2008.04.03

政治

チベット騒動と日本の役割08.04.03

2008.3.26記
3月26日(水)、やっと国会審議が始まり、外務委員会で30分間質問しました。
 一般質疑で、私は対中国外交に絞って、①東シナ海資源開発問題②中国産毒ギョーザ事件③チベット騒動について、日本の対応のあるべき姿を質問しました。
③のチベット騒動について、日本はほとんど目立った行動もせず、発言をしていません。世界の先進諸国では異例です。

<チベットと中国の違い>
 チベットは、1951年突然 毛沢東中国に侵略され、自治区になっています。
 毛沢東がチベットに侵攻してすぐに取り組んだのが、道路建設です。インドを通って侵攻し、それが中印の国境紛争の原因の一つにもなっています。つまり交流する道もなかったのですから、チベットが中国の一部というのはおかしな話です。
 1959年に暴動が起き、それを鎮圧して出世の突破口としたのが、今の胡錦涛主席です。
その胡主席が人民代でご満悦の時に、ラサで暴動が起きました。まさに歴史の皮肉です。

<胡耀邦と江沢民の違い>
 毛沢東は、言語を強制しませんでした。また。もう1人の胡、胡耀邦は、80年代にチベットを訪問し共産党の失敗も認め、開明的態度をとりました。その胡耀邦は、日本の青年3000人を招くなど、日本との友好関係も大切にし、中国の民主化、自由化を推進しました。中曽根康弘首相は靖国参拝し、それを恒常化しようとしましたが、胡総書記の立場を悪くしてはいけないからと思いとどまったとも言われています。今と違い、首脳同士の信頼関係があったのです。
 ところが、その胡総書記は、守旧派に追われて87年失脚、89年死亡、それを悼むデモが天安門事件につながりました。
これに対し日本に対しても、チベットに対しても強硬な態度をとったのが江沢民です。日本に対しては、歴史認識問題、教科書問題を取り上げ、国民の反日感情をあおりました。01年にチベット独立防止の方針を示しました。どうも、胡主席は江沢民につながるようです。つまり、一事が万事なのです。

<ダライ・ラマ14世と会う各国首脳>
 政府首脳が誰一人、ダライ・ラマ14世と会っていません。アメリカは2007年、議会が最高栄誉である黄金章を与え、ブッシュ大統領夫妻がホワイトハウスに招きました。会うのは4回目だそうですし、当然、中国はお冠ですが、大国アメリカは意に介しません。

 ところが日本は昨年の来日時には民主党の鳩山由起夫幹事長が会ったくらいです。
アメリカは、タイミングよく偶然ペロシ下院前議長がダルムサラ(インド北部、チベット亡命政府)を訪問し、ダライ・ラマ14世と会談しました。民主党の人権擁護派の重鎮で、①国境なき記者の受け入れ、②中国とダライ・ラマ14世の直接対話等で合意に達しました。5月にはダライ・ラマ14世が訪英し、ブラウン首相に会談します。もちろん、中国は会わないでほしいと要請していますが、イギリス政府も聞く耳を持ちません。

<腰が引けている日本>
 いずれの国も一つの中国を支持しており、チベットの独立を認めているわけではありませんが、会ったからといって中米関係や中英関係が揺らぐものではないと平然としています。中国の人権状況の改善を求める無言のプレッシャーになります。ブッシュは信仰の自由を認めた方が中国にとっても良いと嘯いています。ダライ・ラマ14世も中国の批判をいつものことだと一笑に付しています。イラク派兵、インド洋の給油に見られるようにアメリカが言ったら何でも盲目的に追随する日本が、こうしたいいことは何も見習おうとしないは大きな疑問です。腰が引けすぎています。

<オリンピック前に警告を>
 中国はダライ・ラマを国家分離主義者とののしり、ダライ・ラマは、高度な自治を要求しているだけだと反論しています。中国は、今威信をかけた北京オリンピックの前なので、世界の世論を気にしていますが、それが過ぎるともう耳をかさなくなる怖れがあります。この点をよくわかっているのがアメリカです。ぺロシ下院議長は、「チベット問題は世界の良心への挑戦」と述べ、中国に自制を促すとともに、人権状況の改善を強く求めています。当然のことです。

<対中人権外交ではアメリカを見習わず>
こうしたことを受け、外務委員会では高村外務大臣に対し、「アメリカが中国の暴走を押えんとしていろいろ動いている。それにもかかわらず、常日頃イラク派兵問題やアフガニスタン問題でアメリカに追従する日本がこうしたいいことをしているときに従えないのは、おかしいのではないか」と問いただしました。特に具体的な例として、ダライ・ラマ14世と我が国の首脳はほとんど会おうとしないのはいかがなものか、臆病すぎるのではないかとも問い質しました。ブッシュ大統領は前述の通り、四回も会っています。他の首脳も会っています。それに対して、わが国の首相はちっとも会っておりません。それに対して高村外相は、「日本は何も対米追従の外交をしているわけではない」などと高飛車な答弁をしてましたが、本当のところは中国に気兼ねして、ダライ・ラマと会えないという及び腰であることは明らかです。

どこの国に対しても、あげつらいような態度に出るべきではありません。しかし、中国側が変な大国意識を持ち出してきたときにはその点をきちんと問いただすべきです。例えば、あまり大きく報じられておりませんけれども、昨年の5月、キーテング米太平洋司令長官が訪中した折、中国海軍幹部が、ハワイの東側海域はアメリカ、西側海域は中国が治めると述べたと上院公聴会で証言しています。唖然とするしかありません、国として上り坂で高揚感が先に立つのはわかりますが、こんな時こそ冷静な忠告がお互いの為です。
<ダライ・ラマ14世来日をとらえず>
こうした折、ダライ・ラマ14世が来日するとも伝えられています。アメリカに対しては駐留米軍経費で「思いやり予算」とやらで調子よく振る舞い、中国に対してもおどおどとした態度ではいただけません。
日本もしっかりとした姿勢を示していく絶好機ですが、どうも外交の福田とか言われているのに少しもパッとしません。後者については4月2日の外務委員会で、質すことにしています。

投稿者: しのはら孝

日時: 2008年4月 3日 17:44