2009.04.27

政治

政治とカネ ―企業献金の禁止(廃止)―09.04.20-

<民主党政治改革本部の活動>
 政治に金がかかるとよく言われる。実際に政治家になってみると、半分実感する。但し、もっと仕組みをきちんとしたらそんなに金がかからないのになあ、と嘆息するのが半分だ。
 私はいつか私の全政治活動にかかるお金を例に示して、どこが無駄でどこが足りないか具体的に示そうと思うが、今は、国会も終盤に向かって急ピッチで動いており、質問対応と3回目の選挙の準備でそれどころではない。今週決まっている質問だけで、20日月曜の決算行政監視委員会と21日火曜の農林水産委員会がある。また、議員会館で隣室だった河村たかし名古屋市長候補の応援にも行かなければならない。
 小沢代表が、企業献金について、「今の制度の下できちんと政治資金報告書に書いて報告しているのに、それでもいけないというなら、全面禁止することも検討せよ」と命じた。岡田克也政治改革推進本部長の下、幹部役員が既に3回侃侃諤諤の議論をし、大筋の方向が決まった。私は、倫選特(政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会)の筆頭理事をしていることから末席を汚し、ずっと議論に参加した。

<民主党の方針>
 このような状況の中で決まりつつある民主党の方針は、以下のとおりである。
①○年後に企業団体献金は禁止
②それまでの間、政府や地方自治体に一定額以上の公費調達をしているか、公共事業を受 注している企業は、総務省に登録し、献金はできないようにする。
③政治資金パーティも同じく禁止
④献金を受け取ることのできる政党支部は1つに限定
⑤個人献金普及のため、一定の金額までは全額税額控除する。
 そして、先週、この内容に沿ったアンケート調査が全議員対象に行なわれている。私は、政治資金パーティは一度も開かず、寄附も個人献金がほとんどなので、実のところ、私にとっては何も変わらない。

<政治家のスタンスの違い>
 それぞれの議員の政治家としての拠って立つ基盤が異なり、それによりお金のかけ方もかなり違うことを反映して意見も大きく異なる。私はスタンスが少々幹部役員と異なるので、いつもと違い率直な意見を言うのを差し控えた。例えば、30代前半で政界入りし、今40代前半の中堅議員は、当然将来の総理なり大政治家を目指しており、地元事務所も大きく多く構え、私設秘書も10人は持つようになっているか、持とうとしている。そういう人は、秘書と事務所の維持費だけで1億円近く必要となる。人件費500万×10人=5000万円、家賃20万×12ヶ月×4ヶ所=960万円、交通費・活動ガソリン代50万×12ヶ月=600万円、備品・事務・通信費、光熱費...。これにポスター、ビラ、国政報告、集会、交際費、...と続く。そういう議員にとっては、企業献金の禁止など論外になる。

<小沢代表と私の大きな違い>
 小沢代表のように、将来政治を目指す秘書を多く抱え、その秘書を初選挙に臨む新人候補の所に派遣して選挙を手伝わせたり、中国に毎年有権者や政治家を誘って出かけたりすれば、かかるお金に際限はない。それに対し、私のように、今の制度の下、つまり、歳費2193万(税・社会保険料を引くと約1400万、これは家族の生活費を含む)、文書交通通信滞在費1200万、政党助成金1000万とわずかの浄財(寄附)のなかから、雇えるだけの秘書数人分の給与や、事務所の家賃などのすべての経費を支払っていくと決めている者には、企業献金など、全く別世界である。ちなみに、私が昨年もらった企業献金(長野県第1区総支部宛)は、高校の友人が経営する会社から5万、金持ち同僚議員の会社からの12万で合計17万円だけであり、政治団体からの寄附も、企業が作った政治団体からは全くなく、私の後援会(原資は個人寄附)と民主党からの寄附のみである。また、政治資金パーティは一度も開いたことがない。
<二つの相反する意見>
 今は名古屋市長選に忙しい河村さんは、「企業献金だろうと個人献金だろうと自由に金を集めるのが筋で、政党助成金もなしにして歳費も減額すべきだ」という。「有権者なり企業は、その政治家がどれだけ働くかよく見て献金してくれる」とのたまう。
 しかし、当の河村さんは、政治活動より顔を売るTV活動のほうを熱心にしているふしもあり、どうも現実味がない。私は、河村さんを「兼業国会議員」と呼んでいた。
 一方で名を伏すが(といってもすぐわかるかも)、人気絶頂の中堅議員は、「すべて個人献金にし、企業献金を禁止すべきだ」と主張する。ボランティア秘書がひきもきらず、秘書の給与など心配する必要がないからだろうが、こんな人は数人しかいない。それに、個人献金にしたところで、西松建設がやっていたように、ボーナスで払っておいてそれを個人の政治献金として献金させるという抜け道もできてしまう。
 理屈を通すとなると、すべて公的資金で賄うか、何でも自由かしかなくなるが、両方とも極論である。
 政治を国民の身近なものとし、誰にも機会を与えるにはどうしたらよいか迷うところである。

