2014.11.11

政治

政治家の東京一極集中もひどいが、総理の東京一極集中はもっとひどい-土の匂いのする政治家が激減する中で本当に地方創生が出来るのか-14.11.11

 私は地方創生特別委員会の委員として、11月5日地方創生関係法の締めくくり総括質疑に立った。例によってこの質問には相当時間を費やして資料を作成した。
(関連資料はブログに掲載)

<何でも東京一極集中>
 日本はそもそも一極集中が問題なのである。富も人口も情報も何もかもが東京に集中している。 地方でも、例えば長野で言えば長野、松本、上田等に集中が生じ、中山間地域は限界集落だらけになってきている。こうしたことを直すのは政治の力しかない。それを日本は経済効率一点張りで、集中のメリットを追い求めることを放置し、何も手を打たなかったのである。その結果が、先進国では類例をみない超過密と過疎であり、都市と地方の格差の拡大である。
 ドイツはベルリンを除けば100万都市などごくわずかである。州への分権も進み、人口もきれいに分散が進んでいる。日本と同じく首都集中がみられるのは、フランスのパリぐらいである。

<政治家の東京一極集中>
 日本の東京一極集中でも最も酷いのは政治家の一極集中である。元々東京は25小選挙区、長野は5小選挙区となっている。それは1000万人を超える人口と200万人そこそこの差でありしかたがない。しかし、実際はそれだけではなく、もっと東京一極集中が進んでいるのだ。
 例えば第二次安倍内閣の閣僚の生い立ちを調べるとよくわかる。
 ませた人は小学校の低学年で人生観ができ、人格形成が行なわれてしまうかもしれないが、私のような鈍いのはその形成に大学までかかっているかもしれない。しかし、一般的には中学・高校の多感な時期を過ごした地において、その人の価値観が形成されるのではないか。そこで基準になるのが出身高校である。
 19名の第二次安倍内閣の出身校を見ると、東京が6名、首都圏(神奈川3)が3名と、約半数の9名が東京近郊育ちである。安倍首相:成蹊(私)、麻生副首相:学習院(私)、岸田外相:開成(私)、塩崎厚労相:新宿、宮澤経産相:筑波大学付属、竹下復興相:慶応義塾(私)、山谷国家公安委員長:駒場、甘利TPP担当相:厚木高校、石破地方再生相:慶応義塾(私)と続く。5名が私立の中高一貫高校である。
 実は、私はこの点に気付き、2009年5月に麻生内閣に対して問題提起していた。麻生内閣の時もその点はもっと酷く、17名のうち7名が東京、4名が首都圏(神奈川3・千葉1)で合計11名(65%)もが首都圏いう集中ぶりだった。選挙区は地方でも、ほとんど東京で過ごして成長した人たちが相当いるのである。これでは地方の悩みは本当のところでは汲み取れないのではないか。

<世襲議員はほとんど東京・首都圏育ち>
 元々人口が増大する都市部に多く衆議院議員が偏っているのが、それに加えて選挙区は地方でも、生まれ育ったのが東京という人がゴマンといるのである。つまり2世3世等世襲議員が多いことが、東京育ちの衆議院議員が多いことに繋がっている。ちなみに安倍内閣の8人の2世議員は全員が東京か首都圏育ちである。麻生内閣の時には、塩谷立文科相だけが地元の静岡高校であった。
 政治家はいろいろな階層のいろいろな人たちがなり、広く国民の意見を吸い上げるべきである。子供に継がせるべきではない。仮に子供に跡を継がせるなら、絶対に自分の選挙区の地元の小・中・高校を卒業するように育てて欲しい。そうでなければ東京への偏りは益々ひどくなってしまうと嫌味を付け加えた。
そういえば、鳩山邦夫委員長(福岡6区)も、旧東京教育大学(現筑波大学付属)であり、この範疇に属する。それに対し、地方創生特委の民主党議員5人のうち、渡辺周(静岡6区)、近藤洋介(山形2区)の2人の世襲議員がいるが、2人とも地元の高校(沼津東、山形東)を卒業している。

<急激に世襲が増大する日本の政治家>
 このことを時系列で考えてみると劣化の過程(?)がわかってくる。安倍首相の尊敬する岸信介内閣(約60年前)は一体どうであったか。同じく19人の閣僚のうち東京の高校卒業は3人、首都圏は2人、合計5人(20%)で安倍内閣の半分にすぎない
 それよりもさらに10年ほど前の吉田内閣(1946年)は、15人の閣僚のうち東京の高校卒業は2人(13%)だけにすぎない。また、麻生首相の岳父の鈴木内閣(1980年)の21人のうち、卑属つまり子孫が政治家になっているのが13名もいる。例えば鈴木善幸首相が息子の俊一、娘婿の麻生太郎、両方とも国会議員になっているので2人になる。このようなことは多分世界中で類例が見られないだろう。

