2008.03.21

農林水産

中国毒ギョーザ事件(2)08.03.21

3月20日記
<高濃度汚染は故意の証拠>
 3月14日の新聞で、千葉県市川市の母子が被害を受けたギョーザから3000ppm以上の極めて高濃度のメタミドホスが検出されたと報じられました。
 私は、先に袋が汚染されたのではないかという推理をしましたが、どうもそうでもなさそうです。天洋食品の他に仁木食品のものも汚染されていましたが、袋は別のところで作られていました。もしこれが同じ東洋製袋で作られた袋を使っていたら、まさに袋の製造過程で汚染されたと考えてよかったのですが、3000ppmというのは、ギョーザそのものにメタミドホスがふりかけられた(?)とみる以外ないようです。

<窮地に立つ中国>
 中国は、北京オリンピックを控えているというのに、この事件といい、チベットの騒動といい、大変な難問を抱えることになりました。チベット問題は別の機会に譲るにして、中国の食の安全が揺らいでいるのは、厳然たる事実です。アメリカでは、中国産のペットフードで被害が生じリコールがおき、中国国内では薬品で多数の人が亡くなっています。2月9日のNYタイムズ紙ではアメリカのオリンピック選手団は、直前にしか北京入りせず、食料もすべて外から持ち込むとも報じられています。イギリスもマカオに選手団を滞在させ、直前に北京入りすると表明しています。挙げ句の果てに、マラソンの世界記録保持者ハイレ・ゲブレセラシュ(エチオピア)は、北京の汚染された空気の中で、マラソンはできないと表明している。国威発揚の場として全力を挙げてきた中国にとってはメンツ丸潰れの事態が生じています。

<中国のとんでもない言い訳>
 苛立った中国は、安藤隆春警察庁次長が捜査協力の話し合いに行き帰国した翌日、突然とんでもない推測をし始めました。中国で汚染された可能性は極めて低い。日中関係の悪化を望む分子がメタミドホスを日本に持ち込み、日本で汚染された、外からふりかけられても中国の実験によると87%が染み込んでいる、等などいろいろ言い訳し、まさに泥仕合の様相を呈してきました。3000ppmの汚染は外からしみ込む程度を越えています。客観的な状況から見て、ギョーザの製造過程で汚染されたとみて間違いなさそうです。
<禍い転じて福となる>
 新しい仕組みは、重大な事件をキッカケにできあがるケースが多いようです。例えば、食の安全に関わるJAS制度は馬肉が牛肉と偽って売られていたことをキッカケにできあがりました。今、同じ動きがあり、従来生鮮食品にだけ義務付けられていた「原産地表示」が、加工食品にまであまねく拡大されようとしています。あちこちの原料が入っているとか、ちょっとしか入ってないものもあるとか技術的問題がいろいろあることはわかりますが、原産地をきちっと表示して、買うか買わないかは消費者が決めるのが、時代の流れです。

<中国食品全面禁輸もあってしかるべき>
 日本は、BSEについては、まだ誰も被害者がでていないにもかかわらず、アメリカ産牛肉をすぐ輸入禁止にしました。それを10人がとたんの苦しみを受けて入院までしているというのに、禁輸措置がとられていません。アメリカ側は、問題を起こした工場だけに限定して輸出禁止にすれば十分ではないかというのも聞き入れず、全面禁止しました。これに比べたら、天洋食品工場のものはもちろん、JTフードの食品輸入を全面禁止してもおかしくありませんが、さっぱりそういう声が上がってきません。アメリカからみると、なぜ米国産牛肉にだけ厳しく中国産ギョーザには甘いのかとクレームをつけられても仕方ない状況なのです。

<低賃金に乗じるいやしい生活はやめよう>
いくら中国の人件費が安いからといって、ギョーザまで中国で作らせ、それを輸入するというのは、少し考えても異常なことなのです。私の大学時代は、紛争で明け暮れ、まともに授業が行われない時もありました。その時に建てられた立て看板の言葉を借りれば、「日本人は、中国人の低賃金労働に乗じて搾取している」ことになります。つまり、安いギョーザは中国人の低賃金労働、重労働の賜物なのです。こんな見苦しいことは続けるべきではありません。

<フードマイレージは少なく>
 次に問題なのは、冷凍し、保存してはるばる日本に運び、それを解凍する過程で無駄なエネルギーを使っていることです。この地球環境時代にあってはならない無駄なのです。フードマイレージが嵩むほど、汚染の危険がまします。安さだけを追い求めるのはやめ、食べ物は、なるべく「顔の見える範囲」のものに限るべきなのです。もっと言えば、ギョーザぐらい家庭の味を味わってもいいのではないでしょうか。つまり、「地産地消」「旬産旬消」しかないのです。
 今回の事件を機に、輸入に頼り切る日本の食のあり方が問われ、日本の食行動が少しは是正されていくことを願わずにはいられません。それが、食の安全に敏感な日本人の安全に、そして食糧自給率の向上につながります。

投稿者: しのはら孝

日時: 2008年3月21日 14:41