2010.04.07

農林水産

郵政改革見直しで中山間地域・離島に金融機関を残す-10.4.7

<郵政の分社化の見直し>
 すったもんだしたが、3月30日の郵政改革に関する閣僚懇談会でやっと改正案がまとまった。これは専ら、預入限度額2000万円と保険加入限度額2500万円の議論が取り沙汰されていただが、私は今回の改革の最重要点は、現場を無視した4分社化を元の姿に戻したことにあると思っている。この点については、私は05年の小泉郵政選挙の後の郵政改革特別委員会でも質問しているが、この間の経過を知るものとして非常に喜ばしいことである。
 私はこのときぞっとしたのが、郵政の分社化の延長線上で、農協も、販売購買事業、共済事業、信用事業、営農指導事業と、4つに分けるとかいうとんでもない議論を規制改革会議でしだしていたことである。郵貯・簡保の300兆から次に80兆余りの農協の貯金・共済に触手が延ばされたからである。営農指導事業は技術・営農の指導であり、専ら提供するだけで肝心の収入源のない点で郵便事業よりもっと自活できない事業であり、現場を全く知らない空論の典型である。

<避けるべき中小金融機関圧迫>
 私が今財務金融委員会の筆頭理事をしている関係で、金融業界・保険業界・信金信組等からいろいろ陳情を受けた。陳情の内容は、「暗黙の政府保証」のある郵便局が政府出資のもと復活してくると、預金が郵便局に流され、やっていけないというものであった。この理由は、危なくなっても政府あれこれ援助の手を差し延べて、ほとんど潰れることのない大手の銀行はともかく、小さな信金・信組、あるいはほとんどそれに郵便局とだぶる農協には深刻である。

<ユニバーサルサービスは口実か>
 それでは本当の問題は、どこにあるか。私はユニバーサルサービスと称されているが、中山間地域・離島といったところの金融サービスの維持確保の問題である。郵便を配るという郵便局独特の基本的なサービスをどうやって提供し、本来ならば採算の合わない人口の少ない地域において、そのコストをどうやって賄うかにかかっている。郵政側からすると、そのユニバーサルサービスのコストを調達すべく、郵貯・簡保でそれなりに利益を上げさせてもらうというものである。しかし、いったいどれぐらいのコストがかかり、預入限度額なり、簡保の限度額をどこまであげたらどれだけ効果があるかは定かではない。従って、民業圧迫してはならないという反対との議論は平行線をたどるばかりである。

<農協支所が兼ねる簡易郵便局>
 私はここで、是非忘れてほしくないことが一つある。中山間地域・離島の郵便事業そして金融機関である。簡易郵便局が民営化の後、相当消えている。その多くが農協の支所が農協の合理化によって統合されることによりなくなっている。つまり、田舎では2005年の数字でいうと、約700局ほどあった農協の支所がしている簡易郵便局が現在では200程になっている。つまり、農協支所が携わっている簡易郵便局が、農協の合併により支所が廃止され、その結果簡易郵便局も同時になくなっているということである。ただでさえ過疎で悩む地域なのに追い討ちをかける形で、一挙に農協支所・簡易郵便局の2つの金融機関が消えてしまったのだ。これでは中山間地域・離島ではやっていけないであろう。

<農協と郵便局合体>
 私は農協側には今まで郵便局の仕事をやってやったのだから、肥料や農薬を売ったり、農産物を集めたりする仕事は統合した場所でやっても、信用事業と共済事業は簡易郵便局と一緒に出来ることなので、両方で支えあって、地方の金融機関としておくようになぜしないかと陳情の間に私が逆に陳情している。郵便局側にもそのように要請しているが、なぜかしら、けんもほろろの対応である。
郵政側は口ではユニバーサルサービスと言いつつも有利な条件を引き出す口実にしか使っていないのかもしれない。農協側も経営の合理化のため背には代えられず、人口減少にあえぐ地域から撤退しているとしか言いようがない。どうも巨額の金をどうするかということにばかり目が向けられ、口ではユニバーサルサービスといいながら、救済のための具体策は全然考えられていないようだ。

<簡易郵便局が農協支所を兼ねる>
 蛇足になるが、私は前回の選挙で、郵便局の皆さんも応援して下さるということで、企業訪問先リストに郵便局も加えた。ビックリしたことは、農協の支所と郵便局はほとんど目と鼻の先、集落内の一番の賑やかなところにあることが判明した。効率を考えるならば、別々にある必要はなし。郵便局と農協は少なくとも金融、信用、あるいは貯金、簡保事業については一緒にやったらいいのではないかと考えており、2010年の郵政改革特別委員会でも提案型の質問をしている。何を突飛なことを言い出すのかと思われたかもしれないが、私の言わんとすることは、田舎の簡易郵便局を兼ねる農協支所を絶対存続させるべきだということである。

<閣僚はNC大臣会合から脱却を>
 今回のこの改革について、亀井さんの暴走とも言われているが、それはあまりにも暴言である。郵政改革は亀井さんに任せたのであり、亀井郵政改革担当大臣と原口総務大臣の名前で談話が発表され、それを中心に話を進んでいくのが当然である。仙谷国家戦略担当大臣等が外に向かってあれこれ意見を言うのは御法度である。こうした大問題についていちいち閣僚懇談会を開いていては物事が進まない。どうも民主党の閣僚の皆さんたちは、野党時代のネクストキャビネットで何でも議論していた癖が抜け切っていないようである。政府の閣僚になったら所管事項をもとに動くのが当然である。

<赤松さんの感度のよさ>
 そういう点では、今回の閣僚懇談会では赤松農林水産大臣が総理に一任していこうということで声をあげたということは、組織の考え方としては当然のことであり、あっぱれと言うしかない。
例の大連立騒動があったときも赤松さんが最初に口火を切って反対だと言って流れが決まったという。私は、農林水産大臣という本業のほうはご苦労されているようだが、この2点についてさすが当選7回、政界を生き抜いてきた経験を感心する次第である。

投稿者: しのはら孝

日時: 2010年4月 7日 13:47