<55歳の新人は金をかけずにするしかない>
 企業献金を全面禁止したら、政治家には金持ちしかなれなくなることは間違いない。特に普通の若い人は、とても踏み切れないだろう。いつ落選するかわからないし、他に収入源がなかったらとてもやっていけない。つまり、相当危険な世界なのだ。
 私は55歳で官界から政界入りした(余談になるが、1982年から物書きをし、博士号も取り、農林水産政策研究所長も務めるなど学界にも所属した。冗談の好きな部下は、政界入りに際し、「篠原さんは官界に身を置きながら、農政関係の学界でも名を成し、政界入りされた。今回の転身が正解(政界をもじる)かどうか不明だが、頑張ってください」と励ましてくれた)。
 子ども3人がまだ学齢期なのが難点だったが、30年官界にいて同期の大半が辞めていく中での政界入りであり、やれるところまでやればよいと割り切っている。つまり、党内で出世し、グループも作って...といった野心はない。有権者の負託に応えて私の理想とする政策を政治の場で実現できればよいと思っている。
 ただ、その代わり、私設秘書はたった2人、事務所は小さいのが1つ、ポスターの掲示はたった1200枚、国政報告は年2回発行するのみ、...といったことになり、熱心な後援者からは、政治活動がみえてこないし、さっぱり秘書が顔を出さないとお叱りを受け通しである。

<周りにも迷惑をかける>
 私は、もともと天下りする気はなかった。幸い、某私立大学から来てほしいと言われており、そこで第二の人生を送ることを考えていた。少なくとも、政治家より可処分所得はずっと多いはずだった。その点では家族にしわ寄せがいっている。妻は当初、政策秘書(公設)として働いていたが、法改正で配偶者秘書を禁止されたため、その後ずっと無給のボランティアとして手伝ってくれている。そして、いろいろな会合に手弁当で(つまり、会費を支払って)参加してくださる有権者にも多くの負担をしていただいている。本人のお金だけでなく、周りにも迷惑をかけているのだ。

<昨年秋の選挙準備での出費>
 もう一つ、選挙準備にどれぐらいお金がかかるか示しておかないとならない。昨年10月、選挙が取沙汰された。長野市の中心部に事務所開きをしたが、家賃・礼金80万円、手数料42万円。駐車場を別途近くに借らねばならず、月極15万円。電話とパソコンの設置30万円。事務机等のレンタル30万円、等事務所絡みだけで一挙に200万円払った。3ヶ月借りたままだったが、結局選挙がなく、すべて水の泡。他にポスター印刷・リーフレット配布で300万円。金のない民主党は、まだ選挙が始まってないということで、選挙の際くるはずの1000万円の特別選挙資金は梨のつぶてだった。
 10月10日には田中真紀子さんに来ていただいて決起大会を開いた。会場代、ポスター・チラシ代等で80万の出費となった。


<倫選特の主(ぬし)宣言>
 ここで詳しく解説しても仕方ないので詳細は省くが、今回の事件を契機に政治と金の仕組みを変えていかなければならないことは事実だ。あまりにグレーゾーンが多く、それが不正の温床となると同時に、警察や検察がいつでも難癖をつけられることになってしまうのだ。
 私は、こうした矛盾を改善していくため、倫選特の主になろうと思っている。そして、政治活動がしやすいように、国民にわかりやすいように、精度を改善していかなければならない。

<ポスターの無駄再論>
 ごく身近な例でいうと、二連ポスターと称される講演会告知ポスターである。政治家本人のポスターは選挙活動だから、選挙が近くなると禁止するという馬鹿げたルールがある。今回、珍しく任期満了半年前となり、それが故に一人のポスターは3月10日をもって禁止され、それ以降は2人以上のポスターとしなければならないというのだ。2人以上だと政党の政治活動として許されると理屈は有権者には理解しがたいだろう。かくして候補者はまたポスター代にお金をかけ、ただでさえ人手の足りない我が事務所も張替え作業に大わらわとなる。1200枚ぽっちだからいいものの、5000枚も貼っている者は大変である。金がかからないようにと改正されてきた公選法だが、わざと無駄な金をかけさせてしまう結果になっていることも多くある。
 ポスターについて言えば、公示の前日には今のポスターをすべて剥がし、公示日には、その日にもらった1000枚の証紙を貼った候補者一人のポスターを貼ることが許される。1000枚に限定する証としての証紙だが、これは完全な人海戦術でするしかない。

<公営掲示板には誰が貼るべきか>
 また、公営掲示板があるが、それを立てるのは地方自治体の責務になっているのに、そこに貼り出すのは各候補者となっている。公示日には、全事務所があたふたとポスター貼りをせわしなくする。1日たって貼り残しがあると、たるんでいるとか言われる。全く馬鹿げた話である。
 私は3年以内に、①二連ポスター以上でないと貼れないなどという規制はやめ、②公営掲示板へのポスター貼りは、各候補が選挙管理委員会にポスターを届けるだけですまし(つまり、地方自治体がまとめて貼ってくれればすむのだ)、③それ以外の証紙ポスターなどはやめて、不必要な手間と無駄金を省くことができる。これだけでかなりすっきりする。1日も早く3回目の選挙を終え、4回目に備えてこの改正作業に取り組みたいと思っている。もちろん政治と金の問題も正面から取り組み、国民にわかりやすく、かつ、政治家にも過重にならず、不正や恣意的逮捕をなくす仕組みを作り上げたいと思っている。

投稿者: しのはら孝

日時: 2009年4月27日 12:08