2008.04.16

経済・財政

思いやり予算改め、悪女の深情け予算08.04.16

4月2日と4日の外務委員会で、「在日米軍駐留経費負担特別協定」いわゆる思いやり予算について質問しました。
<金丸信の口癖>
私は、私自身の頭の整理の意味も含め、この思いやり予算の経緯を一覧表にまとめてみました。
そもそも、ことの始まりは、ベトナム戦争と経済不振で双子の赤字を抱えたアメリカの経費負担を少しでも軽減しようと、時の防衛庁長官 金丸信の「思いやりというものがあっていい」(88年 衆議院内閣委員会)という発言からネーミングされたものです。国会議事録検索システムで、金丸信発言の"思いやり"という言葉を検索すると、それ以前にも"思いやり"という発言がかなりの数でヒットします。金丸信は地方のダム建設も、電話交換手の退職金も "思いやりを持って"と言い、口癖の一つではなかったのではないかと思います。

<なし崩し的経費負担>
時代背景を考えると、確かに、円高ドル安の影響が多大にあり、米軍将校の給料より、米軍基地の警備員のほうが高くなるという事態が起こるなど、その時は本当に思いやりが必要な時であったのかもしれません。導入当初は、労務費のごく一部のみ暫定的に負担するほんの小さな思いやりに過ぎなかったのです。(87年 62億、88年 280億)ところが、なし崩し的にその思いやりの範囲が広がっていきました。81年には日米地位協定外の特別協定となり、住居手当・退職金を負担(1096億)、91年には、労務費の基本給や光熱水料まで負担(1776億)、96年には移転訓練費の負担を始め最高額(2735億)もの負担をすることになり、安保条約とは逆の義務的条約のようになったのです。

<日本を守るのは自衛隊>
私はこれらの経緯を踏まえ、高村外相に、金丸信の時とは事情が違う、アメリカが全体の米軍再編の動き、良くも悪くもテロ特措法・イラク人道支援措置法が出来、日本自身の安全保障に対するスタンスが大きく変わっている、それにも係わらず、この経費負担だけが余り変わらない、と指摘しました。高村外相は、安全保障面のみとりあげ、北朝鮮が核実験をやり駐留米軍経費を削減する状況にはないとの答弁でした。そそれを認めるとしても、日本を守るのは米軍ではなく自衛隊ではないかとすぐ反論しました。

<国際比較できない外務省>
日米地位協定は2001年以降ターニングポイントを迎え、光熱水料も地域外は対象外、人数上限も現状維持、経費節約規定を盛り込むなどようやく節約の方向に動きだしました。
協議を行なう際に参考にするのは、国際比較です。各国の協定内容の一覧を外務省に資料要求したところ、なんと、諸外国と米国との協定の状況は把握していないとの驚くべき回答が返ってきました。外務省が外務省なら、防衛省も防衛省です。米軍の施設内の住宅に電気・水料のメーターはあるのかと聞いてみたところ、把握していないとの答えでした。しらばっくれてるのか、さぼっているのかよくわかりませんが、無責任なことは間違いありません。

<節約の実行性なし>
私の妻もそうですが、世の主婦は、なけなしの家計費から、少しでも安くてよいものを買い、節約するため、スーパーのチラシ広告を見て、わざわざお店を回り、商品の相場価格を掴んだ上でやっと買い求めています。また、毎月の光熱・水料を確認し、使わない電気は消し、お風呂の水を洗濯に回します。これこそが節約というものなのではないでしょうか。相場価格を知らないで交渉する外務省は、どうやって節約の交渉をしているのでしょうか。また、戸別のメーターも無いのにどうやって節約がわかるのでしょうか。

<各国比較の異常数値>
何を言っても資料は出てこないので、私自身で様々な資料を取り寄せ、各国の地位協定との比較一覧表を作成することにしました。結果は驚き以外の何物でもありませんでした。基地の中には米国軍人以外に基地を維持していく上で必要な従業員がいます。エンジニアや管理専門職などの専門的なものはいいとして、カウンターアテンダント、バー関連、ボーリング関連、映画映写技師など娯楽施設の従業員まであり、すべて日本の負担で賄われています。
また、驚くべきはその人数で、駐日米軍兵33,453人に対し、従業員は25,403人。つまり、米軍兵100人に対し、従業員76名ということになります。韓国47人、ドイツ31人、イタリア43人に比べ多すぎることは間違いありません。世界中の駐留米兵の総数の17%しかいない日本が総負担額の53%と半分以上を負担しています、アメリカ政府に「世界一気前のいい同盟国」と揶揄されていてもいたしかたなしと言わざるを得ません。

<駐留米軍三分の理もなし>
ここまではまだ何らかの理由があり、仕方なしという部分もあるのかもしれませんが、最も理解が出来ないのが、米軍再編に伴う駐沖縄海兵隊のグアム移転経費の負担です。今までは、守っていてやるからお金を出せということだったのでしょう。ところが、今度は、出て行ってやるからまたお金を出せといっているのです。どう考えても理屈に合いません。泥棒にも三分の理ということわざがありますが、駐留米軍には三分の理もなさそうです。
政府側からは、あくまでも日米間の総合的負担バランスであるという言葉しか得られませんでしたが、逆にそのバランスこそ取り戻してほしいという思いで一杯です。
質疑の最後には、これはもはや思いやり予算ではなく、思いやり過ぎ、感謝もされない、「悪女の深情け予算」、「アッシー君の貢物予算」ではないかと皮肉りました。

疲弊し切り捨てられると悲鳴を上げる地方や、医療保険料が上がり、病院に満足に行くことが出来ないと嘆くお年寄りたちへの思いやりは減少の一途を辿る中、駐留米軍のためだけは超思いやる、バランスを欠いているのが政府なのは明らかです。

投稿者: しのはら孝

日時: 2008年4月16日 15:11