公表により、常に民主党がリードしてきました。
このようにメインプレイヤーが少しずつ異なります。
そうした中で今回の暫定税率をめぐる対決はちょっと異なる趣があります。まず、民主党が暫定税率の廃止を主張し、挑戦者がつっかかっていることが特徴的です。そして、年金の時と異なり、民主党参議院の第一党となり、いまだかつてない立場を活かして租税特措法を通さないという、言わばあいくちを突きつけていることです。つまり参議院選の勝利により実現できる可能性があることにあります。そして第2は賃金の上がらない中で物価が上がり困っている国民の72%が、民主党の主張を支持しています。第3に国土交通省が道路財源の確保の為にあの手この手で予算の確保に奔走していることです。厚労省・総務省・農水省とも控えめにしていましたが、国交省は知事・市町村長・県議等を総動員して偽装県民集会も開いています。
正確に言うと、今国会の議論は、民主党(国民)対自民党(道路族、国交省)となることになり、国土交通省が後者の後ろ盾となっているのです。それだけではなく、我々民主党は議論武装し国民にわかりやすく訴えていかなければなりません。

投稿者: しのはら孝

日時: 2008年1月30日 17:21