2011.01.08

農林水産

TPPは国をゆがめる -11.1.8- 北信ローカル2011年1月1日寄稿

 江戸時代末期から明治にかけて日本に来た欧米人の多くが、その強い印象を諸々の形で残している。「大君の都」(オルコック)等が有名であるが、それらを一つの本にまとめたものに「逝きし世の面影」(渡辺京二)がある。
 その中に、開国を迫りながら、一方で人々が皆足るを知り、祭りを楽しみ、子供を大切にし、町にはゴミが落ちておらず、犯罪も少ない、この美しい国日本に自分たちのルールを持ち込んで壊していいのかと、自責の念にかられることも正直に書かれている。

 それから150年余鎖国中でもないのに「平成の開国」「第3の開国」とやらの言葉が踊り、TPP(環太平洋包括的経済連携協定)により、10年以内にすべての関税をゼロにする話が持ち上がっている。究極のグローバリゼーションであり、日本の社会制度を根本から変えることに繋がる。そして、高関税が日本の不景気の原因でもないのに、自由貿易にすれば日本がかつての高度経済成長に戻るがごとき論調が目立つ。
 
 私は、物事はそんな単純なものではないと思う。
 むしろ、日本は過度の規制緩和や自由化により、地域社会がバラバラになり、共同体の持つルールが徐々に崩壊し、経済も停滞してしまったのだ。例えば物価が下がり続けるデフレの原因は、人件費が格段に安い東南アジアや中国から安い製品がどんどん入ってくるからに他ならない。これに対応出来なくなった製造業は倒産するか、海外へ出て行くしか無くなる。こうして雇用も消失しているのだ。政治は元の均衡ある秩序に戻すことこそ急務であるはずなのに、再び昔の錆ついた自由化のルールにしがみつこうとしている。一刻も早く幻想を捨て、日本の社会の強さを再び取り戻す政策に取り組まなければならない。
 そうしたことを議論する機関の一つとして、官邸に「食と農林漁業再生推進本部」が設置された。私は、今年一年この機関の切り盛りに全力をあげるつもりである。

投稿者: しのはら孝

日時: 2011年1月 8日 11:21