2017.05.31

外交安保

節操がなさすぎる安倍内閣のTPP対応-アメリカ抜きは無意味は正論なのに、なぜこだわるのか理解不能-17.05.31

<朝から晩まで会議の連続>
 人によっては違うが、当選回数を重ねると野党でも質問などもうしないという大物議員(?)が多い。それどころか、委員会にはほとんど出席しない不埒な議員もいる。
 私はというと、5月の連休中は、前号で報告した通り、ワシントンD.Cにいて、5月6日(土)に帰国。7日(日)は、長野に戻り、地元業務をこなし、8日(月)に朝街宣をして上京。そして10日(水)経産委で地域未来投資促進法1時間、11日(木)農水委で農村工業導入促進法45分、12日(金)国交委で通訳案内士法25分と3日連続、別々の委員会で質問した。
 前日は、資料作りで連日午前様である。この間に、朝から原発、農水、経産、の党内の会合が入っており時差調整もろくにできず、クタクタである。

<にわか仕立てのハノイ出張>
 それでも今週は、少しは休めるかと思っていたら、5月20日(土)、21日(日)のハノイの「TPP11」閣僚会議への民進党派遣も、また私にお鉢が回ってきた。16日(火)夕方のことである。
 20日(土)まで3日しかない。政府・与党と異なり、政府関係者のアポは取りにくい。まして週末である。西欧社会ではほぼ不可能である。かくなる上は、私の個人的ツテで意見交換のアポをとるしかなかった。ところが、問題はどこに名刺があるかである。アメリカにもカナダにも韓国にも行っている。私は名刺を時系列・会合別に整理してきたが、関係者を探し出すために国別に整理し直したところ、ベトナム人は僅か5人しか行き当たらなかった。それをもとにベトナム人、NPOを中心に何人もメールしたが、大半のNPOは当然のごとく死に体のTPPには興味がなく、ハノイには来ないという。それでも、20日朝発の飛行機の中のi-Padに6通のメールの返事があった。ある意味便利になったものである。

<節操がなさすぎる政府・自民党のTPP対応>
 それにしても、政府・与党の節操がない対応には腹が立つばかりである。
 私は、5月22日(月)に帰国後、24日(水)に1時間経済産業委員会でTPP問題を中心に質問する予定だが、ここにいかに矛盾だらけの変節かを明らかにしておく。

 (1) 自民党の野党時代には、TPP絶対反対 (反対)
 (2) 2012年末選挙でも「聖域なき関税化は反対」で戦い勝利(反対)
 (3) 2013年2月安倍・オバマ会談で聖域があれば交渉に参加すると声明を出し、3月  に交渉参加決定
(参加に傾く ×大変身)
 (4) 2015年秋 国益は守れたとしてTPP交渉を進んで妥結へ。再交渉しないと明言(賛成)
 (5) 2016年秋 臨時国会で12か国で最初に国内手続きを終了。アメリカ抜きのTPPは無意味と断言(アメリカ抜きは無意味)
 (6) 2017年春 豪、NZとともにアメリカ抜きのTPP11で発効と言い出す(アメリカ抜きでも必要 ×再び大変身)

 つまり、反対→賛成→(再交渉せず)→(アメリカ抜きTPPは無意味)→アメリカ抜きでもTPP推進と二転三転している。これでは国際社会からも国民からも信用されまい。日本は自分の都合でどうにでも転がるいい加減な国というレッテルを張られてしまっている。

<見通しが狂いっぱなしの安倍TPP外交>
 2016年秋、政府与党は11月8日のアメリカ大統領選までには少なくとも衆議院でTPPの承認と関連法の成立を勝ち取ろうとしていた。そして10月末までに強行採決(山本有二農水相が2回失言)しようとしたができず、11月4日の採決も、あまりの政府・与党の暴走に大島衆議院議長が止め、何と11月10日の採決になってしまった。天罰が下ったのか、11月8日にはTPPからの離脱を大切な公約の一つとしているトランプ大統領が出現していた。ところが、発効の見込みが立たないにもかかわらず、参議院でも審議を続け、TPPを承認し、関連法の通過をさせ真っ先に付託した。

