2008.09.18

外交安保

ジュネーブWTO(IPU)会議報告08.09.18

<日本農業の混乱の要因は輸入自由化>
 先の「花の都パリ『外交赤書』」の中にも書きましたが、1993年の12月ウルグアイアイランドの決着では、私が直接担当でもないのに、将来の日本の農業、農政を左右するWTO交渉のことはなるべく気にしないように心がけてきました。しかし、実は一番気になっていました。中国からギョーザを輸入しなくてはならなくなったのも、日本の農村から菜の花が消えたのも、そして日本の地方が疲労しきっているのも、元はといえば、安い外国産農産物や材木のせいなのです。そこにまた追い討ちをかけんとするのがWTO農業交渉なのです。いくら国内政策をがんばっても国境措置が緩かったら全く意味がないのです。
この点が国民一般に理解されていません。農業交渉こそ日本の農家に死活的重要なのです。
 胃が痛くなりかけた頃、幸いにしてインドのナート商工相が農産物の緊急輸入制限をめぐり、とても今の案ではのめないということで決裂しました。急に農産物の輸入が増えたときは、緊急輸入制限ができるようになっていますが、その条件が厳しすぎるという理由です。日本こそ、インドに組していいわけですが、傍観したまま、漁夫の利を得る形で救われました。このままいけば、重要品目(関税引き下げを免まぬがれる品目)が6%となり、メタメタな結果に終わる寸前だったのです。

<二泊四日の海外出張>
 解散総選挙が近づいている中、筒井信隆現NC農林水産大臣の代打で、急遽ジュネーブの各国の議員たちのWTO会議に出張しました、9月11から13日で当初の予定では、9月12日の臨時国会の開会日と重なりましたが、断れない理由がありました。自民党は谷津義男、若林正俊といった農政のプロを出しているのに、民主党は順番の海外出張という無責任。私が怒り改善を求めた手前断れず、選挙間近というのに渋々出かけました。役人時代で最も疲れる出張が3泊5日、それを2泊4日です。いろいろな意味で、国会議員のほうが冷遇されている気がします。参議院の大河原雅子さん(民主党)と市川一朗さん(自民党)の2人と一緒でした。

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<ラミーWTO事務局長の悪だくみ>
 ドーハラウンドは7月末にまとまりかけたのに、すんでのところで決裂してしまいました。ラミー事務局長は、ほとぼりのさめないうちに再開し、あわよくば今年末の任期までにまとめたい魂胆。そうはさせじというのが、少なくとも私(日本)その他諸外国。ファルコナー農業委議長もたっぷり参加する会合。若林前大臣から背景と対応について電話で30分ほど程の示唆がありました。
<参加者最多発言者>
 会合では3回発言しました。多分会合参加者の中で最大の回数のはずです。1つのテーマで2回の発言はできません。4テーマの中から1回述べる。あと2回はラミー事務局長とファルコナー農業委議長への質問です。いずれも3分なり2分という時間制限があります。
 質問-コメントの要旨は以下の通りです。
対ラミー:ドーハラウンドの開始時と比べ食料事情が大幅に変化した。中国・インドがSSM(特別緊急輸入制限措置)に反対し決裂したのが象徴的。したがって基礎的食料について別のルールを導入すべきではないか。
(これに対して、ラミーは、農業も他と同じ。補助金が多すぎると反論)

 対ファルコナー:日本ではミニマムアクセス米で2つの大問題が発生。1つは76万トンのうち6万トンの輸入が出来ず。もう一つは事故米が食用に回され食の安全の面からミニマムアクセス米は疑問が投げかけられている。こんな制度はもうやめる以外になく日本は来年は輸入しなくてもいいのではないか。
(ファルコナーは、ミニマム・アクセスは義務ではなく輸入の機会を与えるだけと答弁、汚染問題はSPS(食品安全規則)で処理と返答)

 気候変動と貿易:私の考案の地産池消・旬産旬消、フードマイレージの考えを紹介し、地球環境時代にはCO2排出を抑えるため、物の輸送を少なくすることが必要
(これに対し、会場から拍手が起こる)

 OECDと違い、ラミーとファルコナーへの質問を除けば、言いっぱなしで緊張感に欠けましたが、久しぶりの国際会議でそれなりの発言ができ達成感もありました。ただ、表立ってドーハラウンドの進展に反対するわけにはいかず、最後のとりまとめペーパーは、早い妥協を謳う点では、いつもの国際会議と同じになってしまいました。
 収穫は、国会答弁等でわかっていたことですが、ファルコナーはミニマムアクセスは単なる輸入機会の提供でよいと明言したことです。私は日本に帰ったらミニマムアクセスの放棄を政府に迫るつもりです。

<北島大使との懇談>
 9月10日、時差ぼけの中、北島大使公邸の夕食会に参加しました。北島寿府代表部大使には、在勤手当について外務委で質問した時の資料を届けました。私の著書「花の都パリ外交赤書」を数部買って部下に読ませたとのこと。昔話にも花が咲きました。また、私は届けていないのに「農的循環社会への道」と「EUの農業交渉力」の2冊の本が出てきたのにはびっくりしました。

 会議中に菅さんと小沢鋭仁さんから9月15日(月)の愛媛の農政会合に出ろとの指示がありましたが、私自身の選挙に専念することにします。

投稿者: しのはら孝

日時: 2008年9月18日 15:52