<総理の東京一極集中が最もひどい>
 ふと気になったのが、今回初めて表にした歴代総理の東京一極集中度合いである。
 田中角栄首相から現在の安倍晋三首相まで調べてみて私もびっくり仰天することになった。1989年6月誕生した宇野宗助首相までは、全員が東京以外、地方の高校出身だった。
 その後の海部総理が私立の名門東海中学・高校だが、驚いたのはその後、宮澤喜一首相から現在の安倍首相まで、1人を除き全員が東京ないし首都圏の高校卒業だった。羽田孜首相も長野で生まれて育ってはいるが、高校は成城(私)であり、村山富一首相も大分が選挙区であるが、旧東京市立商業・現荒川商業高校の卒業である。
 25年間に生まれた総理のうち、森喜朗首相(石川)以外は全て東京近郊という偏りである。首都圏は、小泉純一郎首相(横須賀)と野田佳彦首相(船橋)の2名。そして意外だが菅直人首相は高校2年まで山口の宇部高校であり、父親の転勤で17歳の時に初めて東京に来たという地方育ちだった。一国のトップの育ちがこれだけ一極集中している例は他の先進国にはありえない。何故こうなるかと言うと、先刻の理由と一致する。村山、森、菅、野田の4人以外はすべて世襲議員が総理の座に就いているからである。残念ながら、その2世以外の議員も実は大半が東京ないし東京近辺育ちだったのである。これでは、本当に地方のことを思った政治をしてほしいといっても少々無理がある。どこか迫力や、真剣度が欠けてしまう。体で覚え、肌で感じなければ地方のために動けないからだ。

<アメリカ大統領の大半は地方育ち>
 これをアメリカの大統領と比べてみると、日本の異常ぶりがよくわかる。
 トルーマン大統領からオバマ大統領まで12人の生い立ちを調べてみると、ケネディーと父・ブッシュがマサチューセッツ州で重なるだけである。あとはすべて違う州であり、なお且つ何のことはない田舎育ちなのだ。
 例えばカーターはジョージア州のピーナッツ農家。レーガンはイリノイ州の中を数回引っ越し、クリントンはアーカンソー州で父親が交通事故死し、母親が再婚して育てられている。息子・ブッシュはコネチカット州のニューヘブンで少々都会育ちというだけである。オバマはハワイ州ホノルルで生まれ、両親が再婚したりして6歳でジャカルタに行き10歳で またハワイに戻りそこで教育を受けている。
つまり、日本のようにワシントンDCの近辺なり、ニューヨーク州の近辺なりで生まれ育った者ばかりが大統領になるといったことはない。また閣僚の大半が東海岸育ちということもありえない。日米トップの生い立ちを比べてみても、いかに日本の政治家の一極集中が異様かわかるというものである

<被選挙権を地元育ちに限定>
 極めて答えにくいだろうが、こんないびつな状況を直すにはどうしたらよいか、石破地方創生担当大臣に聞いたが、答えは当然のごとくきちんとしたのがなかった。代わりに、自分は中学まで鳥取で育った、もし、地方のことに思いを馳せずにいたら、選挙でも当選しない、と苦しい答弁が続いた。そこで私から、地方自治体議員に立候補するには3ヶ月の居住条件がある。国会議員には小・中・高校は地元か最低3年間は地元で働くという経験がない限り、その選挙区では出馬できないという制度にしたらいいのではないか、ときつい提案をしておいた。
 どこかの大学を出て、政治家を養成する塾に行き、縁もゆかりもない所で国会議員になる、いわゆる落下傘は、政治家として相応しくないのではないかと、どぎつい嫌味も付け加えた。

<学んで地方創生のために尽くす>
 ただ、あまりそれだけでは失望させるだけなので、最後に東京近郊育ち議員を救うために、李白と杜甫の比較の話を披露した。
 李白と杜甫は2人とも唐の時代に庶民の気持ちを詩に詠んだ人気の詩人であるが、どちらが偉いかという議論の時に、その論者は李白が偉いという結論を導いている。なぜかというと、杜甫はもともと貧しい生れ育ちで庶民の気持ちがわかり庶民の詩を詠んだ。それに対して李白は大金持ちの立派な家の息子であり、庶民の気持ちなどは体験としてはわからないにもかかわらず、自ら学習して庶民の気持ちになり庶民の詩を読んだからである。
 ということは、東京生まれで東京育ちであるとしても、しっかりと考えて地方創生のために全力を尽くすというなら、その政治家の方が地方生まれの政治家よりも立派ということなので、皆さんも力を合わせて地方創生のためにがんばりましょう、と結んだ。

投稿者: しのはら孝

日時: 2014年11月11日 17:13