2012.02.28

国会での活動

韓国出張報告-12.02.28-

 今日本は、TPP参加交渉にむけて、各国との事前交渉を行っている。
TPPがどのようなものかは、今だに見えてはいないが、アメリカは韓米FTAが見本でそれをさらにきつくしたものと明言しており、TPPの姿は、米韓FTAを鏡に映したものとなることが予想される。
 10年の秋、経済産業省や財界は「韓国を見習え」「韓国に遅れるな」と声高に叫び、マスコミも連日それを援護する記事を書き続けていた。その見本である韓米FTAは、国会を強行採決で通過させたにも関わらず、正式には発効できないでいる。国民にはいいことだけ伝え、情報は隠して批准した後、次々現れ出た不平等な多くの内容に対する韓国民の怒りが、国を二分する大論争を引き起こしているからだ。日本の新聞等は、かつて囃し立てたことを恥じてか、TPPのご本家のこれらの混乱はほとんど伝えることはない。
 韓米FTAの現状を直接調査すべく、「TPPを慎重に考える会」の8名が、2月19日、20日の2日間訪韓した。私は団長として団を率い、韓米FTAに反対する韓国国会議員団から韓米FTAの問題点・米国の対応等直接意見を聴取し、意見交換を行ってきた。
新たな問題点に気づかされるとともに、日韓で情報を交換し、交流を重ねていくことについて共通の認識を得るなど、非常に意義のある出張となった。
 しかし、なによりも鄭東泳(ジョン・ドンヨン)民主統合党代表がふと漏らした「韓米FTAがこんな状況になっているのに、日本がなぜTPPに入らんとするのか理由がさっぱりわからない」という素朴な疑問が、TPP問題の進むべき道を語っていると思う。
 下記に、帰国後2月23日 TPPを慎重に考える会勉強会 韓国訪問団帰国報告にて配布した資料を掲載し報告としたい。

韓国出張報告
2012.2.23
文責 篠原
1.韓米FTA阻止汎国民運動本部(2/19 15:00~17:30 於:京郷新聞)
  今まで3段階の運動の展開
     ① (2006~2007/4)
       ・何も情報なく、NAFTAから学ぶ
       ・部門別(農民・労働者・学者・・・)と分野別(映画・農業・医療・・・)と組織化
       ・議員は、50名ぐらいだけで反対の会、現在80名
       ・スクリーンクォーターも危ない

     ② 2007/4~2011/10
       ・再交渉で、FTAとは直接関係ないが米産牛肉の輸入反対運動
       ・2008/6.10 100万名のろうそく集会。2カ月半デモが続く
       ・95% アメリカの利益、5%が韓国の自動車に有利、再交渉で5%もなくなる

     ③ 2011/10~現在
       ・かつて20%しか反対せず、今70%反対
       ・民主党が本格的に反対する
       ・2011年末まで一段落、4/11 7総選挙で牽制
       ・96名連名で、オバマ大統領 上・下院議長に書簡

  反対する4つの理由
     ① 民主主義の崩壊:国民も国会議員も内容知らされず
     ② 韓米の利益がアンバランス:自動車も米が有利に。韓は協定優先なのに米は連邦法優先
     ③ 毒素条項:ISD、Negative List、Ratchet  
     ④ アメリカの目的は、相手国の制度と法律を変えること:アメリカは見本とならず

  特許が広く認められ、ジェネリック薬が作りにくくなり、薬は高くなるおそれあり
  営利病院が導入され、医療費も高くなるおそれあり
  農業も種、肥料、農薬等の分野でアメリカ企業が進出してくるおそれあり
  119兆ウォンの農業対策は、寄せ集めただけで新規ではない
  盧武鉉前大統領は、リーマン・ショックをみて、判断を間違ったと反省
  韓米FTA交渉を始めたのは、民主統合党(前ウリ党)。
     ① 当時は知らなかった、反省する。
     ② 当初はよかったが、再交渉で内容が米が圧倒的に有利になったから反対、と2つの理由。

2.宋基旲弁護士、ハンギョレ新聞、京郷新聞論説委員(2/19 18:10~22:00 於ロッテホテル・三清閣)
  マスコミ2紙が反対の論陣をはってくれ、反対運動に役立つ
  内容がよくわかる加墨を取材して、NAFTAの悪影響を報告
  盧武鉉政権下では、開国と鎖国という対立で議論され、甘いこと(成長)ばかり宣伝される。
  アメリカ基準は、韓国や日本の仕組みを破壊するので絶対受け入れてはならない。
  地元商店街を保護するため、大手スーパーの営業時間を規制しようとしているが難航している
  次の3つが重要
     ① 内容と問題点を分析、知らせる専門家と各分野の知識人のネットワークが必要
     ② 被害者の各業界・各人が連帯する必要あり
     ③ 最後までやり抜く意思をもったマスコミが必要(インターネット、SNS)
  中心になるテーマ(ex国民皆保険)が必要
  韓米FTA賛成者は、経済的勝者と大手マスコミ、中小企業は反対
  変化を求める人々は
     ① 他の政策手段を示せず
     ② 局面打開のきっかけはでFTA、TPPを推進しているが間違い
  日中韓がよい。韓国は日本とのFTAは支配層が嫌がっている
  反対運動のトピックス
     ① 韓国がアメリカをダンピングで提訴しないという密約が暴露され公務員は1年の実刑判決
     ② 反対運動参加者が焼身自殺
     ③ 100名以上の裁判官がISD条項批判署名

3.鄭東泳(ジョン・ドンヨン)民主統合党、姜基甲(カン・キカプ)統合進歩党等 議員団
(2/20 11:00~13:50 於:国会内)
  絶対に韓国の真似はしないで、反面教師とすること
  韓米FTAがこんな状況になっているのに、日本がなぜTPPに入らんとするのか理由がさっぱりわからない。
  内容をよく知らず賛成していたが、韓国の主権を損い、未来世代の利益を損うと深く反省
  USTRの文章に、FTAは、韓国の法律、習慣、制度を変えることが目的とあり受け入れられない
  ISD、Ratchet、Negative List と経済主権を侵害する条項がある
  がん保険の限度額を4000万から6000万ウォンに引き上げる立法予告に対し、米商工会議所からFTA違反と書簡が届き、政府は取り下げた
  日本は、食料主権、農業を守ると国と一目置いていたが、今、暗澹たる気持ち。韓国FTAを学んでほしい
  FTAは貿易問題ではなく、経済主権、人権も侵害する
  豊かさや便利さの追及ばかりでなく、共存共栄を目指すべきだ

(その後記者会見)
  FTA、TPPの問題点について共通認識
  今後、議員間交流を継続
  3/12の日本のシンポジウムに参加

投稿者: しのはら孝

日時: 2012年2月28日 10:58