2020.04.22

社保・医療

【新型コロナウイルス感染症シリーズ4】(マスク1)マスクの対応で問われる日本の国力-マスク愛用国が世界に晒す醜態-20.04.22

<見えざる敵との戦争は戦後最大の危機>
 トランプ大統領を筆頭に、世界の首脳達はTV 画面に向かって国民に国難を訴え、対応策を説明、自らの指導力をアピールしている。当初は対応が遅れ、のんびり夕食会のはしごをしていた安倍首相も今や連日大演説をぶっている。ドヤ顔の小池都知事の記者会見に対抗しているようにも見え、興醒めするばかりである。
 口を揃えて「見えざる敵」コロナウイルスとの戦争であり、第二次世界大戦以来の危機だと言う。さすれば、我が国の防衛に殊の外熱心な安倍首相は、好機到来とばかりに手際よい対応をして見せてくれるかと思いきや、出遅れ、迷走、思いつき、唐突、と戦時だったら致命傷のことばかりの連続である。

<アベノマスクは論外の対応>
 身近なマスクを例にみてみよう。まず最直近の「アベノマスク」と揶揄される、布マスクの全国民への2枚の郵送である。誰もが気付いているので、私が今更追い打ちをかける必要もないが、頓珍漢な対応の代表である。
 イリノイ大学や米国立労働安全衛生研究所は医療用高機能マスクN95が微粒子の95%を抑えるに対し、布マスクの感染症防止効果は10%~30%と低いとしているが、ただ政府の言うとおり1億枚が20回洗って使えば20億枚に当たるという点は評価してもよいと思う。
 万人が認めるように同じ466億円のマスクの供給なら、必死で頑張っている医療機関や介護施設、学校等に回すべきである。国民がそれに文句を言うはずがない。新型コロナ対策の遅れや経済対策の不備を少しでも取り繕おうと躍起になっているが、空回りである。国民は貰える物は貰っておこうというぐらいの反応しか示さないだろう。そして、マスク不足の不安は拭えないままである。

<国力を問われる日本は?>
 戦争は国の総力を挙げての戦いであり、まさに「国力」が問われる。とすれば、一難あるこの時に国民のマスクがきちんと供給できるかどうかは、即時対応力を見極める一つの材料になる。病人と思われて着用の習慣のない欧米社会と異なり、日本人はもとからマスクを愛用する国民である。まして飛沫感染が危険とされる今は需要が何倍にもなることは見通せたはずである。それをすぐに手を打つことはなかった。
 緊急事態に即座に対応できる政治力だが、これは言わずもがなで論評するのも憚る。
 それでは、安倍政権なり自公政権が、農業や労働者をそっちのけでひたすら強化をしてきた「産業力」はどうなのか。必要とするマスクをきちんと供給できたのだろうか。多分世界の先進国の中で最も不足し、国民も国も踊らされているのが、悲しいかな日本ではなかろうか。

<各国とも自給できず中国依存ばかり>
 軍備も原発や石炭火力による電力もやたら自前に拘るのに、日本人の生命を守るのに大切な必需品でも安く作れる外国にどんどん行ってしまっても何の手も打ってこなかった。得意の経済効率一辺倒である。その典型でないがしろにされてきたのが、後述の農業・食料であるが、ここで一気に持ち上がったのは、新型コロナウイルス感染防止に必要不可欠なマスクである。
 日本の需要は55億3800万枚(2018年)、マスクの自給率は約2割、大半が中国からの輸入に頼っていた。これはアメリカもEUも大差はない。なぜなら中国は世界のマスクの半分を生産しているからだ。

<世界もマスクの効果を認め着用義務を課す>
 WHOもかつては「予防目的ではマスクの効果は薄い」としていたが、4月3日には、「他人に感染させる可能性が低くなる」、と一定の効用を認めた。ウイルスの排出を9割止めることができるのだ。
 またアメリカでも「健康な人は原則としてマスクは必要ない」(CDC)、「マスクをつけると自分を守れるという誤った安心感ができる」(ホワイトハウス)と冷ややかだったが、4月3日WHOの見解と同じく、「他人にうつさないのに有用」と一転して着用を推奨し出した。しかし、トランプ大統領は、「自分は外国の指導者の前ではしない」、と今も頑固に嫌っている。一方、メラニア夫人までもが「ソーシャルディスタンシング(1.8フート、2m)とマスクの着用を」とツイッターで訴えるまでになった。
 かくして、世界中でマスクについて認識が高まり、各国とも少なくとも感染者が周りに飛沫感染をさせることは防ぐことができることを認め、接客業には着用義務を課し始めている。

<後追いであたふたするマスク愛用国日本>
 日本のマスク不足はすぐに顕著化した。だから1月28日一応業界団体に増産を要請した。2月13日には安倍首相は月産6億枚と表明、生産企業の設備投資に令和元年度予備費より4.5億円の補助金(上限3,000万円)を出した。3月3日には国国民生活安定緊急措置法に基づき、家庭用マスクの製造販売業者等に物品を国に売り渡すように指示。3月10日、価格上昇(通常の50枚500円~1,000円が3,000~4,000円)でネット上の転売がひどくなったので高額転売を禁止...と、あたふたと対応している。
そして、3月31日には官邸での政府会合出席者にマスク着用義務付け、国会もそれに従うことになった。行き過ぎとはこのことだと思われるが、本会議場の登壇者も諸々も記者会見も、突然マスクのままである。私はここまで急に変わらなくてもよいのではないかと思う。トランプ大統領はマスクなし、しかもなるべく外で記者会見するようにしている。理にかなっているのはどちらか明らかである。
 このように遅ればせながら一応やることはやっている。しかし、次回に触れる台湾と異なり、マスクがさっぱり店頭に並ばない。何かが足りないのだ。
(マスク関係はあと2回続く)

投稿者: 管理者

日時: 2020年4月22日 17:16