2020.10.09

環境

【花シリーズ①】花の空輸は不要不急の代表ではないか - 花は地産地消・旬産旬消に徹し空輸などやめる - 20.10.9 -

<貯蔵が利かない花こそ旬産旬消が原則>
 コロナ禍の中でみんなが大変な影響受けているが、農業界では花農家と肥育牛農家が一番被害を被った。高級牛肉は、料亭やレストランの需要が激減してしまった。しかし、肉はまだ冷凍・冷蔵ができる。それに対して花は長い貯蔵は利かず、その時に使われなかったらおしまいである。つまり、旬産旬消しかない代物なのだ。冠婚葬祭が典型的であるが、大会やイベントの自粛の影響は大きく、需要が突然消えてしまった。
 私も会員の野党系「花き議連」は、2020年4月16日江藤農林水産大臣に花の消費拡大対策を講ずるように要請に押しかけた。その成果もあってか、5月を消費拡大のため「母の日月間」にしてキャンペーンを行うことになった。

<花農家に持続化給付金の申請を勧める>
 コロナ対策で、事業を展開できずに影響を受けた者に対して100万円補助する、持続化給付金が出されることになった。第一次補正と第二次補正合わせて4兆2,000億円と、農林水産省の本予算2兆3,000億円と比べてもいかに膨大かがわかる。
 私は秘書に命じて、影響を受けた農家も対象になるのだから花農家に持続化給付金の申請をするように勧めて歩かせた。なぜなら、ほとんどの農家はそんなことは自分に関係ないと勘違いしている。木島平村の農家が500軒で100万円ずつもらえるとしたら、例えば長野県木島平村に5億円のお金が入ることになり、村全体が潤うことになる。
 ただ問題は農家の大半の人たちはパソコンなどをいじったことがないことだ。そこはよくしたもので、都会で働いている孝行息子・娘が代わってやってくれているようで、喜ばしい限りである。

<「タダの代議士便」(長野から私自身が新幹線で運ぶ)で女性議員に花を届けて消費拡大に貢献>
 その途中ではたと気がつき、ささやかながら自ら消費拡大に貢献することとした。そこで上京の度に(大体花束で5人分、価格は1万円前後)持っていき、旧知の女性議員に贈ることにした。私の事務所では「タダの代議士便」と呼ばれている。背丈のあるトルコキキョウは横にできず腕が引きちぎられそうだった。私は通常の出荷についているプラスチックのバケツ(?)は当然取り除いたが、鮮度を保つためのもので、中身約5,000円の花の輸送費は約6,000円、と本体より高くなっている。つまり花こそ地産地消すべき代表的なモノなのだ。
 悲しいことに、女性議員はそれほど多くいないので9月末、その時々の花を5回運び、長野県の花・りんどうを最後にほぼ全女性議員に届け終わった。ただ私の上京・議員会館滞在と時間の合わなかった数人の重鎮には届けずじまいなのが気掛かりである。

<花は「不要不急」の代表か?>
 私は1978年、2年間のアメリカ留学から戻ると農水省農蚕園芸局総務課に配属されたが、その時に果樹課が「果樹花き課」という名前に丁度変わったところで、「胃の糧は食料、心の糧に花」のスローガンの下、1兆円産業を目指すことにしていた。つまり国民の生命を守るために絶対不可欠の食料と比べると、花は今風に言えば典型的な「不要不急」のものであり、それまで農政の対象としても軽視され続けていたのである。今は幸いにして「花きの振興に関する法律」もできて、農家収入を確保するための有用な作物として振興対象になっている。

<切り花の輸入割合は26%>
 花の生産額は多い方から、菊の625億円を筆頭に、2位は大臣就任祝い等の時に山と届けられる胡蝶蘭に代表される洋ラン(314億円)、そしてユリ、バラが続く。
 個人消費は国内消費で約1.1兆円の産業になっているが、花きの生産額は約3分の1の3,687億円、農業総生産額、9兆2,742億円のわずか4%に過ぎない。県別では愛知、千葉、福岡等の都市近郊の暖かい県が主要産地であり、花きが農業生産額全体の2割近くを占めている県もある。
 政府は、農産物の輸出を5年後に5兆円ととんでもない過大な目標を掲げているが、実態はかけ離れている。輸出は138億円(うち植木、盆栽が120億円と大半を占める)、切り花は僅か9億円。それに対して輸入は切り花が大半で、輸出の約50倍の511億円である。花全体では国内生産9割、輸入約1割であるが、高価な切り花類の輸入割合は数量ベースで26%を占め、カーネーション、バラ、菊類の輸入割合が高い。輸入の主な相手先は、コロンビア、マレーシア、中国そしてアフリカのケニアにまで及んでいる。

