2010.05.17

政治

-マニフェスト作成を巡る民主党の柔軟性とエイヤー体質-10.5.17.

参議院選を控え、民主党は今、マニフェストの作成を急いでいる。私は政権与党になったのだし、あまりマニフェストにこだわらなくてもいいと思っているが、今回は常任委員会ごとにある政策研究会(前は質問等研究会と変な名前で呼ばれていた)の衣替え、あるいは後述する3つの研究会の設置、その他政調廃止を巡るいろいろな議論の果てに、新しい仕組みの下、突貫工事でマニフェストの議論が行なわれた。山岡国対委員長の下、体育会系ばりの研修(?)が続いた後だけに、145人の1期生議員が喜び勇んで議論に参加していた。私は進め方が気になったので、時間の許す限り会合に参加したが、意見を堂々と言う姿は傍で見ていてほほえましい限りであった。

<不透明に決められた前回のマニフェスト>
今回のプロセスには前回のマニフェストの作成過程と比べると、大きな違いがある。前回も、マニフェスト制定委員会というのは一応あったが、直嶋政行政調会長(現経済産業大臣)が相当独断で作り、アメリカとのFTA締結などと書き出し、一週間後に菅直人代表代行に修正のための記者会見をしてもらうというドジを踏んだ。私もこの収拾に相当エネルギーを費やした。
 私は、ちゃんと議論すべき、民主党は透明性の確保と言いつつ内部の決定におけるプロセスの秘密主義は何だ、役人に責任を取れと言っているのだから党こそ率先して責任の取り方の見本を示すべし、という3点を指摘したかったが、選挙が目前に控えていることから外に出すのはやめた。
民主党はあれこれ議論しているけれども、最後は極めて不透明な形で決まるとみられており、小沢幹事長の鶴の一声が代表例とされるが、エイヤー決定体質は民主党全体に当てはまることである。自民党が主要な問題については、極めて民主的に最後は総務会で怒鳴りあって議論をして決めるのと好対照である。

<うって変わった民主的議論>
 ところが、民主党というのは本当に柔軟な政党である。前述のとおり、4月から一斉にマニフェスト議論が始まり、今回は私の担当分野の財務金融政策研究会等でも財政健全化・デフレ脱却対策について提案した。また、決算行政監視委員会との合同で特別会計について議論を進め、参院選後に予定される行政刷新会議の特別会計事業仕分けも念頭に置いた提案をまとめている。
それに加えて今回は政調復活要求に対する妥協案の一つとして成立した3つの研究会(国民生活研究会、成長・地域戦略研究会、地域主権・規制改革研究会)で、連日大衆討議することになった。3つの研究会ともそれぞれの座長(中野寛成、大畠章広、玄葉光一郎)の思いのまま違ったやり方で意見をまとめていたが、一番オープンな議論を公明正大にやっていたのは、筒井事務局長率いる大畠研究会である。全員にアイデアを出させ、それをまとめ、さらにそれを議論し、尚且つマスコミフルオープンで議論した。こんな政党はないだろう。それなりのまとめを5月10日に上部のマニフェスト企画委員会に提出した。

<正直なお詫びチラシ>
マニフェストの議論の時に、私は「政権与党になり実行しているのだから、農業者戸別所得補償、高校の授業料の無償化、子ども手当等、やった実績をPRした方がいい」と提案した。これに対し「いやいや、やらなかった部分がある。それはどうするんだ」との意見があったが、それに対しては「実行できなくてすみませんと正直に書けばいいじゃないか」と半分冗談で反論した。
まじめな担当の皆さんはそれをそのままに受け取り、5月の連休前に送られてきた4ページのチラシの3ページ目右下に暫定税率をめぐって「約束を守れなかったことをお詫びします」と、細身のお兄さんが頭を下げているマンガが載っていた。前代未聞の正直なチラシである。我が民主党は組織も政策決定方法も未成熟で柔軟な面白い党なのだ。

<大幅修正派と小幅見直し派の対立>
前回は、我々は時々漏れてくる新聞報道でマニフェストの内容を知るといった具合だった。それをもとに私が農業者戸別所得補償の実施等について、いろいろと水面下の対応をした。そしていきなり7月27日に鳩山代表が500人の記者団を相手に記者会見を開いて公表した。この時と比べるとえらい違いである。
内容については、衆議院選挙から一年も経っていないのだから、あまり直すべきではないという人もおり、いやいや政権を獲ったのだから大幅に直す、例えば財政再建などを考えて、大幅に修正すべきだという人もおり、それらの意見が対立している。

<野党的な政策決定システム>
私は、そういう内容の議論はいくらあってもいいと考えるが、一つおかしな手続きがある。それはマニフェスト企画委員会に仙谷国家戦略担当相以下、政府側がずらりと顔をそろえていることである。マニフェストはあくまでも党のマニフェストである。政府が関与したら政府も約束するということになってしまう。それでは思い切った政策提案ができなくなる。水面下で政府との調整をしながら決めていくのは当然だけれども、表座敷で高島筆頭副幹事長以下の党側と仙谷さん以下の政府側と調整の議論をするのはいかにも不自然である。政権与党であることを忘れているのだ。

<最後まで透明な議論をすべし>
昨年の7月は不透明なやり方で、エイヤーで議論もせずに、当時の最高意思決定機関であったネクストキャビネットの閣議にもかけずに決められたマニフェストが、今度は公明正大すぎるほどに議論されて決められようとしている。ただ一つの問題は、これだけ議論したにもかかわらず、最後は一部の政府側を巻き込んだマニフェスト企画委員会で5月20日までに決められ、さらにその上の政権公約会議にかけられて、エイヤーで決められるということである。このエイヤー不透明決定体質はどうも民主党の十八番のようで、これも今後直していかなければならないと思っている。そうでなければ、党は活力を失ってしまう。

投稿者: しのはら孝

日時: 2010年5月17日 14:18