2021.05.21

政治

【政僚シリーズ13】規制緩和による経済活性化は時代遅れの極み -規制改革会議、国家戦略特区会議を廃止しないなら、環境規制強化に使うべし- 21.5.21

 内閣が明らかに肥大化している。それは「政官要覧」という政治家と官僚の名簿をまとめた厚い3センチほどの本の中の内閣のページを見るとよくわかる。20年前の2001年秋は号は、内閣官房13ページ、内閣府24頁に過ぎないが、20年後の2021年には内閣官房86頁、内閣府54頁、6.6倍と2.3倍となっている。定員でみても内閣は01年の2,800人から34%増加し、3,764人となっている。第2次安倍内閣の発足した13年(3,157人)と比べても2割増えている。

<何人いるかわからない(?)内閣府の特命担当大臣>
 その結果、内閣府に"○○担当大臣"が何人も誕生し何がどうなっているのかわからなくなっている。その下に○○担当室が次々に設置されてきた。
その8人の大臣と担当を挙げると以下の通りとなる。
・平沢 勝栄 復興大臣(福島原発事故再生総括担当)
・小此木 八郎 国家公安委員会委員長(国土強靱化担当、領土問題担当)【防災、海洋政策】
・河野 太郎  行政改革担当大臣(国家公務員制度担当 ワクチン担当)【沖縄及び北方対策、規制改革】
・坂本 哲志  一億総活躍担当大臣(まち・ひと・しごと創生担当)【少子化対策、地方創生】
・西村 康稔  経済再生担当、全世代型社会保障改革担当(新型コロナウィルス感染症対策担当)【経済財政政策】
・平井 卓也  デジタル改革担当(情報通信技術(IT)政策担当)【マイナンバー制度】
・丸川 珠代  東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会担当(女性活躍担当)【男女共同参画】
・井上 信治  国際博覧会担当(知的財産戦略、科学技術政策、宇宙政策)【消費者及び食品安全、クールジャパン戦略】

<橋本行革の趣旨から逸脱する内閣の肥大化>
 そして5月1日には、デジタル庁の設置が決まり、子供対策が大事だからということで子ども庁ができんとしている。まさに「子供騙し」である。子供庁などは「子供家庭省」ということで、民主党時代に我々がさんざん主張したことであるが、役所を造ればうまくいくということではない。大半が内閣官房や内閣府の下に置かれ、また担当大臣が一人増え、その下に○○担当室が増えることになり、ますます内閣の組織は肥大化し、内閣全体が複眼化し機能しなくなってしまう。省益を探求する各省から、垣根のない内閣へ権限を大幅に移してきた結果、身動きがとれなくなっているのだ。

<何でも屋の内閣委員会>
 その弊害は委員会にも及び、内閣委員会はいま最も忙しい委員会になっている。ちょっとでも他省庁に関わったりする法案は、内閣委員会で審議される仕組みになってしまった。
例えば、今国会だけで閣法は12本あり、以下に挙げる通りである。他委員会でもよさそうなものを私が( )に書いてみる。

・新型インフルエンザ等対策特別措置法等の一部を改正する法律案(厚労)
・原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法の一部を改正する法律案(経産)
・子ども・子育て支援法及び児童手当法の一部を改正する法律案(厚労)
・デジタル社会形成基本法案(総務)
・デジタル庁設置法案(総務)
・デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案(総務)
・公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律案(財金)
・預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律案(財金)
・ストーカー行為等の規制等に関する法律の一部を改正する法律案( )
・障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の一部を改正する法律案(法務)
・重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律案(国交)
・国家公務員法等の一部を改正する法律案( )

 2法を除くと他の委員会審議でもおかしくないものが多い。

<仕事のない内閣参与の乱造>
 内閣機能の劣化は、内閣参与の人事にも表れている。内閣参与は、かつては外務省の事務次官等がOBになっても外交を特命を帯びてやっていただくために、例えば北朝鮮問題、拉致被害者担当の参与が一人か二人いただけだったが、民主党内閣の鳩山内閣のときに18人にもなり、菅内閣の時も原発関係者を突然6人内閣参与に任命した。その後内閣参与が乱発され、安倍内閣ではなんと落選議員の救済措置として、荒井広幸、西川公也が内閣参与に命じられている。西川は例のアキタフーズ事件で辞任している。こういったものも内閣の肥大のおまけである。アキタフーズ事件で西川内閣参与が何の権限もないと起訴されなかった。それでは一体何の権限で何をしていたのだろうか。しらなかったということに他ならない。

<高橋洋一内閣参与にみる官邸の乱れ>
 そこにいろいろ物議を醸してきた高橋洋一内閣参与が、コロナ感染状況を「この程度のさざ波」「これで五輪中止とかいうと笑笑」とツイートして大波にもまれている。森ゆう子参議院議員の国会質問を事前にネットで拡散させるなど、いろいろあったというのに、菅内閣になり新たに任命された。こんな政僚が再び官邸にはびこったのでは、官邸は迷走、暴走を繰り返すばかりである。
 竹中平蔵、高橋は、競争原理に固執し、新自由主義を押し進める人達である。ところが、現下の最大の重要施策は、コロナ対策であり、中心は緊急事態宣言に代表されるように、徹底した移動規制、営業規制を中心とする経済規制である。感染症の防止は規制なしには成り立たない。
 コロナを教訓として、今後は競争原理ばかりを重視することなく、人間の欲望を押さえ、皆がささやかな幸せをつかめるよう、協同の力で社会を成り立たせていく方向を模索しなければならない。

<規制強化しなければ地球環境は守れない>
 世界の最重要課題である地球温暖化防止もCO2の排出規制しないことには始まらない。気候温暖化を防止し、プラスチックゴミをなくし、自然公園を守る(いずれも環境省が今国会に提出している法案に関係する)ための会議を新しく設け、そこでどう規制したら地球環境を守れるか決めていくべきである。
 規制改革は何も緩和だけではない。必要な規制は山ほどある。効率一点張りは改め、生産から消費そして廃棄までいかに環境に優しくするかという生産システムや、生活スタイルが求められている。いわゆるグリーン・リカバリー(緑の復興)である。

<規制改革会議→国家戦略特区を規制強化の手段に使ったら(皮肉)>
 今週審議入りするプラスチック関連法案は、いい頭の体操になる。日本は2006年にレジ袋の有料化をしようとしたが、コンビニ業界をはじめとする流通業界の反対で潰れ、2020年7月1日からようやく有料化された。仏、伊、インド、南ア等、製造さえ禁止している国もあるというのに、あまりに遅い。内閣が総力を挙げてこれこそ思い切り規制を強化しないとならない。
 未だビジネスの参入規制を解いて経済活性化などという古めかしい理論で動いている国はない。この本元である規制改革推進会議と国家戦略特区有識者会議は、時代遅れの際たるものであり、廃止してしかるべきである。もし規制改革会議、国家戦略特区会議を廃止しないというなら、規制を強化して日本を美しくもっと真っ当な国にするように舵を切る本部にしていったらいい。
 自然公園法も既に成立しているが、私は小泉環境相への質問で、自然公園内で自動販売機設置禁止の規制を提案した。例えば志賀高原を特区として試してみて、全国に広めたらよい。

投稿者: しのはら孝

日時: 2021年5月21日 13:57