2010.03.31

政治

質問主意書での提案の実現―個所付けをホームページで公表―10.3.31

<個所付けの事前通知>
公共事業の「個所付け」がホームページ上で公開されるようになった(3月26日国交省、29日農水省・環境省等)。「個所付け」とは、公共事業予算の個別事業への配分額のことで、たとえば、どこの道路や橋にいくら予算をつけたかを示したものであり、国会での予算成立後、各省庁が公表している。去年までは、与党議員を中心に多くの国会議員が公表間際に個所付け資料を各省庁から入手し、地元の自治体や地方紙に知らせていた。これは、国会議員が公共事業の個所付けに何か権限があるかのような儀式であった。

<役所と議員のセレモニー>
 個所付け情報は当然、各省庁から自治体や報道機関にも公表される。国会議員がいち早くその情報を地元に報告することの必要性はないにもかかわらず、役所や議員事務所の無駄な労力をかけてこの作業が続けられていた。役所は、議員事務所に配布するために個所付け資料を印刷し、配布場所や担当者を配置しなくてはならず、議員事務所は公表時間に秘書が各省庁を回り資料を集めてきて、そこから関係市町村の事業を抜き出し自治体に連絡するという作業をする。選挙区に複数の国会議員がいる場合は、競って同じことをしていた。

<時間と経費の無駄>
私は当初こんなことをする意味はないと、何もしないでいたら、地元の支持者から、「地元紙に、小選挙区の相手議員から個所付けの連絡があったとの記事が掲載されている、篠原さんもやらないとだめだ」と叱咤されたため、やむなく同じことをやってはいた。情報を提供した自治体には、丁寧に御礼の電報までよこすところもあり、明らかに悪しき慣例にみえた。
個所付け情報は、少し遅れるだけですぐにどこにもわかることである。このような無駄な手間暇や経費をかけていることを改めさせたいと思い、1年前、「質問主意書」で個所付け情報について政府に質問した。(下記に本文)

<最初で最後の質問主意書>
 質問主意書とは、国会議員が政府に文書でする質問のことで、その答弁書は閣議決定され、内閣総理大臣の名で出すという重いものであり、国会での質疑時間があまりとれない少数野党や無所属議員にとっては、政府の見解を質したり、情報を得たりする手段となっている。私は、幸い質疑の機会が最も多い議員の一人で、委員会での質問作成に力を注いでいたので、私の名で出した質問主意書はこの1件だけである。なお、与党になった現在、質問主意書は出せないことになっている。
 質問の形なので、国会議員を通じた個所付け情報通知について明らさまに批判はしているわけではないが、無駄な手間(税金)をかけて一部の者(国会議員)だけに事前に出す(公表間際の配布)のはやめるべきということであった。参考までに、質問と答弁の全文を末尾に掲載するが、当時の回答(答弁書)は、「質問の意味するところが必ずしも明らかでない」と、意味不明の答にすぎなかった。

<民主党政権の失態>
今年2月、予算審議中の国土交通省の公共事業の個所付け情報(仮配分)が民主党県連に伝えられ、一部の県連や議員はそれを地元自治体に公表してしまった。自民党政権でも表だってはやっていなかったことであり、予算委員会で野党となった自民党に追及され、平野官房長官が陳謝し、鳩山首相は前原国土交通大臣を注意処分にした。

<禍を転じて福となす>
今回、個所付け情報をホームページで公表することに決めたのは、この失態を挽回するためであって、私の質問主意書が功を奏したわけではないかもしれないが、結果としては、無駄と悪弊を絶つことができた。ホームページでの公表だと、公平性と透明性が得られ、印刷・人手・連絡等、すべての無駄が省ける。
国会議員が地元の声を聞き国に届けることは重要なことだが、国会議員の仕事は、国会で議論することにより国全体をよくすることであり、国から金を地元に取ってくることではない。
国会議員経由でなくホームページでの一斉公表という変更でも、意識改革の大きな一歩になるはずである。

<参考>質問主意書と答弁書・・・《 》内は私の解説

質問主意書
公共事業の個所付け情報に関する質問主意書(平成21年4月2日提出)
提出者  篠原 孝
 公共事業の個所付け情報について次のとおり質問する。
一 公共事業の個所付けは、どのようになされるか。《公平な基準で決めているか?》
二 公共事業の個所付けに国会議員が関与する場合があるか。《国会議員の介入はあるか?》
三 個所付け情報の公表、事業主体への通知の方法はどうしているか。《正規の公表ルートは?》
四 前記の他に情報を出すのは、どのような場合か。《公表前に国会議員に配布しているだろう?》
五 なぜ、国会議員に事前に情報を出しているのか。《悪しき習慣か?》
六 国会議員に事前に配布するために要する資料作成にかかるコスト(印刷枚数・部数・人員等)はいくらか。《税金の無駄遣いはいくらか?》
七 国会議員に事前に配布しない場合、公共事業の遂行・情報公開等に何か不都合はあるか。《国会議員への配布は不要である。》
 右質問する。

答弁書
衆議院議員篠原孝君提出公共事業の個所付け情報に関する質問に対する答弁書一及び二について
 お尋ねの「公共事業の個所付け」及び「国会議員が関与」の意味するところが必ずしも明らかではないが、公共事業の事業箇所ごとの予算の配分額は、予算が成立し、予算執行に関する手続等について閣議決定がなされた後に、各事業を所管する省庁において、事業主体の要望等を踏まえつつ、事業の必要性や緊急性等を総合的に勘案して、予算の範囲内で決定しているものである。
《「意味することころが必ずしも明らかでない」なら質問の意味を確認すべきでは?》
三及び四について
 お尋ねの「個所付け情報」の意味するところが必ずしも明らかではないが、公共事業の事業箇所ごとに決定した予算の配分額に関しては、記者発表や、資料を配布し、又は閲覧に供する等の方法により公表している。あわせて、事業主体に対し、関係する事業箇所について、決定した予算の配分額を文書により通知している。
《また「意味することころが必ずしも明らかでない」》
五から七までについて
 御指摘の「国会議員に事前に情報を出している」及び「国会議員に事前に配布」の意味するところが必ずしも明らかではないが、公共事業の事業箇所ごとに決定した予算の配分額の公表及び通知については、三及び四についてで述べたとおりであり、これに伴って特段の不都合は生じていない。
《またまた「意味することころが必ずしも明らかでない」・・・国会議員への配布については全く触れず、「資料のコスト」も不明、「特段の不都合はない」というのは全く答になっていない。》

投稿者: しのはら孝

日時: 2010年3月31日 16:05