2009.07.12

社保・医療

臓器移植法改正A案には反対-09.07.12-

 臓器移植問題は、私が国会議員になる前に集中的に審議されたが、日本は脳死による臓器移植に否定的な人が多く、子供については、海外に言って移殖を受けざるを得ないのが実情だった。ところが、国際移植学会が臓器売買やいわゆる臓器ツーリズムに反対し、自国での臓器移植を増やすように宣言し、WTOもその方向で勧告するだろうという情報が入るに及び、急遽、臓器移植法改正案の審議が日程に上がった。

<A、B、C、Dの4案>
 現行の臓器移植法では、脳死は本人に臓器提供の意思がある場合のみ人の死とされるが、一般には、鼓動と呼吸の停止等をもって死とされる。また、臓器提供の意思表示は15歳以上に限られているため、国内では子供の臓器移植はできない。改正A案は脳死を人の死とし、臓器移植は、本人に拒否の意思がなかったなら家族の同意ですべての年齢について可能としている。他の案はすべての脳死の位置付けは現行どおり、B案が12歳以上に臓器提供の意思表示を認め、D案は15歳未満については家族の同意で臓器提供可能とし、子供への国内での移植の道を開いていた。

<珍しい党議拘束なし>
 臓器移植法改正案は、採決の仕方が珍しい法案である。議院内閣制をとる日本では、ほとんどの法案は、党で賛否を決め、党議拘束がかかる。従って、意にそぐわない者は棄権(欠席)することが多い。あからさまに反対し、選挙で刺客まで送り込まれたのが、前回の小泉劇場型郵政選挙である。脳死をめぐっては意見が様々であり、個々人の人生観なり死生観に判断を任せるべきだというコンセンサスができ、この法案の採決に当たっては党議拘束なしで、議員個人の判断で投票することになった。私は、連日開かれていた4つの改正案の勉強会に参加し、それぞれの立場の方々からの意見や説明を聞いたが、聞けば聞くほどに疑問が深まり、最後までどの案に賛成すべきかよくわからなかった。

<人生観、死生観の差>
 私も小さな子供が、臓器を移植することで失わないで済む命ならなんとしても助けたいという気持ちはよく理解できる。しかし、一方、心臓が動いており、まだ体が温かいのに、脳死と宣言されたからといって、すぐに死を認めることはできず、なんとしても生かしておきたいという気持ちもわかる。移植で救える命は救いたいが、ドナーとなる人の命や尊厳も護らなければならないとおいう板挟みになるのは当然のことである。
 また、4つの改正案は一般の報道では、脳死の位置付け、提供可能年齢、提供の条件(本人の意思の有無)だけで比較されたが、C案だけにあった生体移植や組織移植についての規定も重要なことだった。

<臓器移植がしやすくなるA案の一挙可決>
 6月18日、臓器移植法改正案の採決があった。私は、最初に採決のあったA案には反対を投じた。まだぬくもりのある脳死状態を死と位置付けることは、現状では行き過ぎではないかとの判断からである。しかし、結果は意外にも、最初に採決されたA案が賛成多数で可決され、他の3案は採決されないまま廃案となった。

 臓器移植法改正案は、この後、参議院で審議されている。金にものをいわせ、海外で臓器の移植を行うようなやり方は続けるべきではないかとの思いもあり、国内の臓器移植への取組が一歩前進したことになる。参議院では、それぞれの立場の方々が納得できるように修正審議されたようだ。
 終盤国会、だれているが、7月13日参院で採択され、不信任案前に決着をつけることになりそうだ。臓器移植を待つ人たちにとっては朗報だが、今後の更なる検討が必要である。

投稿者: しのはら孝

日時: 2009年7月12日 10:28