<今は飛行機が飛ばず花の輸入が止まり、価格は前年を上回る>
 最近は切り花の輸入割合が増えており、例えばカーネーションでいうと2007年は国産が66%だったのが、10年後の2017年には輸入ものと国産ものが逆転し、輸入が6割になってしまっている。つまり他の農産物と同じく輸入ものに相当押されているのである。
 ただ、3、4月は暖地の花は需要を失い大ピンチに陥ったが、寒地の長野の花が本格的に出回る5、6月頃から花の価格はそれほど下がらず、むしろ前年比で上回るケースもあるという。その理由は前述の通り、その頃には輸入が4分の1を占める切り花が、国境を閉められ、飛行機が飛ばなくなったために止まっているからだ。コロンビアの花の4割、ケニアのバラの7割は空輸されているのだ。1カ月程かかる船便はコールドチェーンにより鮮度を保つため膨大なエネルギーコストがかかっている。いずれにしろ、地球環境上問題のあることなのだ。
 私は食料・農業問題を考えるうちに、「地産地消・旬産旬消」こそ基本的概念(golden rule)だと思い使い出した。これが政治家にも工業製品にもそして再生可能エネルギーにも当てはまることがわかってきたが、ドンピシャ当てはまるのが実は花だったのである。

<グレタさんは花の空輸を許さない>
 グレタ・トゥーンベリさんは去年の秋、国連総会に招かれた時もスエーデンからソーラーパネル付きのヨットでニューヨークに行っている。ジェット燃料で空気を汚す飛行機はなるべく使わないようにしているのだ。それから数ヶ月、航空業界は、コロナ禍で飛行機を飛ばせなくなり軒並み経営難に陥っている。地球環境に悪いことは控えるべきという彼女の価値観からすると、発展途上国から空輸で花を輸入するというのは許されることではない。
 カーネーションの輸入の7割を占めるコロンビアは、年間を通じてほぼ一定の気温で、加温施設等一切不要であり花の適地である。ケシの産地で麻薬の巣窟となっていたが、アメリカ等先進国が技術援助し、花の一大生産国となった。それがまた元に戻るのは困るが、だからといって空輸されて日本に輸出されてくるのは、地球環境を考えたら控えなければならなないことである。
 日本は最近(2020年)やっと1000人の入国を許可すると言っているが、雀の涙である。となると旅客機はほとんど使われないということになる。そうした中で活路を見出そうとしているのが、貨物輸送である。そこで何が運ばれてくるかというと、生鮮物つまり花であり高級野菜である。

<高級な花は空輸され、安い添え花は日本産と、他の農産物の逆をいく>
 野菜や果物にしても牛肉にしても、日本の農家が工夫を凝らし芸術品のような立派な果物や高級和牛神戸ビーフを作り出している。しかし花業界は違っている。高級な生け花で言ってみればメインになるような花は、空輸に耐えられる。それに対して、カスミソウ、ヒペリカム等のお花の世界では「添え花」はかさばって重く、空輸コストに見合わないので日本の農家が作ることになる。つまり、低価格で儲けの少ないものが日本で作られているのだ。

<コロナ対策に気候変動対策が必要、手始めに空輸花を高関税化>
 ヨーロッパ諸国はコロナ対策で産業構造が変わるということを見通しており、フランス政府はエールフランス・KLMに援助する条件として2024年までにCO₂の排出を半減すること、列車で2時間半以内に行ける路線はすべて廃止すること等、気候変動対策を加味した対策を講じている。それに対して我が国のコロナ対策はGo to トラベルやイートとひたすら経済の振興ばかりで、環境への配慮はひとかけらもない。主要先進国と比べ恥ずべきことだ。
 コロナ禍で翻弄される花業界の窮状を救うとともに、地球環境に優しい生き方に転換していくためには花の空輸については高関税を課すなど、新しい発想が必要である。(2020.10.9)

投稿者: しのはら孝

日時: 2020年10月 9日 13:56