<アメリカ抜きのTPP11は無意味>
 11月の時点では安倍首相も「アメリカ抜きのTPPは意味がない」と明言していた。この時は、選挙公約は選挙公約でしかなく、トランプも大統領に就任したらTPPに入ってくるかもしれないと甘く見過ぎていたのかもしれない。しかし、日本の政治家と違ってアメリカの政治家は選挙公約を守らないとならず、現に守るのだ。2017年1月20日の就任式で、TPP離脱を明確に宣言してしまった。
 客観的にみて11月の安倍発言は正しい。ロス商務長官が言う通り、アメリカはTPP12か国でもGDPの65%を占める超大国であり、アメリカへの輸出を増やしたいと思っている。特に今回のAPEC主催国ベトナムは、国有企業でかなり妥協していたのは、繊維製品をはじめとしてアメリカへの輸出が増やせるというメリットがあったからである。それがアメリカ抜きでは何らメリットがない。マレーシアとともにTPP11に後ろ向きなのは当然である。
 日本は、窮地に立たされてしまったが、アメリカがアメリカ抜きのTPPを容認するという空気をつかむや、突然TPP11で行くと言い出した。農産物で他の農産物輸出国に遅れをとるアメリカをけん制し、いずれTPPに復活してほしいという淡い願望が透けて見えてくる。日本にはなんの主体性も感じられず、いつまでたってもアメリカの顔色ばかりうかがっている。

<TPPを諦めRCEPに乗り換えるのが筋>
 安倍政権は窮地に立つと「女性の輝く時代」「働き方改革」など言葉でごまかそうとする。「TPPイレブン」もその類である。「さわやかイレブン」を汚すなと言いたい。(もう知る人も少ない?)
 TPP交渉への参加の折には、「アジアの成長に乗り遅れるな」と声高に叫ばれた。しかし、肝腎の韓・中・台・比・タイ・インドネシア等の大国は入っていない。日本が本当にアジアの成長を取り込みたいなら、この際TPPからさっさと離れてASEANと中、韓、台、印まで入っているRCEP中心に切り替えるのが筋である。ペルーやチリはこの際、コロンビアその他の中南米諸国に加え、中国を含めるべきだと主張している。正論である。それをまだ日本はTPPに固執している。

<また農業・農作物を犠牲にするTPP11>
 TPP交渉の後半には、あまり経済的メリットがないことがわかってきた。すると突然、TPP推進派は中国包囲網のためだと言い出した。ところが、今や米中は北朝鮮への制裁を巡ってガッチリ手を握り、貿易収支の均衡を図るべく、中国が米国産牛肉の輸入を増やすなど調整が行われている。日本の頭越しの米中接近であり、中国包囲網などどこかへ吹っ飛んでしまった。逆に閣僚クラスで最後に議会承認が行われたライトハイザーUSTR代表は、日本に農産物貿易の開放を求めていくと、むしろ日本を標的にしている。つまり、日本がはじき出され、日本包囲網が出来ているのかもしれないのだ。
 そもそもカナダ・メキシコは、2011年11月、日本がTPP交渉に入るかもしれないと聞き及び慌てて交渉に参加したのである。それを農産物輸出の大お客様の日本にアメリカ抜きで農産物を低関税で輸出できるのだから、TPP11ほどおいしい話はない。豪、NZ、加、墨等の農産物輸出の国は、すべて日本を標的にしている。フラつくばかりの安倍内閣はまた農業を犠牲にして、アメリカをTPPに引き戻そうとしているのだ。

<再変身の悪あがきは許されず>
 それにしても、TPP11は前代未聞のへんちくりんな条約である。根幹をなす発動要件が変わるのであり、もし妥結したら、再び国会の承認が必要であり、関連国内法も再考しなければなるまい。条約の発効要件を歪めてまで発効させるといった強引なことは、いまだかつてやったことはないのではないか。
 日本の度重なる変節に、目を白黒させているはずである。共通するのは、日本のお手並み拝見という様子見の態度である。いずれにしても、大枠を決める大事な会合が続き、余談を許さない。TPPを真に粉砕すべく頑張らなければならない。

投稿者: しのはら孝

日時: 2017年5月31日 19:41